わんもあ!

駿心

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第1部

TAKE19 再会 前編

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キーンコーンカーンコーン…


「はい、そこまで。後ろからプリント集めろー。このままHR始めっから静かに!!」


長いテスト期間の一週間からの解放を示すチャイム。

教室の空気は一気にワッと広がった。


しかし亜門は頭を机にもたげたまま、起き上がれなかった。

HRが終わったあとも動かない亜門が気になり、小夜は鞄を持って亜門に近付いた。

その気配に気付いた亜門はぼやいた。


「疲れた…脳みそが割れるかと思った…」

「…脳みそって、もともと二つに割れてるんだよ、亜門?」


小夜の挙げ足取りにも反応できないくらい、亜門は疲れて机に伏せていた。


「俺…この2週間…スゲー頭使った…」


そう言う亜門のぼやきは嘘でも大袈裟でもなく、テスト期間中は小夜の協力の元、亜門は勉強に打ち込んできた。


「…なぁ、小夜。」

「ん?」

「俺、100位超えられると思う?」

「…」

「…」

「…わからない。」

「…だよな。」


亜門はようやく体を起こして荷物をまとめた。


「よう!!波古山!!いや…マイブラザー!!」


そこに揚々と現れたのは晋だった。

亜門は怪しむように眉間に皺を寄せて晋を見た。


「は?なんだよ…ブラザーって…」

「いやぁ…テストに関しては同レベル、むしろブラザーだろ?このテストの傷を舐め合いながら解放感を感じないか?」

「なんで俺なんだよ…沢田達と感じとけ。」

「……だって…ユキちゃんとモリ、実は頭良いんだもん…。」

「「マジで!?」」


小夜と亜門は思わずハモった。


「ユキちゃんは普通科だったとはいえ、元・世華出身だし…モリも教科書とか読むだけで呑み込み早いし…だから全然勉強しないのに、それで真ん中ぐらいまでいけんだぜ!!ユキちゃんは中の上!!」


その言葉を受けて、小夜は晋を見ながら亜門の肩を掴んだ。


「でも今回は亜門も中の上どころか上まで来るかもしんないよ!!」

「は?なんで?」

「すごい勉強したもん!!ねぇ~?」

「なんだよー!!裏切る気か!?マイブラザー!!」


晋も亜門の肩に掴まってきたのでそれは振り払った。


「だからなんだよ!!ブラザーって!!そこまでして俺をバカにしたいんか!?」

「…だって波古山はバカだから留年したんだろ?」

「違ぇよ!!てか留年もしてねぇ。」


それには小夜も目を丸くした。


「…違うの?」

「違うのって…小夜までそう思ってたんか?」

「うん…だって…え?…じゃあなんで、一年違うの?」


そう聞かれた亜門は晋と小夜を一回ずつ一瞥いちべつして机に腰掛けた。


「…出席さえなんとかすりゃ義務教育はそうそうに留年したりしねぇよ。俺は単に入学遅れただけだ。」

「だからなんで?」

「金がなかったから。」

「…え?」

「中学までは親に出してもらってたけど、高校からは自分で出してるから…去年じゃ間に合わなかったんだよ、授業料が。」

「……んん?」

「…納得したか?」


亜門にそう聞かれたがすぐに答えることが出来なかった。


「へぇー。なんつーか、デーモンも苦労してんだな。」


晋のそんなしみじみした言葉も無視して小夜は指を折って計算した。

亜門は以前、叔父と住んでいた。

しかしお亡くなりになったのが3年前。

つまり中学1年生。


(いや…でも亜門は1つ上になるから…)


「んん?どういうこと?亜門ッッ…」


亜門の親はいるの?

いないの?


「おい、シン。今日このあとどうすんだ?結局。」


言葉の続きは呆気なく幸人の言葉によって遮られた。


もう周りが帰り始めてる中、幸人も栄吉も帰る用意ができており、小夜達のところまで来た。


「あ、ユキちゃん!!悪い!!話が脱線したからまだ言ってねぇ。」

「…だろうと思ったけど。」


幸人は溜め息混じりにそう言った。

何のことかと不思議そうにしてる小夜と亜門に晋は「あのな!!」と話を始めた。


「テストも終わったし、このあとどっか食いに行かねぇ?傷の舐め合い会。」

「…まだ傷作ってねぇよ。」

「まぁまぁ前夜祭って感じで行こうぜ!!革城も行くか?」


小夜の目が光った。

その様子から亜門は答えがわかった。


「うん!!行く行く!!」

「…やっぱりそうなるか。」


ゲンナリする亜門をよそに栄吉は意外そうにした。


「へ?革城も来んのか?」

「うん!!放課後にみんなでどっか行くの楽しそう!!」


そう言って盛り上がっているところに奈未が通り過ぎた。


「波古山くん、またね!!」


手を振る奈未に亜門よりも早く反応したのは晋だった。


「あ!あ!町田さんも一緒に行く!?」


その発言に亜門は驚いて、晋の方へ勢い良く振り向いた。


(町田さんも誘うのか!?)


晋は顔色良くなり、目はランランと光っていた。


(忘れてた…晋は町田さんを気に入ってたんだ。)


驚いたのは亜門だけでなく、奈未も戸惑った様子を見せた。


「え?え?行く…って、どこに?」

「テスト終わりを祝してどっかファミレスとか!!良かったら一緒に行こ!!」


晋の熱心な誘いを受けても晋は見ずに「どうしようかな…」と亜門の方を見た。

亜門は気付かない振りをして少しずつ視線をずらした。

小夜はキョトンとしているし、幸人はそんな亜門をおもしろがってニヤニヤしている。


その中で、口を開いたのは栄吉だった。


「はぁ…町田は来んな。めんどくせぇから。」

「はぁ?何よ!なんで森川にそんなこと言われなきゃなんないの?」

「だってお前のお喋り長ぇし。」

「はい黙れ!!」


栄吉と奈未の様子から、小夜は幸人の袖を引っ張った。


「…あ?何だ?」

「二人は仲が悪いの?」

「違う違う。逆だよ。仲が良いんだよ。」

「「良くない(ねぇ)し!!」」


ハモった二人を見て小夜はなるほどと納得した。

すると突然、奈未は亜門の腕を取った。


「私も行く!!森川の言うこと聞く理由もないし。」

「…ガキかよ。」

「うるさい!!」


その最中、奈未は亜門の腕をギュッと抱き締めた。


(うっ…)


小夜の胸にチクリと刺さった。

幸人はそんな小夜にクスクス笑いながら耳打ちした。


「波古山…取られてるよ?」

「う…なんのこと?」


幸人はカラカラとした声で笑った。


小夜は亜門に対して始めの頃とは違う想いになっているのは自分でもなんとなく察知していた。

しかし橘のこともあり、テストもあり、何より自分自身の記憶についても考えないといけない。

いっぱいいっぱいになってめんどくさくなった結果、亜門に関しての考えは一時放棄していたのだ。


そしたらやっぱり楽になったから、しばらく小夜は軽く忘れたフリをした。


(でも…この光景は…なんというか…その…)


改めて奈未と亜門を見て、どう受け止めるべきかがわからない。


「まぁ、決まったんなら行くか。」


音頭を取った幸人に合わせてみんな動き出した。

亜門も動きながらやんわりと奈未から腕を外した。
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