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第1部
TAKE17 一週間前 後編
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(俺はなんでそんなことを言っちまったんだろうか。)
放課後になってから改めて亜門はそう思い、机に突っ伏せた。
高校生になってから青春の一貫として、形だけ予習復習はしていたが、実質200番以上の順位を上げるというのはかなりの無茶だと気付いた。
「波古山くん。」
顔を上げたら奈未がいた。
「目…大丈夫?眼帯……」
「まぁ…」
「昨日も…どうしたの?」
「昨日!?」
「メール。夜、返事途中でしてくれなかったじゃん?」
「あ…メール…ね。」
てっきり鬼ごっこか橘とのことを見られたのかと思って、少し焦った。
「実は眼帯してて…目が疲れたんです。」
「そうなの?ごめんね!!ものもらい?」
亜門が言ったことも嘘じゃないが、頻繁にくる奈未のメールがだんだんと面倒くさくなってきたのだ。
今している会話もこれ以上、何を話せばいいのかわからなくて正直早めに切り上げたいと思っている。
「それだと勉強も大変だね!!何か私に出来ることない?」
「だ…大丈夫です。」
「今日とか黒板見えなかったところとかない?私のノート見る?」
「えっと…」
「あっ…今日からテスト期間で私も部活ないし、よかったら一緒に…」
(まずい…勉強に誘われる!?)
亜門が焦った瞬間、小夜が来た。
「あもーん…あっ町田さん。」
小夜は明らかに邪魔したって顔をして立ち去ろうとしたから亜門は咄嗟に立ち上がり、小夜の肩を掴んだ。
「小夜、帰るぞ。町田さん…またね。」
「え…あ、うん。ばいばい。」
奈未が手を振るのを確認して亜門はカバンを持ち、歩き出した。
小夜は亜門と奈未を少しだけ交互に見たあと、奈未に頭を下げて亜門に続いた。
下駄箱にたどり着き、履き替えながら小夜は亜門に聞いた。
「あ…亜門?よかったの?話の途中だったんじゃ?」
「別に…いいんだよ。変に期待かけるわけにもいかないし。」
「期待って…え!!!亜門……町田さんの気持ちに気付いて…」
「…我ながら自意識過剰だけど、一応。」
(しかしそれに比べて隣の奴はいまいち考えがわからん。)
校門を通り抜けながら亜門はそうして隣の小夜を一瞥《いちべつ》した。
「亜門さ…誠実じゃないんだね。」
「は?」
一体どうしてそういう結論になったのか、亜門はやっぱり小夜がわからなかった。
眉間に皺を寄せつつも落ち着いて聞くことにした。
「…なんで?」
「だって…知ってて避けてるんでしょ?町田さん、なんか可哀想…。」
「あのな、そういうのも時には優しさなんだよ。」
「だったらハッキリ言ってあげた方が、」
「告白されてもないのに断るって、それこそ自意識過剰もいいとこじゃねぇか。てかお前ホント変なとこ、無駄に知恵回んのな…」
亜門が溜め息つきかけた時、今までの小夜を思い返した。
最近の嫉妬の異常度。
抱き付いてきてからの妙な甘え。
今まで気にしないできたことが何度も蘇《よみがえ》る。
もしかして…
お前、俺のこと好きなのか?
(…って言ったら怒られるかも。…いや、小夜は場合、深く何も考えないで『うん。』とかも言い返してきそう…)
亜門はそんなことを考えながら小夜をジッと見た。
小夜は気付かず話を続ける。
「別に知恵って…私だって何も知らないけど。あからさまに話の途中で帰んなくてもってこと!!」
「…小夜は俺と町田さんと付き合ってほしいわけ?」
「…てか町田さんと何の話してたの?」
(あ!!今、完全にスルーした!!)
亜門は小夜の意外な軽い交わしに小夜の考えを探るのも諦めた。
(まぁ仮に好きなんだとしても小夜は多分自覚してねぇし、小夜から何か言ってはこないだろう…)
「別に。町田さんの話しってのも、多分一緒にテスト勉強しようって言うつもりだったんじゃねぇの?」
「…一緒に…テスト勉強?」
「悪いけど、俺は橘の条件あってマジで集中したいから、出来たら誘われなくて良かった。」
「なんで?一緒にわからないところ教え合えるし、誰かと競う気持ちでヤル気出ない?」
「だから俺は一人が…」
亜門がそう言って小夜の方を見た。
小夜の目がキラキラと輝いている。
「テスト勉強会…って楽しそうだね。」
こうなった小夜は非常に考えが読みやすい。
というより、かなり顔に出ている。
どうやら勉強会という響きは小夜の青春スイッチを入れたようだ。
亜門は小夜の目を反らして無理やり話も反らそうとした。
「あーえー…まだ日も高いし、家まで送らなくて平気だよな?じゃ…俺はこれで…」
「亜門!!!」
小夜はしっかりと亜門の腕を掴んだ。
「亜門は今回100位以内頑張らないといけないでしょ?」
「はい、そうです。だから俺はもう帰ります。」
「私も頑張るから一緒にやってみない?勉・強・会。」
奈未のメール以上に小夜の好奇心のが遥かにめんどくさい。
歯を見せる小夜の笑いに亜門は今更それを思い出した。
「勉強会しなくても小夜は頭良いんだろ?」
「一緒にやるってのがなんかいいじゃん!!テストイベントっぽくて!!」
「こちとら遊びじゃねぇよ。大体どこでやんだよ…」
「そんなんテキトーにお店にでも入ろ!!」
「却下。そんなんで無駄に金使いたくない。だったら普通に家でやる。」
「じゃあ…亜門ん家でやろ!!」
「やろって…お前勝手に…」
(でも…なんつーか、こいつのめんどくささは…どこか斗真と似ている。)
「あっ。」
亜門が思考に浸っていたら小夜が声出した。
普通に亜門はびっくりした。
「…急に何?」
「私…橘さんに言われてたんだ…」
「何を?」
「条件クリアするまで亜門に近付いちゃダメって…」
「……え?今更すぎないか。さっきからずっと二人で会話しちゃってるじゃん」
「忘れてた。」
「そんな軽い忘れてたってレベルじゃないくらい今日1日普通に一緒いたよな。」
「…あはは。」
「……まぁ。でも学校の出来事なんて橘にバレるわけでもないし、いいんじゃない?」
「…私…橘さんに聞かれた時に…嘘いう自信ない…」
「たしかに嘘下手そうだな。まぁ、頑張れ。」
「…亜門ん家で勉強会はやめとくよ…」
「んあ?」
「テスト終わるまでは二人っきりはやめとく。」
「…別に俺は構わねぇけど、お前ってマジ極端…。んなもんテキトーに誤魔化せばいいのに」
「そう?」
「それに最悪、テスト終わって友達解散かもしんねぇんだろ?だからそんな固く考えんなよ。」
亜門は小夜に背中を向けて「じゃあまた明日な。」と自分の家路に向かって歩いた。
しかしすぐに背中に衝撃が来た。
振り返ると小夜が背中にくっついていた。
「…な……何?」
「二人はまずくても、橘さんが同伴なら有りだよね?」
「…は?」
小夜は閃いたと言わんばかりの笑顔になった。
「亜門ん家じゃなくてうちん家でやろ!!勉強会!!」
~拝啓…斗真へ
お前に見習って青春を満喫しようと試みたが、俺はやっぱり中学の頃と変わらず少し青春とやらが苦手なのかもしれない…~
(いや…青春というよりも小夜の発想と実行力についていけねぇ…)
そんな亜門の心の呟きは溜め息となって小さくなった。
訪問&勉強会in革城家。
亜門はすでに嵐の予感がしていた。
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