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第2部
TAKE25 近付く方法 前編
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体育祭の前日。
午前中は予行練習で午後は入場門やテントなどの準備をする。
そして各学年から同じ数字のクラスでチームを組み、各チームカラーとイメージ動物キャラが決まっており、そこから皆で団結し応援をする。
亜門もチームカラーの黒いTシャツを着た。
手作りプリントのTシャツにはチームのイメージ動物の熊が肩を組んで闘志を燃やしている。
亜門は朝からグラウンドに集まるために、幸人達と一緒にダラダラと歩いた。
栄吉は自前のうちわを扇いで、既に疲れた様子だった。
「あっちぃー。無理。立ってらんねぇし。」
晋はタオルを頭に巻いて、ご機嫌だった。
「いやいや!!最高の予行練習日和じゃん!!??うぉー!!早く明日になんねぇかな?」
「上村は体育祭楽しみなんだ?」
「おぅともよ!!!俺、わりと足早いんだぜ!!」
浮かれている晋に亜門は「ふーん。」と返事をしながら歩いた。
その隣で幸人が亜門の肩を掴んだ。
「ところで、波古山はいつになったら革城と仲直りできんの?」
亜門は幸人の言葉にビシィッと固まった。
晋も口を開けて驚いた。
「はあ?何何何!!!??二人、喧嘩してたの?」
「そういや最近よく俺らと一緒にいるなぁとは思ってたが…喧嘩してたのか。」
晋と栄吉の会話に亜門は「喧嘩…では…ない。」と、か細い声で一応言った。
「でも最近二人が喋ってんの見ねぇぞ?いつからそんなんなんだ?」
幸人からの質問に亜門はもはや乾いた笑いしか出なかった。
「一週間こんな感じが続いてんだ。」
「「なんだ、一週間かよ。」」
晋と栄吉がハモって、やれやれといった感じだ。
「でも一週間は今まで俺らが何かしら揉めた時の最長なんだよ…。これでも。」
栄吉は呆れたように笑った。
「何?お前ら普段からそんな喧嘩してんの?」
「だから喧嘩じゃねーっての。」
晋がギャハハと笑った。
「おめぇら相性悪いんじゃね?」
亜門は黙って晋が巻いてるタオルをきつく締め直した。
「いててて!こめかみ!!こめかみがぁ!!!」
グラウンドでクラスごとに塊が出来始めたころ、亜門の視線の先に瑞希達と一緒にいる小夜がいた。
亜門が晋のタオルから手を離すのと同時に小夜と目が合った。
少し離れた距離だが、小夜は亜門に向かって深々とお辞儀をした。
そして瑞希達と一緒に列の前の方へと消えた。
幸人は亜門の隣で溜め息をついた。
「は~ぁ!!ありゃ確かに喧嘩よりもややこしい"他人行儀"に逆戻りって感じだな。」
そう、小夜は亜門に会う度に一応、会釈をする。
それが亜門にはよくわからなかった。
(嫌いじゃないけど、話したくないってか?余計わけわかんねぇよ。)
幸人はぼんやりする亜門にまた話した。
「何か知んねぇけど、早く解決してくんね?」
「…は?なんで沢田が…」
「こっちはアンタがピリピリしてたり、ぼんやりされちゃ、聞きたいことも聞けねっての。」
「…」
幸人なりに一応、亜門を気遣って黙っていたらしい。
幸人が世華で斗真を見かけたということ。
確かに亜門も幸人に聞きたいことがあった。
だから幸人の質問にも答えてやりたい。
しかし…
「悪いが、沢田の話より今はこっちのが問題だから。」
亜門は真顔で答えた。
幸人は頬を痙攣《けいれん》させて「わかってたよ、そう言うって。なんとなく…」と怒りを鎮めようとした。
それに亜門はある程度の予測が立っていた。
斗真が世華を彷徨いていた。
そして当時、世華に通っていた小夜と斗真にどうやら接点があるらしい。
つまり幸人から聞く斗真の話は、おのずと小夜の話も聞くことに繋がると思われる。
(だからまず、こっちから順番に片付けないと…)
次第に列が出来て、朝礼台に立つ教師が拡声器で注意をしている。
しかし列は適当のままで、栄吉は喋り続ける。
「…で、原因は?それさえわかれば、すぐに謝って済むだろ?」
「原因っつったって…」
亜門は一人、心の中で考えてみる。
①小夜と斗真との関係がわからなくてモヤモヤ。
②慶介のことで嫉妬して、思わず八つ当たりをした。
③自分の家族や事情を今更ながら黙ってた。
④小夜に子供扱いしたと勘違いされた。
…エトセトラ。
「…心当たりがありすぎて、どっから弁解したらいいんかわかんねぇ。むしろどれから言うべき?」
「「なんじゃそりゃ。」」
晋と栄吉は呆れた眼差しを亜門に向けた。
晋は深く息を吐いた。
「もうなんでもいいからとにかく謝れよ。」
「…なあ?さっきから思ってたんだが、なんで俺が悪い前提で話が進むんだ?」
「じゃあハコは何もしてないんだ?」
「…」
⑤思わず抱き締めてしまった。
亜門はカラッカラな声で力なく笑った。
「ハ、ハハ、ハ。そうだよ…俺のこと、ケダモノとでも呼べばいい。」
「ケダモノ。」
「変態。」
「ムッツリ。」
亜門は三人を蹴り飛ばした。
咄嗟に避けた幸人と違い、まともに受けた晋はギャーギャー騒いだ。
「何すんだよ!!??言えっつったの、てめぇだろ!!??」
「…ムカつくオプションも付いてきたから、つい…」
「だからって蹴るな!!!!大体どっちが悪いとか、もうつべこべ言うな!!こういうは男から謝った方がいろいろ早いんだ」
「なんじゃそりゃ」
「それにいいか、ハコ?体育祭という一大イベント!!これを逃していいのか?」
「はい?」
晋は声を潜めて力説した。
「学校行事というのは人を浮かれさすものなのだ…」
「…あぁ。まさにその見本が目の前に。」
亜門の嫌味も晋はスルーして話を続ける。
「今まで革城もドモのセットというハンデを背負っていたが、」
「…え?ココ、怒っていいところ?」
「それがなくなった今!!よく見たら革城も可愛い系だしよ、女子だけでなく誰かクラスの男子が寄ってくるかもしんねぇぞ!?」
「…」
「その場のノリでツーショット写真撮ったり、Tシャツにメッセージ書き合ったり、どさくさ紛れに勝利の喜びに抱き付いたり…」
「…」
「するぞ!?俺は奈未ちゃんに!!」
「…お前の話かよ。」
「モリが奈未ちゃんにしないなら、俺はするぞ!!!」
栄吉はすかさず晋の胸ぐらを掴んだ。
「何故、俺の話題になった?…つーか、今言ったことを町田にホントにやったらマジしばくからな?特に最後。」
「しばく前にモリもやっちゃえよ☆」
二人のやり取りにクククと笑いを洩らしながら、幸人も亜門に言った。
「まぁ、うかうかしてたら革城も誰かに取られるかもよ?ってこった。」
「…そうは言っても、こっちがなんか言う前にアイツどっか行くんだよ。ペコッと会釈してはサササーッて…」
亜門がそう言ったあと、沈黙が出来た。
亜門は「ん?」と疑問に感じ、三人の顔を見た。
晋と栄吉はポカンと瞬きをしているし、幸人はニヤニヤ笑っている。
晋は亜門の顔を覗きこんだ。
「…言わねぇの?いつもみたいに『別にそんなんじゃねぇ』って。」
「……え?」
「革城とのこと突っ込むと言うじゃん。『アイツのことはそんなんじゃねぇ』って。」
「…」
亜門は目を細めて眉をひそめる。
幸人だけでなく、晋と栄吉もニヤッと笑う。
「ん~?それは何ですか?そういうことでいいってこと~?」
亜門はゆっくりと三人に顔を背けた。
しかし幸人はそんな亜門の肩に肘をかける。
「へー。だよなー。誰かに取られるのは嫌だよなー。」
「…………そうだな。」
亜門は三人に顔を背けたまま、限りなく小さな声で呟いた。
だが赤い顔は隠しきれない。
「誰かー!!!!お赤飯炊いてあげてぇー!!!!おかあちゃあーん!!!!」
「ちょ…バカ、上村!!」
何故か感極まって叫び出す晋を黙らそうと亜門は焦ったが、時既に遅く、近くの教師に注意された。
その間、幸人と栄吉は見て見ぬふりをした。
教師が去ったあと、亜門は溜め息をついた。
「てめぇ…ここが学校じゃなかったら殴ってるぞ。」
「さっき構わず蹴ったくせに。いやーでも珍しくハコが可愛いらしかったもんだからぁ。ねぇ、ユキちゃん?」
「確かにな。キモいぐらいだった。」
「……沢田。お前のその冷たさ、どうにかなんねぇの?」
もう色々疲れた亜門はその抵抗が精一杯だった。
ザワザワとした列に向かって注意事項を続けられる中、栄吉が亜門の肩をトントンと叩いた。
「だったら尚更、早くどうにかしなくちゃなんねぇな?取っ捕まえてでも、早く仲直りしろ。」
「…取っ捕まえる…ねぇ…。」
朝礼台からの注意事項も終わり、列は乱れた。
このあと競技の入場退場の確認のためのデモンストレーションだけ行われる。
自分達の参加競技までは各自チームの場所で待つ。
同じクラスは同じ場所で待つわけで、その場所には小夜も当然ながらいる。
小夜をジッと見ると、こっちに気付いて目が合う。
目が合えば小夜は困ったようにおどおどして自然に目を反らす。
しょうがないと言ってしまえばそうなる。
何から聞けばいいのか、何から言えばいいのか。
お互いにビビっている。
お互いの知らないことを詰め寄れば、今までの関係がおかしくなりそうで不安だ。
(…かといってこのまま放っといても悪化するだけだけど…)
亜門はクラスの団体から少し離れて、どうすべきか悩んでいると肩を叩かれた。
「わかってる!!どうにかするっつの!!」
「…え…と?」
亜門は「あ。」と声を洩らした。
てっきり幸人達の内の誰かかと思ってキツめの口調で言ったが、叩かれたのは瑞希といつも一緒にいた安藤仁美だった。
「ご…ごめんなさい。私…いきなり呼んでしまって…」
「いや…違います。すみません。沢田かと勘違いして…」
「私こそすみません。」
仁美とはほぼ初めての対話となるので、亜門はなんて言えばいいかわからず戸惑った。
「あの…」
仁美は周りを確認して遠慮がちに聞いてきた。
「波古山くんは…小夜ちゃんに何か怒ってるんですか?」
「…え?」
「最近、二人一緒にいないみたいですし…ミズキとユウはそんなこと気付いてもないみたいだけど…」
「あぁ…えっと…俺は別に…怒って、ないです。」
ただ自分を知らせるのも小夜を知るのもビビっているだけだ。
「あ…よかった…」
仁美はフワッと微笑んだ。
「この何日間か小夜ちゃんと一緒にいて、仲良くなれたけど…なんか元気がないみたいで…」
「…元気がない?」
「色々話したり、笑ったりしてるけど…どこか表情が固いっていうか、心から楽しくなさそうっていうか。」
亜門も仁美達と一緒にいる小夜を見ていたが、そんな風には思わなかったから「え?」と小さな声を出した。
「なんだか心配になっちゃって…もっと…遠足の時みたいに、波古山くんと一緒にいた時の小夜ちゃんみたいに笑ってほしいなって…思って…」
「…」
「ごめんなさい!!何日間か…関係ない私が首突っ込んでいいんか…迷ったけど…その…」
「…よかった。」
「ごめんなさ…って、え?」
亜門はホッと息をついた。
自分が幸人達と少しずつ馴染めてきたように小夜にもこうして心配してくれる友達が出来たのだ。
亜門はそれを知って、よかったと思った。
そして亜門も仁美と同じように小夜には笑っていてほしいと思う。
「つまり俺と小夜と仲直りしろってんだろ?」
「は…はい。」
思えば幸人達が口うるさく「仲直りしろ。」と言っていたのは、仁美と同じで心配してくれていたのかもしれない。
亜門は頭を掻いた。
「…とは言っても、小夜も逃げんですよ…俺の顔見るなり…」
「えぇ?」
「だから話すのもままならねぇ。」
「そうなんですか。」
「それに俺もなんて言えばいいのかわかんねぇし…」
「えっと…えっと…」
それきり黙った仁美は少し考えたあと、ゆっくりと亜門を見た。
「では話さなかったら大丈夫ですか?」
「…え?」
「もしよろしければ…」
仁美はとある提案を亜門に言った。
午前中は予行練習で午後は入場門やテントなどの準備をする。
そして各学年から同じ数字のクラスでチームを組み、各チームカラーとイメージ動物キャラが決まっており、そこから皆で団結し応援をする。
亜門もチームカラーの黒いTシャツを着た。
手作りプリントのTシャツにはチームのイメージ動物の熊が肩を組んで闘志を燃やしている。
亜門は朝からグラウンドに集まるために、幸人達と一緒にダラダラと歩いた。
栄吉は自前のうちわを扇いで、既に疲れた様子だった。
「あっちぃー。無理。立ってらんねぇし。」
晋はタオルを頭に巻いて、ご機嫌だった。
「いやいや!!最高の予行練習日和じゃん!!??うぉー!!早く明日になんねぇかな?」
「上村は体育祭楽しみなんだ?」
「おぅともよ!!!俺、わりと足早いんだぜ!!」
浮かれている晋に亜門は「ふーん。」と返事をしながら歩いた。
その隣で幸人が亜門の肩を掴んだ。
「ところで、波古山はいつになったら革城と仲直りできんの?」
亜門は幸人の言葉にビシィッと固まった。
晋も口を開けて驚いた。
「はあ?何何何!!!??二人、喧嘩してたの?」
「そういや最近よく俺らと一緒にいるなぁとは思ってたが…喧嘩してたのか。」
晋と栄吉の会話に亜門は「喧嘩…では…ない。」と、か細い声で一応言った。
「でも最近二人が喋ってんの見ねぇぞ?いつからそんなんなんだ?」
幸人からの質問に亜門はもはや乾いた笑いしか出なかった。
「一週間こんな感じが続いてんだ。」
「「なんだ、一週間かよ。」」
晋と栄吉がハモって、やれやれといった感じだ。
「でも一週間は今まで俺らが何かしら揉めた時の最長なんだよ…。これでも。」
栄吉は呆れたように笑った。
「何?お前ら普段からそんな喧嘩してんの?」
「だから喧嘩じゃねーっての。」
晋がギャハハと笑った。
「おめぇら相性悪いんじゃね?」
亜門は黙って晋が巻いてるタオルをきつく締め直した。
「いててて!こめかみ!!こめかみがぁ!!!」
グラウンドでクラスごとに塊が出来始めたころ、亜門の視線の先に瑞希達と一緒にいる小夜がいた。
亜門が晋のタオルから手を離すのと同時に小夜と目が合った。
少し離れた距離だが、小夜は亜門に向かって深々とお辞儀をした。
そして瑞希達と一緒に列の前の方へと消えた。
幸人は亜門の隣で溜め息をついた。
「は~ぁ!!ありゃ確かに喧嘩よりもややこしい"他人行儀"に逆戻りって感じだな。」
そう、小夜は亜門に会う度に一応、会釈をする。
それが亜門にはよくわからなかった。
(嫌いじゃないけど、話したくないってか?余計わけわかんねぇよ。)
幸人はぼんやりする亜門にまた話した。
「何か知んねぇけど、早く解決してくんね?」
「…は?なんで沢田が…」
「こっちはアンタがピリピリしてたり、ぼんやりされちゃ、聞きたいことも聞けねっての。」
「…」
幸人なりに一応、亜門を気遣って黙っていたらしい。
幸人が世華で斗真を見かけたということ。
確かに亜門も幸人に聞きたいことがあった。
だから幸人の質問にも答えてやりたい。
しかし…
「悪いが、沢田の話より今はこっちのが問題だから。」
亜門は真顔で答えた。
幸人は頬を痙攣《けいれん》させて「わかってたよ、そう言うって。なんとなく…」と怒りを鎮めようとした。
それに亜門はある程度の予測が立っていた。
斗真が世華を彷徨いていた。
そして当時、世華に通っていた小夜と斗真にどうやら接点があるらしい。
つまり幸人から聞く斗真の話は、おのずと小夜の話も聞くことに繋がると思われる。
(だからまず、こっちから順番に片付けないと…)
次第に列が出来て、朝礼台に立つ教師が拡声器で注意をしている。
しかし列は適当のままで、栄吉は喋り続ける。
「…で、原因は?それさえわかれば、すぐに謝って済むだろ?」
「原因っつったって…」
亜門は一人、心の中で考えてみる。
①小夜と斗真との関係がわからなくてモヤモヤ。
②慶介のことで嫉妬して、思わず八つ当たりをした。
③自分の家族や事情を今更ながら黙ってた。
④小夜に子供扱いしたと勘違いされた。
…エトセトラ。
「…心当たりがありすぎて、どっから弁解したらいいんかわかんねぇ。むしろどれから言うべき?」
「「なんじゃそりゃ。」」
晋と栄吉は呆れた眼差しを亜門に向けた。
晋は深く息を吐いた。
「もうなんでもいいからとにかく謝れよ。」
「…なあ?さっきから思ってたんだが、なんで俺が悪い前提で話が進むんだ?」
「じゃあハコは何もしてないんだ?」
「…」
⑤思わず抱き締めてしまった。
亜門はカラッカラな声で力なく笑った。
「ハ、ハハ、ハ。そうだよ…俺のこと、ケダモノとでも呼べばいい。」
「ケダモノ。」
「変態。」
「ムッツリ。」
亜門は三人を蹴り飛ばした。
咄嗟に避けた幸人と違い、まともに受けた晋はギャーギャー騒いだ。
「何すんだよ!!??言えっつったの、てめぇだろ!!??」
「…ムカつくオプションも付いてきたから、つい…」
「だからって蹴るな!!!!大体どっちが悪いとか、もうつべこべ言うな!!こういうは男から謝った方がいろいろ早いんだ」
「なんじゃそりゃ」
「それにいいか、ハコ?体育祭という一大イベント!!これを逃していいのか?」
「はい?」
晋は声を潜めて力説した。
「学校行事というのは人を浮かれさすものなのだ…」
「…あぁ。まさにその見本が目の前に。」
亜門の嫌味も晋はスルーして話を続ける。
「今まで革城もドモのセットというハンデを背負っていたが、」
「…え?ココ、怒っていいところ?」
「それがなくなった今!!よく見たら革城も可愛い系だしよ、女子だけでなく誰かクラスの男子が寄ってくるかもしんねぇぞ!?」
「…」
「その場のノリでツーショット写真撮ったり、Tシャツにメッセージ書き合ったり、どさくさ紛れに勝利の喜びに抱き付いたり…」
「…」
「するぞ!?俺は奈未ちゃんに!!」
「…お前の話かよ。」
「モリが奈未ちゃんにしないなら、俺はするぞ!!!」
栄吉はすかさず晋の胸ぐらを掴んだ。
「何故、俺の話題になった?…つーか、今言ったことを町田にホントにやったらマジしばくからな?特に最後。」
「しばく前にモリもやっちゃえよ☆」
二人のやり取りにクククと笑いを洩らしながら、幸人も亜門に言った。
「まぁ、うかうかしてたら革城も誰かに取られるかもよ?ってこった。」
「…そうは言っても、こっちがなんか言う前にアイツどっか行くんだよ。ペコッと会釈してはサササーッて…」
亜門がそう言ったあと、沈黙が出来た。
亜門は「ん?」と疑問に感じ、三人の顔を見た。
晋と栄吉はポカンと瞬きをしているし、幸人はニヤニヤ笑っている。
晋は亜門の顔を覗きこんだ。
「…言わねぇの?いつもみたいに『別にそんなんじゃねぇ』って。」
「……え?」
「革城とのこと突っ込むと言うじゃん。『アイツのことはそんなんじゃねぇ』って。」
「…」
亜門は目を細めて眉をひそめる。
幸人だけでなく、晋と栄吉もニヤッと笑う。
「ん~?それは何ですか?そういうことでいいってこと~?」
亜門はゆっくりと三人に顔を背けた。
しかし幸人はそんな亜門の肩に肘をかける。
「へー。だよなー。誰かに取られるのは嫌だよなー。」
「…………そうだな。」
亜門は三人に顔を背けたまま、限りなく小さな声で呟いた。
だが赤い顔は隠しきれない。
「誰かー!!!!お赤飯炊いてあげてぇー!!!!おかあちゃあーん!!!!」
「ちょ…バカ、上村!!」
何故か感極まって叫び出す晋を黙らそうと亜門は焦ったが、時既に遅く、近くの教師に注意された。
その間、幸人と栄吉は見て見ぬふりをした。
教師が去ったあと、亜門は溜め息をついた。
「てめぇ…ここが学校じゃなかったら殴ってるぞ。」
「さっき構わず蹴ったくせに。いやーでも珍しくハコが可愛いらしかったもんだからぁ。ねぇ、ユキちゃん?」
「確かにな。キモいぐらいだった。」
「……沢田。お前のその冷たさ、どうにかなんねぇの?」
もう色々疲れた亜門はその抵抗が精一杯だった。
ザワザワとした列に向かって注意事項を続けられる中、栄吉が亜門の肩をトントンと叩いた。
「だったら尚更、早くどうにかしなくちゃなんねぇな?取っ捕まえてでも、早く仲直りしろ。」
「…取っ捕まえる…ねぇ…。」
朝礼台からの注意事項も終わり、列は乱れた。
このあと競技の入場退場の確認のためのデモンストレーションだけ行われる。
自分達の参加競技までは各自チームの場所で待つ。
同じクラスは同じ場所で待つわけで、その場所には小夜も当然ながらいる。
小夜をジッと見ると、こっちに気付いて目が合う。
目が合えば小夜は困ったようにおどおどして自然に目を反らす。
しょうがないと言ってしまえばそうなる。
何から聞けばいいのか、何から言えばいいのか。
お互いにビビっている。
お互いの知らないことを詰め寄れば、今までの関係がおかしくなりそうで不安だ。
(…かといってこのまま放っといても悪化するだけだけど…)
亜門はクラスの団体から少し離れて、どうすべきか悩んでいると肩を叩かれた。
「わかってる!!どうにかするっつの!!」
「…え…と?」
亜門は「あ。」と声を洩らした。
てっきり幸人達の内の誰かかと思ってキツめの口調で言ったが、叩かれたのは瑞希といつも一緒にいた安藤仁美だった。
「ご…ごめんなさい。私…いきなり呼んでしまって…」
「いや…違います。すみません。沢田かと勘違いして…」
「私こそすみません。」
仁美とはほぼ初めての対話となるので、亜門はなんて言えばいいかわからず戸惑った。
「あの…」
仁美は周りを確認して遠慮がちに聞いてきた。
「波古山くんは…小夜ちゃんに何か怒ってるんですか?」
「…え?」
「最近、二人一緒にいないみたいですし…ミズキとユウはそんなこと気付いてもないみたいだけど…」
「あぁ…えっと…俺は別に…怒って、ないです。」
ただ自分を知らせるのも小夜を知るのもビビっているだけだ。
「あ…よかった…」
仁美はフワッと微笑んだ。
「この何日間か小夜ちゃんと一緒にいて、仲良くなれたけど…なんか元気がないみたいで…」
「…元気がない?」
「色々話したり、笑ったりしてるけど…どこか表情が固いっていうか、心から楽しくなさそうっていうか。」
亜門も仁美達と一緒にいる小夜を見ていたが、そんな風には思わなかったから「え?」と小さな声を出した。
「なんだか心配になっちゃって…もっと…遠足の時みたいに、波古山くんと一緒にいた時の小夜ちゃんみたいに笑ってほしいなって…思って…」
「…」
「ごめんなさい!!何日間か…関係ない私が首突っ込んでいいんか…迷ったけど…その…」
「…よかった。」
「ごめんなさ…って、え?」
亜門はホッと息をついた。
自分が幸人達と少しずつ馴染めてきたように小夜にもこうして心配してくれる友達が出来たのだ。
亜門はそれを知って、よかったと思った。
そして亜門も仁美と同じように小夜には笑っていてほしいと思う。
「つまり俺と小夜と仲直りしろってんだろ?」
「は…はい。」
思えば幸人達が口うるさく「仲直りしろ。」と言っていたのは、仁美と同じで心配してくれていたのかもしれない。
亜門は頭を掻いた。
「…とは言っても、小夜も逃げんですよ…俺の顔見るなり…」
「えぇ?」
「だから話すのもままならねぇ。」
「そうなんですか。」
「それに俺もなんて言えばいいのかわかんねぇし…」
「えっと…えっと…」
それきり黙った仁美は少し考えたあと、ゆっくりと亜門を見た。
「では話さなかったら大丈夫ですか?」
「…え?」
「もしよろしければ…」
仁美はとある提案を亜門に言った。
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