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第1部
TAKE13 W(?)デート 後編
しおりを挟む幸人は小夜の返事も聞かずに手を繋いだまま、お店へと入ってしまった。
そしてすぐさまメニューを選び、幸人は本当に奢ってくれた。
小夜は先ほどの落ち込んだ気持ちがそれによって回復した。
カウンター席に着いて、小夜は隣にいる幸人に言った。
「ありがとう!!」
「いいよ、俺も無理に連れてったし。」
「…沢田くんって彼女いないの?」
「あ?」
「なんか…モテそう!!亜門よりもエスコートしてくれた感もあるし!!彼女いるの?」
「たかがこんくらいでモテそうとか。…波古山《あいつ》どんだけ何もしねぇの?」
「だって奢ってくれないし亜門って逆に奢らそうとすんだよ?」
それは鯛焼きの時のことである。
「へぇ。」
「いないの?」
「お前はいないって感じだよな。こんな安っちぃ食べもんでこんな喜んで。安上がりの女。」
「や、やすッッ…!!??」
「ははは、早く食えば?」
隣でハンバーガーにかぶりつく幸人を横目で見た。
(やっぱりはぐらかされた。沢田くんって自分のことになると自然に交わすな。)
「…モテるかもしれないけど、彼女になった人は大変そうだね。」
「…は?なんで?」
「…きっとあなたの真意に触れることが出来なくて、辛いだろうね。」
「……へぇ?」
幸人はまじまじと小夜の顔を見た。
「…なんですか?」
「いや?俺、お前のこと嫌いじゃないかもしんねぇな。」
「…はい?なんの話ですか??」
「頭の悪い女は嫌いだって話。」
幸人はまた前を向き、ポテトを食べた。
(…ってことは、私は頭悪くないって褒めてくれたんかな?)
「ボクサーの割には策略家なんだね…」
「褒め言葉として受け取っとく。……革城。」
「はい。」
「顔、伏せろ。」
「はい?」
その時、隣の自動扉が開く音と店員の「いらっしゃいませ!!」という明るい声と共に会話が聞こえてきた。
「本当に別にいらないですよ。」
「いいの!!私にとってカエル取ってくれたのは命助けてくれたのと同じなんだから!!」
小夜はすぐにカウンターに顔をうつ伏せた。
会話内容と声で亜門と奈未だとすぐわかった。
「な…なんでここに来たの?」
「俺が知るかよ。入り口で二人いんのが見えただけだよ。」
二人でコソコソと話していている間に、二人のすぐ後ろのテーブルに座られた。
気まずくてその場を立つに立てなくなってしまった。
二人に聞かれてるとは気付かない奈未は意気揚々と亜門に話しかけた。
「お礼のつもりが逆に付き合ってもらっちゃってごめんね!!」
「別に…俺も奢ってもらっちゃったし…」
「でもおかげでお兄ちゃんのプレゼント決めれたよ!!よかった!!」
「喜んでもらえるといいですね。」
カエルのお礼を名目に誘ったが、ついでに奈未の兄の誕生日プレゼントの買い物に亜門が付き合う形になったようだ。
幸人は小夜に耳打ちした。
「でも多分兄貴のプレゼントってのも建前だな…」
「え?どういうこと?」
「波古山と出掛けたかっただけだろ?」
「やっぱ…町田さんって亜門のこと…」
「まぁなんであれ、誘いに乗った波古山も満更じゃねぇんじゃね?」
「…」
小夜は亜門が一体どんな顔をしているのか見たいのにバレるのが怖くて振り返ることが出来なかった。
ウキウキとしている奈未の声を聞くしかなかった。
「波古山くんは?誕生日いつ?」
「俺…?もう終わりました。4月に。」
「じゃあもう16だからアタシより年上になるね。」
そう言って笑う奈未に小夜と幸人、そして亜門も
17だけど
と思っていた。
「このゴールデンウィークどっか行った?」
「いや、バイトばっか。」
「ホントに?ほら…あの子。革城さんと仲良い…でしょ?どこも出掛けなかったの?」
急に自分の話題となったから小夜は少し緊張した。
「……予定空けるつもりではあったけど。どこか行くとしたら、アイツから望まなければ意味ないからな。」
「え?どういう意味?」
小夜はハッと息を飲んだ。
亜門の言う“どこか”は小夜が行きたいところ。
小夜が自分を思い出す場所。
小夜が自分で望まなければ意味がないもの。
亜門は確かに小夜のことを考えていた。
奈未や幸人にはわからなくても小夜には亜門の言葉の意味がわかった。
あんなに遠かった亜門。
姿も見えず声しか聞こえないけど、不思議と小夜は突然亜門を近くに感じることができた。
自分の胸元を触ればホッコリと温かい。
「どういう意味も別に何もないです。ともかく休みはバイト三昧ですね。」
「…波古山くんって、革城さんのこと好きなの?」
ブハッッ!!!
小夜は思わずむせかえった。
亜門が自分のことを好きなんて有り得ないと思いつつも焦り、聞いてしまっていいのかと落ち着きをなくした。
そんな小夜を幸人は眉間に皺を寄せて心配した。
「…おい、大丈夫か?」
「ご…ごめ…ゴホゴホ。平気…ケホ。」
小声にしなくてはと思っても余計に咳き込んだ。
しかし後ろのテーブルは気にしてないように話を続けた。
「クラスでは二人は付き合ってるって噂すごいあったけど、違うんでしょ?」
「はい、違います。」
「付き合ってないけど、好きとかってことはない?」
「………。どう」
ブー…ブー…ブー…
その時、奈未のスマホがなった。
「あ、ごめん。」と言って奈未はスマホを切った。
「…でなんて言おうと、」
ブー…ブー…
「いいですよ。電話なんでしょ?」
「…ホントにごめんね!!」
奈未は電話に出て、その場の席を立った。
(亜門の答え…聞けなくて…。ん?嬉しい?悲しい?どれ?ていうか"どう"って…何?)
小夜は自分のことなのに、うまく感情を理解出来なかった。
「…で、二人は何してるの?」
亜門の言葉に小夜と幸人は目を合わせた。
奈未がいない今、その言葉が明らかに自分たちに向けられたものだからだ。
振り向けば亜門は席を立ち、小夜達のすぐ近くまでいた。
「あ…あ…亜門。気付いてたの?」
「入ってすぐ、入り口で変にバタバタした奴いるなぁって思って。…で何してるの?」
亜門は呆れたような顔で冷たく二人を見ていた。
それに対して幸人はシレっとした。
「見ての通り…デートですが?」
「…デート?」
亜門はそう言って本当なのかの確認の意味で小夜のことを見た。
小夜は少し考えてから、確かにそういうことになっていたと思い出した。
「うん。沢田くんとデート中。」
「…じゃあ小夜が今日来ないってのは、沢田との約束があったからか?」
「…え?」
亜門がじっと小夜を見て答えを待っていた。
「波古山、悪いけどまだデート中だから、俺らはこれで。革城、行くぞ。」
バーガーもポテトも残ったのは袋につめて、幸人は小夜の腕を持って立たせた。
「え?沢田くん?」
「じゃあまたな、波古山。」
幸人はヒラヒラと手を振ったが、小夜はすぐに状況を呑み込めず、何もしないまま引きずられる形となった。
幸人に声を掛けれたのはもう一度、時計台まで戻った時だった。
「ちょ…ちょっと、なんでいきなり店出たの?」
「ん?あそこで町田が帰ってきたらめんどくさそうだなって思って。」
「…」
「それにいいもの見れると思って。」
「いいもの?」
「あぁ。おかげでおもしろいもん見れたわ!」
「…なにそれ?」
「ははは!波古山に聞いてみろよ。じゃあな、今日はどうも!」
「あ!!ちょっと!?」
幸人は人混みの中、背を向けたまま小夜に手を振って帰っていった。
時計台に残された小夜は何もわからずにそのまま立っていた。
立っていたら誰かが小夜のそばまで来た。
「…あ」
(…亜門?)
そばに来ていた男を亜門と一瞬思ったが、ちゃんとよく見ると全然違う人だった。
「…ミフユさん?」
「…へ?」
「え?あれ…あ…すみません!!!よく見たら人違いでした!!すみません!!!」
同世代っぽいその男も小夜を人違いしたらしく、それに気付いて慌てたように背筋を伸ばし無意味に手を動かした。
自分もちょっとした人違いをしたのは黙ったまま「いえ。」と一言だけ言った。
「ほんとすみません!!あの…」
「おい!!!ウキョウ?」
時計台の人混みの向こうに友達らしき男達がそう呼んだ。
「あ…じゃあ行きますね!!すみませんでした!!」
「はぁ。」
ウキョウと呼ばれた男は友達のところへと戻っていった。
「なんだよ?まさかナンパか?」
「違うっての!!」
キャッキャッと騒ぎながら男達も人混みへと消えていった。
(あんな人違いした人を亜門って思うなんて…私、なんか重症かも。)
人混みを見つめながら、小夜は亜門のことを考えていた。
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