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第1部
TAKE5 喧嘩 後編
しおりを挟む「中学の後輩って……ハザマくん、あなた何歳なの!?」
「え、……え?15で今年で16です!!一年っす!!」
「一年?私と同じじゃん!?ってことは……波古山くんは何歳にななの!?」
そう言われて亜門は初めて小夜の言いたいことを理解し、苦笑いした。
「あ~……そうですね。違いますね……」
「はあ?」
「今年で17歳なんで、実は一個年上ですね。革城さんより」
「なにそれ!?なんで秘密にしてんのよ!?てかなんで?留年!?」
「べ……別に秘密にしてたわけじゃないですけど……」
「まぁまぁ、姐さん落ち着いて?」
「姐さんって言うな!!」
尚太は変な誤解をしているのか、姐さん呼びをしたが、それに対して小夜は思わず叫んだ。
小夜の謎の苛立ちを感じて、亜門は話を反らそうと尚太に振り向き直った。
「えーっと、お前!!……えーっと?」
「あ、硲尚太《はざま しょうた》っす!!」
「おぉ!!尚太!!トーマは俺も知り合いだから、お前が同じ中学だったのはわかった」
「思い出してくれたんですね!?嬉しいっす!!」
「……(思い出してはいないんだが)」
「もう再会も嬉しいっす!!中学の時、波古山さん達にマジで憧れてたんで!!」
二人のやりとりを聞いて小夜が口を挟んだ。
お得意の好奇心である。
「ねぇねぇ、硲くん。波古山くんの中学時代ってどんなの?」
「カッコ良かったっすよ!!出会いも衝撃でした!!」
「衝撃?」
「俺が当時カモられてたところをトーマさんが助けてくれたんです!!俺も今みたいな格好じゃなくて、もっと地味で弱かったんでね」
尚太は自分の短い金髪を触りながら話しを続けた。
「そんで次の日、何本もジュース抱えてお礼に行ったら……」
そこで一度、亜門の方をチラっと見た。
「波古山さんから回し蹴りを喰らいました」
「……えぇ!?」
小夜は普通にビックリした。
"衝撃"って意味が文字通りの物理すぎる。
苦笑いの亜門は視線を反らす様に外の校庭を見ていた。
小夜は大声出した。
「なんで!?なんで回し蹴り!?てか急の登場すぎない?」
「波古山さんに『ジュースなんか買って媚びてんじゃねーよ!!きめぇ!!!!』って言われてブッ飛ばされましたね……」
「……それは確かに俺、言いそう」
小夜はもはや黙って亜門をジトーッと見た。
亜門は必死に視線を合わせない。
しばしの沈黙。
しかし小夜の視線に亜門は降参した。
「えーっと、『昔』の話ですよ?」
「……波古山くん、やっぱデーモン…悪魔なんだ」
「違いますって!!」
「だって感謝の気持ちを蹴り飛ばして『きしょい』ってひどくない?」
「いや、ムカついたんですよ」
「……」
「……多分!!多分ですよ!!当時の気持ちはもうわかりませんが」
「……」
「それにほら!媚びるのは尚太にも良くないですよ?」
「ヤモリ怖いくせに……」
「それは関係ない……っていうか、なんで革城さんにそんな責められなきゃなんないんですか?」
亜門もいい加減イライラしてきた。
尚太はそんな空気も読まず、アハハと声を上げて笑った。
「いやいや、でも波古山さんはマジ強いですし格好良かったんですよ!!その鋭い蹴りもいい思い出っす!!」
「そのことなんだが、尚太?」
亜門は尚太の前に立ち、真っ直ぐ見据えた。
「俺は訳あって、入学が一年ズレてんだよ」
「え?今年入学ですか?」
「そう!!それに俺は高校生にまでなって、学校を牛耳る気とか全くないし」
「は、はい……」
「だから学校で俺を見掛けても『デーモン』とか呼ばないでほしいんだ……」
小夜が口を挟んだ。
「もうそれも別にいいんじゃないの?」
亜門と尚太は小夜の方を見た。
「革城さん?どういう…」
「そのままの意味だよ。もう別にわざわざそこまで隠す必要はないんじゃないの?」
それは小夜がずっと思っていたこと。
ずっと疑問に思っていたこと。
「今、波古山くんと硲くんが話してるの聞いて、やっぱり思ったもん!!」
「何がですか?」
「波古山くんの敬語、変だよ」
「敬語?」
「友達作りたい、仲良くなりたいって言うわりによそよそしくて不自然だよ!!」
「……」
「硲くんと喋ってる……中学の頃の波古山くんの方がいいよ!!」
「いや、だから俺は、」
「波古山くんらしくやった方が友達も出来るって!!変に敬語にしたり、ムカつくこと無理に我慢して、自分のこと必死に隠して逃げて…そんなことより、自分らしくした方がいいって!!」
そこで亜門は一度気持ちを落ち着かせて冷静に溜め息をついてみせた。
「……俺らしくって、革城さんが俺の何を知ってるって言うんですか?」
その言葉と態度に小夜は小さくムッとした。
「何言ってんの?先に波古山くんが私に『笑った方がいい』なんて訳わかんないこと、偉そうに言ってたじゃない?」
それは亜門の家で言われたことだ。
「別に偉そうに言ったつもりは……」
「波古山くんだって私の何を知ってるのよ!?自分にだってわからないのに!!」
「違います!!俺は革城さんにそんな風に追い詰めてほしくて、そう言ったわけじゃ──」
「大体、波古山くんのことわかんないのは当たり前じゃん!!そうやって家のことも年齢のことも内緒にして……」
「内緒にしてませんって!!」
「そんな人と友達になりたくなんかないし!!」
亜門は言葉を止めた。
小夜の言葉に少しずつ苛立ちを蓄積してきたのだ。
「不自然に無理にして敬語を使ってるような人なんか信用出来ないもん!!」
「……あのですね?中学の時のままじゃ、友達が出来ないとわかったから、努力してるんです」
「努力?」
小夜もだんだん興奮気味になり、言葉が荒くなっていく。
亜門も釣られて声が大きくなっていく。
「そうです!たとえ自分に似合っていなくても、なりたい自分になろうとして、目標に向かって、無理にでも頑張るのはそんなに責められることなんですか?」
亜門が言うそれに、小夜はたまらず鼻で笑った。
「なりたい自分って……イジメられること?」
「……はあ?」
亜門の頬は微かに痙攣し、鋭く目を光らせ小夜を睨んだ。
「てめぇ……お嬢か知らねぇけど、いい加減にしろよ?」
「だってそうでしょ?自分を隠した結果が不良に舐められたんでしょ?」
小夜も負けじと亜門を強く睨んだ。
「イジメもあなたがしたかった青春なの!?」
「お前こそ何がしてぇんだよ!?友達が作りたいだの、思い出したいだの、そのくせ中途半端!!学校じゃあそんな素振りなく、俺の周りチョロチョロして、自分探んのも実際はビビって、達者なんは口だけかよ!!」
ヒートアップしていく二人の言い合いに挟まれた尚太は「お…俺のせい?」なんて言って、キョロキョロと焦っていた。
「口だけって……波古山くんに私の気持ちがわかるわけないでしょ!!私の──」
小夜は息をつまらせた。
泣きそうになったのだ。
でも勢い付いている亜門は気付かない。
「お前ことなんかわかんねぇよ!!そんでお前なんかに俺のこともわかるわけねぇだろ!!」
「言われなくたって…」
「てめぇなんかにわかるわけねぇだろ?家族も友達の記憶もなく、精神年齢・数ヶ月のお前にっ──」
──ッバシン!!!!
小夜は亜門の頬に手をあげた。
涙ぐまして震える手を落ち着かせながら、荒い息で亜門を睨んだ。
「す……好きで数ヶ月しか覚えてないんじゃ…ない」
それが小夜の言い返せる精一杯。
亜門は殴られたことに、ついに亜門の中の何かが弾けた。
スッと黒く冷たい眼差しを小夜に向けた。
「……だったら、俺のことに口挟むんじゃねぇ」
小夜はゾクッとした。
今までだって敬語なしで話されたり、怒鳴られたこともあったが、今の亜門が怖いと感じた。
初めて出会った時に感じた悪寒と同じようなものが走った。
でも小夜は睨むことを止めなかった。
あの時とは違う。
何も知らない正体不明の不良ではなくて、彼は波古山 亜門である。
だから小夜はもう一度、右手を振りかざした。
バシンッッ!!
今度は亜門は左手でその手を受け止めた。
前髪の間から見える瞳は鋭く黒く光る。
「てめぇ、気安く何度も殴れると思うなよ?」
「波古山くんにとって私は、ポッと出のわけわかんない面倒な奴かもしんないけど、私にとってッッ…」
小夜は涙が溢れた。
そこで亜門はハッとなり、さすがに言い過ぎたと思い、キツく握っていた手の力を弛めた。
その隙を見て、小夜は取られていた手を勢い良く引き抜いた。
「波古山くんのお望みどおり…今後口も挟まなりゃ、首も突っ込まない。学校でも外でも一切近づかない!関わらない!」
小夜は保健室の扉へ行き、手に掛けた。
「今後、私の協力も、もうしなくていいから」
背中を向けてそれだけ言うと強く扉を閉めて出ていった。
残された二人。
何も言うことも出来ずに戸惑っていただけの尚太は、ようやく亜門に声を掛けた。
「え…え…?なんなんすか?」
「俺にもわかんねぇ」
「追いかけなくていいんすか?めっちゃ怒ってましたよ?」
「どうしたらいいのか俺もわかんねぇ」
「わかんないって…マジいいんスか?」
「…何が?」
「彼女なんじゃないんですか?」
「彼女じゃない。違う。ただ……」
「……?」
「……俺にも、わかんねぇ」
二人の関係も、今まで一緒に過ごした時間の意味も……
なぜ小夜があんなにも自分を責めたのかも
なぜ泣いていたのかも…
「……わかんねぇ」
きっともう一度さっきの場面がやり直せたとしても、何が正解だったのかも、亜門にはわからない。
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