異世界の魔女と四大王国 〜始まりの魔法と真実の歴史〜

祐*

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第四章 壊れる日常

4-8. 召喚

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「今気付いたんですけど……」

 先日魔力制御の訓練をした広場で、地面や木の幹、空などを調べていたカウンシルの五人は、ユウリの呟きに顔を上げた。

「何か、見つかりましたか?」

 隣にいたレヴィの問いに、ユウリは言いにくそうに、モゴモゴと言葉を返す。

「いや、あの……調査って、一体何をすればいいんですか……?」
「はぁ?!」

 一番遠くにいたはずのユージンがいち早く声を漏らして、ユウリは素早くレヴィの陰に隠れた。

「お前、分かってなかったのか!?」
「なんとなくは……でも、ホラ、この間綺麗に片付けちゃったし……」
「ちょ、ちょっと、ユウリさん……?」

 大股でこちらに近付いてくるユージンに対し、ユウリはレヴィをぐいぐいと前に押し出しながら、後退していく。目の前で拳を振り上げるユージンを宥めると、レヴィは小さく詠唱した。

「この魔法で、魔法痕が探れます。何か反応があれば、そこを重点的に」
「ほぉぉおお、そういうことなんですね」
「あの、しかし、これは上級魔法なので」
「分かりました。私は、目に見える違和感を探せばいいんですね?」

 はい、と頷かれて、ユウリはようやく自分のすべきことが分かった。
 彼女の調査範囲は、片付いてしまった広場でない、別の場所。
 あまり遠くに行かないように、という声を背に、ユウリは念のため機械時計を強く握って、草や木の枝を掻き分けながら、森の中へ入っていく。
 広場やけもの道を外れると、生い茂る草木に阻まれて、中々思うように進めない。無闇矢鱈に掻き分けてしまうと細いものを見落としてしまいそうだし、だからと言って隅々まで満遍なく目を向けようと思うと日が暮れてしまいそうだ。

 とりあえず森の入り口に向かって歩いていたユウリのつま先に、明らかに自然物でない何かがコツンと当たる。風を起こして草木を倒すと、金の紋章が入った小さな小瓶が落ちている。

(課外実習の時、落ちたのかな)

 屈み込んで何気なく拾った拍子に、ユウリの目の端に何かが映った。反射的に《始まりの魔法》で木々を薙ぎ払う。

「わあ! ユウリ、危ないよ!?」

 突然森の中から広場に向かって放たれた魔法に、抗議の声を上げたリュカに叫ぶ。

「リュカさん、人がいた! 誰かが私たちを見てた!」
「何だって!?」

 ユウリが容赦なくもう一度風を起こすと、土煙の向こうを走り去る黒いフード姿が見えた。それを追って走り出したユウリを、他の五人も追い掛ける。

「つかまえた!!」

 何度目かに放ったユウリの《魔法》に足元を取られ、黒フードで顔を隠した痩せた男が、もんどりうって地面に転がった。
 すぐさま拘束のために絡まってくる蔦を魔法で弾きながら、その男は胸元から森で見たのと同じ小瓶を出すと、ユウリに見せつけるように一気に飲み下す。

「何を飲んだっ!」

 後ろからユージンの怒声が飛ぶ。
 ニヤリ、とローブの下の顔が醜く歪められて、明らかに、敵意を持った魔力が増幅していく。
 ユウリが目を見張ったまま硬直する前で、まるでそれ自体が意思を持っているかのように、ぶつぶつと呪文を唱えている男の身体を頭から飲み込んでしまう。

 ——私は、この魔力を知っている

「ユウリ!」

 ——その時、どうした?

 突然頭を抱えたまま苦しげに膝をつくユウリの側に、ヨルンが跳躍して防御障壁を展開する。

「召喚魔法か!」

 男が何をしようとしているのか、逸早く気付いたロッシが叫びながら放った魔法は、盛り上がる大きな影に弾かれた。
 バチバチと散っていた赤黒い火花が収まると、濛々と立ち上がる砂煙の中に痩せこけた男の姿はなく、代わりに十倍ほどに膨れ上がった赤黒い体躯が現れる。
 男はその身を媒介にして、悪魔のような魔物を召喚していた。

「あれは、オーガ……!」
「チッ……なんてモノを喚び出すんだ」

 呆然とする彼らに揺り起こされるように、その魔物はゆっくりと両目を開いていった。
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