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第1部
TAKE14 自意識過剰
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◇◇◇◇
「あの…よかったら今度なんか奢るよ!!」
遠足の日。
いつの間にか小夜と尚太が傍からいなくなり、亜門は奈未からそう誘われた。
「いや…いいですよ。ホントに。」
「でもさ、私の気が済まないし!!ね?今度どっか食べに行こ?あ…連絡先教えて?」
流れるように聞かれた時、亜門は奈未の勢いに押されてその場で連絡先を交換をした。
「今夜メールするね!!じゃ!!」
笑顔で去っていった奈未を亜門は漠然と見ていた。
(もしかして…俺のこと、気になる…とか?)
自意識過剰とは思いつつも、亜門は少し戸惑った。
その日にホントにメールが来て、GWに会うことが瞬く間に決まってしまった。
決まってから、もしかしてGWに小夜が"自分探し"をするだろうか…と気付いた。
(夜とかだったら空いてるけど、アイツが夜出掛けるのは大丈夫じゃないか…)
どれぐらいのスケールのお嬢様だか亜門は知らないが、厳しいことに変わりはないだろうと思った。
小夜から電話が来たのは次の日だった。
「……じゃあさ、小夜は4日空いてる?」
バイトで埋まってしまったが、せめて小夜にもクラスの人と交流が出来ればと思った。
「なんなら小夜も来るか?」
そして万が一の勘違いが当たっていたら困るので、あわよくば奈未と二人になることを避けたいとも考えた。
『なんで?なんで会うの?』
電話の向こうでは小夜が声を張っていた。
小夜のいつも"アレ"だと思った亜門は気付かれないように肩で溜め息をついた。
しかし小夜にしてみれば、友人どころか家族までよそよそしく感じるのだから亜門が自分から離れるのを不安に思うのは仕方がないと思った。
いつものようにちゃんと話せば大丈夫だと思った。
"クラスに馴染むチャンス"と言えば、小夜は食い付くと思った。
『行かない!!!』
「は?小夜?な」
ツー…ツー…ツー…
しかしいつもと少し違った。
もしかして小夜は4日が無理で悔しがったのかもしれない。
でも小夜の用事は時間がズレているかもしれないので一応メールを送ってみたが、何の返事もなかった。
そして『小夜の用事とやら』は思いがけないところで知ることになる。
ファーストフード店で小夜と幸人を見つけたのだ。
「…で、二人は何してるの?」
(なんで沢田と?)
亜門は本気で不思議に思った。
今自分が一体どんな顔をして二人を見ているのかわからない。
「見ての通り…デートですが?」
「…デート?」
「…うん。沢田くんとデート中。」
「…じゃあ小夜が今日来ないってのは、沢田との約束があったからか?」
(あの電話の時には約束してたってことか?一体いつ?いつから二人は連絡をとって)
亜門の質問に対し、小夜は「…え?」としか返さなかった。
その時、幸人が言った。
「波古山、悪いけどまだデート中だから、俺らはこれで。革城、行くぞ。」
ザワッ。
体内の血の動きがわかるぐらい亜門の中がざわめいた。
「え?沢田くん?」
「じゃあまたな、波古山。」
小夜の手を引く幸人は店を出る直前、亜門の方をチラリと見た。
そして片方の口角だけ上げるように小さく笑ったのだ。
(…~ッッアイツ!!!!!)
わざとだ!!
亜門はそう気付いた。
亜門はそのあとも奈未と一緒にいても常に落ち着かない気持ちでいた。
「今日は1日ありがとう。また連絡してもいい?」
「…はい。」
夕方になる頃には、亜門は妙な気疲れをしてしまっていた。
奈未との交流は自分にとってもクラスに馴染めるチャンスだったはずなのに、と亜門は胸の内でぼやいた。
亜門は帰りに駐車場の集金をして家についてソファーに体を預けた。
そして小夜に対して少し反省をした。
(…小夜がギャーギャー言う気持ち、少しわかった気がする。)
幸人と手を繋いで自分から離れて行く小夜の背中を思い出していた。
小夜のそれとは少し違うが、確かに他の誰かと仲良くされるのはなんだか面白くないと亜門は思った。
(他の人には懐かなかった猫が自分以外にも懐いた…みたいな?)
いつしか来ていた奈未からのメールの返信もどこか億劫に感じた。
◇◇◇◇
「で、なんで波古山が奈未ちゃんとデートすることになったんだ?えぇ?」
連休明けて登校するなり、晋にそう絡まれた。
亜門は一瞬、意味がわからず聞き返した。
「奈未ちゃん?」
「とぼけんな!!お前らのことはハッキリと目撃されたという報告があんだ!!」
亜門は晋の後ろで机に座って雑誌を読んでいる幸人を見た。
亜門の視線に気付いた幸人は雑誌を口元に持っていった。
どう見ても笑っている。
「デートじゃねぇよ。それをゆーなら沢田はどうなんだ?沢田こそ小夜とデートしてたみたいですけど?」
笑う幸人にムカついて仕返しのつもりでチクってやった。
そんな亜門に晋ははっきりと言った。
「今そんな話してなくね!?」
「…えぇ!?前から思ってたけど上村の沢田贔屓ひどすぎないか!?」
「ユキちゃんは革城。波古山は奈未ちゃん。贔屓なにもねぇよ!!俺の心の癒しの奈未ちゃんを、このやろう!!!!!」
「…それはそれで、なんか小夜が可哀想だな。」
すると登校したばかりの奈未と目が合った。
亜門と目が合った奈未はハニカむように笑って手を振った。
それに対して亜門は小さく会釈した。
それを確認した奈未はクラスの友達とお喋りを始めた。
晋はそのやり取りをバッチリと見ていて急に弱々しく喋りだした。
「なんだよ…羨ましいわ!!こんちくしょー!!」
晋は森川栄吉《もりかわ えいきち》にしがみついておいおいと泣き真似をした。
栄吉は仕方なく「はいはい。」と晋を慰めた。
そんな二人を放っておいて亜門は幸人のところまで行った。
「…で。なんでお前は小夜と一緒にいたんだ?」
「気になるのか?」
幸人の早い切り返しに亜門は思わず目を細めた。
その様子に幸人はクククと籠《こも》った笑いを洩らした。
「革城をファーストフードから連れ出した時のアンタの顔、最高だったもんな?」
「…は?顔?」
「"デーモン"って感じだった。」
「…」
「まぁ俺としてはアンタが平々凡々と収まってんのはガッカリっちゃガッカリだけど、"デーモン"が普通のガキだったってのもそれはそれでおもしれぇな。」
「……お前は何が目的なんだ?」
「は?何が?」
「トイレの時から、お前の言葉はトゲがあるというより、俺の怒りをわざと煽ろうとしてる。小夜に近づいてんのも…一体何考えてんだ?」
「へぇ、なるほど。」
「…あ?」
「俺、波古山のことも嫌いじゃねぇわ。」
「………はい!?」
「だから一個言っといてやると、」
急に状況が呑み込めなくなってポカンとする亜門に沢田は指差しながら言った。
「革城に関しては本当にあの時偶然会ったんだ。なんか考えがあって会ってたわけじゃねぇ。」
指差した先には小夜が登校して教室に入ってきた姿があった。
「だから安心すれば。」
「は?安心って何が…」
二人がどんな会話をしてるのか知らない小夜は「おはよう。」と呑気にやってきた。
幸人は「おぉ。」とだけ返して雑誌へと目を戻した。
亜門も挨拶を返した。
「おはよ、小夜。」
「……お、はよ。」
「…」
亜門はつい先週の小夜を思い出していた。
『あ…亜門!!!おはよう。』
先週まで嬉しそうな顔をしていた小夜。
目の前にいる小夜は視点が定まらず、様子が変である。
(…なぜこんなにもぎこちない?)
亜門は懐いていた猫が少しずつ離れていくイメージが何故か浮かんだ。
それは昼休みに、より形となって現れた。
◇◇◇◇
「…お父さん?」
「そう、お父さんが帰ってきてるの。」
昼休み、何故か逃げようとする小夜を取っ捕まえて、いつも通りに屋上へ連れて行き、二人で昼食をとっていた。
「…だからね、今週は真っ直ぐ家に帰らないといけないから帰り付き合ってくれなくていいから。」
「それは別にいいんだが…」
お前、俺のこと避けてる?
とは言い出しづらくて、亜門はそれより先を言わずにパンを頬張った。
「今週って…土日も?」
「うぅん。金曜にはまた出張だって。」
「へぇ…社長ってのはやっぱ忙しいのな…………あ。」
「え?何?」
「……もしかしてお前、今回がお父さんと初対面だったりしたのか?」
(だからGWあたりから小夜の様子が変なのか?)
しかし亜門のそんな予想を裏切って小夜は驚いた顔で首を振った。
「うぅん。目が覚めてしばらく病院で何回か会ったことあるよ。」
「…そうか。…じゃあ土日は調べに行くのか?それとも俺ん家で料理か?」
亜門のその問いに小夜は動きを固くした。
(…やっぱ様子が変なのは俺に原因があるのか?)
「…えっと、土日は…」
やはり挙動不審になる小夜に亜門は溜め息をついた。
「いいよ。無理に俺に合わせなくて…この前のファーストフードで聞かれたかもしんねぇけど、小夜のことは小夜が求めなきゃ意味ねぇから。だから土日もナシでいいよ。」
亜門なりに小夜が追い詰められないように選択肢を広げたつもりだった。
そして結果、どうするつもりなのかと小夜の様子を伺った。
小夜はなんとも残念そうな顔をしていた。
その顔を見た亜門はますます混乱した。
(………え?なんで?…てかどっちなんだ、結局。)
いつも以上に小夜の考えがわからず、亜門は唖然とした。
「小夜?」
小夜の考えを探るように顔を覗きこんで近づいた。
小夜はビクッとあからさまに亜門と距離を取った。
「…」
「…」
「小夜…で、土日もやめるのか?調べに行くのか?」
「亜門は…」
「ん?」
「予定とかないの?…町田さんとか…」
亜門はお得意の眉間に皺を寄せて、目を細めた。
なぜいま、奈未が出てきたのか理解できなかったからだ。
(…あ。)
亜門は心の中で思わず声に出した。
(もしかして嫉妬?しかも…俺を意識して…の。)
自意識過剰かもしれないと思いつつも、亜門は小夜をジッと見てしまった。
「町田さんとは…予定ない。」
「…そっか。」
「お前も沢田と約束あんのか?」
小夜は勢いよく亜門の顔を見て、「ないないない!!!」と首を振った。
亜門は思わず笑った。
それに小夜は瞬きをし、亜門はそんな小夜の頭に手を置いた。
「日曜だったら俺もバイトないから、昼過ぎてから駅前で待ってろ。」
「え…う…うん。」
離れていくかもしれない。
好かれているかもしれない。
真実はわからないが、どちらにしても亜門は小夜をもう少し自分の元へ引き留めておこうとした。
そんな自分が少しズルいと感じた。
「あの…よかったら今度なんか奢るよ!!」
遠足の日。
いつの間にか小夜と尚太が傍からいなくなり、亜門は奈未からそう誘われた。
「いや…いいですよ。ホントに。」
「でもさ、私の気が済まないし!!ね?今度どっか食べに行こ?あ…連絡先教えて?」
流れるように聞かれた時、亜門は奈未の勢いに押されてその場で連絡先を交換をした。
「今夜メールするね!!じゃ!!」
笑顔で去っていった奈未を亜門は漠然と見ていた。
(もしかして…俺のこと、気になる…とか?)
自意識過剰とは思いつつも、亜門は少し戸惑った。
その日にホントにメールが来て、GWに会うことが瞬く間に決まってしまった。
決まってから、もしかしてGWに小夜が"自分探し"をするだろうか…と気付いた。
(夜とかだったら空いてるけど、アイツが夜出掛けるのは大丈夫じゃないか…)
どれぐらいのスケールのお嬢様だか亜門は知らないが、厳しいことに変わりはないだろうと思った。
小夜から電話が来たのは次の日だった。
「……じゃあさ、小夜は4日空いてる?」
バイトで埋まってしまったが、せめて小夜にもクラスの人と交流が出来ればと思った。
「なんなら小夜も来るか?」
そして万が一の勘違いが当たっていたら困るので、あわよくば奈未と二人になることを避けたいとも考えた。
『なんで?なんで会うの?』
電話の向こうでは小夜が声を張っていた。
小夜のいつも"アレ"だと思った亜門は気付かれないように肩で溜め息をついた。
しかし小夜にしてみれば、友人どころか家族までよそよそしく感じるのだから亜門が自分から離れるのを不安に思うのは仕方がないと思った。
いつものようにちゃんと話せば大丈夫だと思った。
"クラスに馴染むチャンス"と言えば、小夜は食い付くと思った。
『行かない!!!』
「は?小夜?な」
ツー…ツー…ツー…
しかしいつもと少し違った。
もしかして小夜は4日が無理で悔しがったのかもしれない。
でも小夜の用事は時間がズレているかもしれないので一応メールを送ってみたが、何の返事もなかった。
そして『小夜の用事とやら』は思いがけないところで知ることになる。
ファーストフード店で小夜と幸人を見つけたのだ。
「…で、二人は何してるの?」
(なんで沢田と?)
亜門は本気で不思議に思った。
今自分が一体どんな顔をして二人を見ているのかわからない。
「見ての通り…デートですが?」
「…デート?」
「…うん。沢田くんとデート中。」
「…じゃあ小夜が今日来ないってのは、沢田との約束があったからか?」
(あの電話の時には約束してたってことか?一体いつ?いつから二人は連絡をとって)
亜門の質問に対し、小夜は「…え?」としか返さなかった。
その時、幸人が言った。
「波古山、悪いけどまだデート中だから、俺らはこれで。革城、行くぞ。」
ザワッ。
体内の血の動きがわかるぐらい亜門の中がざわめいた。
「え?沢田くん?」
「じゃあまたな、波古山。」
小夜の手を引く幸人は店を出る直前、亜門の方をチラリと見た。
そして片方の口角だけ上げるように小さく笑ったのだ。
(…~ッッアイツ!!!!!)
わざとだ!!
亜門はそう気付いた。
亜門はそのあとも奈未と一緒にいても常に落ち着かない気持ちでいた。
「今日は1日ありがとう。また連絡してもいい?」
「…はい。」
夕方になる頃には、亜門は妙な気疲れをしてしまっていた。
奈未との交流は自分にとってもクラスに馴染めるチャンスだったはずなのに、と亜門は胸の内でぼやいた。
亜門は帰りに駐車場の集金をして家についてソファーに体を預けた。
そして小夜に対して少し反省をした。
(…小夜がギャーギャー言う気持ち、少しわかった気がする。)
幸人と手を繋いで自分から離れて行く小夜の背中を思い出していた。
小夜のそれとは少し違うが、確かに他の誰かと仲良くされるのはなんだか面白くないと亜門は思った。
(他の人には懐かなかった猫が自分以外にも懐いた…みたいな?)
いつしか来ていた奈未からのメールの返信もどこか億劫に感じた。
◇◇◇◇
「で、なんで波古山が奈未ちゃんとデートすることになったんだ?えぇ?」
連休明けて登校するなり、晋にそう絡まれた。
亜門は一瞬、意味がわからず聞き返した。
「奈未ちゃん?」
「とぼけんな!!お前らのことはハッキリと目撃されたという報告があんだ!!」
亜門は晋の後ろで机に座って雑誌を読んでいる幸人を見た。
亜門の視線に気付いた幸人は雑誌を口元に持っていった。
どう見ても笑っている。
「デートじゃねぇよ。それをゆーなら沢田はどうなんだ?沢田こそ小夜とデートしてたみたいですけど?」
笑う幸人にムカついて仕返しのつもりでチクってやった。
そんな亜門に晋ははっきりと言った。
「今そんな話してなくね!?」
「…えぇ!?前から思ってたけど上村の沢田贔屓ひどすぎないか!?」
「ユキちゃんは革城。波古山は奈未ちゃん。贔屓なにもねぇよ!!俺の心の癒しの奈未ちゃんを、このやろう!!!!!」
「…それはそれで、なんか小夜が可哀想だな。」
すると登校したばかりの奈未と目が合った。
亜門と目が合った奈未はハニカむように笑って手を振った。
それに対して亜門は小さく会釈した。
それを確認した奈未はクラスの友達とお喋りを始めた。
晋はそのやり取りをバッチリと見ていて急に弱々しく喋りだした。
「なんだよ…羨ましいわ!!こんちくしょー!!」
晋は森川栄吉《もりかわ えいきち》にしがみついておいおいと泣き真似をした。
栄吉は仕方なく「はいはい。」と晋を慰めた。
そんな二人を放っておいて亜門は幸人のところまで行った。
「…で。なんでお前は小夜と一緒にいたんだ?」
「気になるのか?」
幸人の早い切り返しに亜門は思わず目を細めた。
その様子に幸人はクククと籠《こも》った笑いを洩らした。
「革城をファーストフードから連れ出した時のアンタの顔、最高だったもんな?」
「…は?顔?」
「"デーモン"って感じだった。」
「…」
「まぁ俺としてはアンタが平々凡々と収まってんのはガッカリっちゃガッカリだけど、"デーモン"が普通のガキだったってのもそれはそれでおもしれぇな。」
「……お前は何が目的なんだ?」
「は?何が?」
「トイレの時から、お前の言葉はトゲがあるというより、俺の怒りをわざと煽ろうとしてる。小夜に近づいてんのも…一体何考えてんだ?」
「へぇ、なるほど。」
「…あ?」
「俺、波古山のことも嫌いじゃねぇわ。」
「………はい!?」
「だから一個言っといてやると、」
急に状況が呑み込めなくなってポカンとする亜門に沢田は指差しながら言った。
「革城に関しては本当にあの時偶然会ったんだ。なんか考えがあって会ってたわけじゃねぇ。」
指差した先には小夜が登校して教室に入ってきた姿があった。
「だから安心すれば。」
「は?安心って何が…」
二人がどんな会話をしてるのか知らない小夜は「おはよう。」と呑気にやってきた。
幸人は「おぉ。」とだけ返して雑誌へと目を戻した。
亜門も挨拶を返した。
「おはよ、小夜。」
「……お、はよ。」
「…」
亜門はつい先週の小夜を思い出していた。
『あ…亜門!!!おはよう。』
先週まで嬉しそうな顔をしていた小夜。
目の前にいる小夜は視点が定まらず、様子が変である。
(…なぜこんなにもぎこちない?)
亜門は懐いていた猫が少しずつ離れていくイメージが何故か浮かんだ。
それは昼休みに、より形となって現れた。
◇◇◇◇
「…お父さん?」
「そう、お父さんが帰ってきてるの。」
昼休み、何故か逃げようとする小夜を取っ捕まえて、いつも通りに屋上へ連れて行き、二人で昼食をとっていた。
「…だからね、今週は真っ直ぐ家に帰らないといけないから帰り付き合ってくれなくていいから。」
「それは別にいいんだが…」
お前、俺のこと避けてる?
とは言い出しづらくて、亜門はそれより先を言わずにパンを頬張った。
「今週って…土日も?」
「うぅん。金曜にはまた出張だって。」
「へぇ…社長ってのはやっぱ忙しいのな…………あ。」
「え?何?」
「……もしかしてお前、今回がお父さんと初対面だったりしたのか?」
(だからGWあたりから小夜の様子が変なのか?)
しかし亜門のそんな予想を裏切って小夜は驚いた顔で首を振った。
「うぅん。目が覚めてしばらく病院で何回か会ったことあるよ。」
「…そうか。…じゃあ土日は調べに行くのか?それとも俺ん家で料理か?」
亜門のその問いに小夜は動きを固くした。
(…やっぱ様子が変なのは俺に原因があるのか?)
「…えっと、土日は…」
やはり挙動不審になる小夜に亜門は溜め息をついた。
「いいよ。無理に俺に合わせなくて…この前のファーストフードで聞かれたかもしんねぇけど、小夜のことは小夜が求めなきゃ意味ねぇから。だから土日もナシでいいよ。」
亜門なりに小夜が追い詰められないように選択肢を広げたつもりだった。
そして結果、どうするつもりなのかと小夜の様子を伺った。
小夜はなんとも残念そうな顔をしていた。
その顔を見た亜門はますます混乱した。
(………え?なんで?…てかどっちなんだ、結局。)
いつも以上に小夜の考えがわからず、亜門は唖然とした。
「小夜?」
小夜の考えを探るように顔を覗きこんで近づいた。
小夜はビクッとあからさまに亜門と距離を取った。
「…」
「…」
「小夜…で、土日もやめるのか?調べに行くのか?」
「亜門は…」
「ん?」
「予定とかないの?…町田さんとか…」
亜門はお得意の眉間に皺を寄せて、目を細めた。
なぜいま、奈未が出てきたのか理解できなかったからだ。
(…あ。)
亜門は心の中で思わず声に出した。
(もしかして嫉妬?しかも…俺を意識して…の。)
自意識過剰かもしれないと思いつつも、亜門は小夜をジッと見てしまった。
「町田さんとは…予定ない。」
「…そっか。」
「お前も沢田と約束あんのか?」
小夜は勢いよく亜門の顔を見て、「ないないない!!!」と首を振った。
亜門は思わず笑った。
それに小夜は瞬きをし、亜門はそんな小夜の頭に手を置いた。
「日曜だったら俺もバイトないから、昼過ぎてから駅前で待ってろ。」
「え…う…うん。」
離れていくかもしれない。
好かれているかもしれない。
真実はわからないが、どちらにしても亜門は小夜をもう少し自分の元へ引き留めておこうとした。
そんな自分が少しズルいと感じた。
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