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第十章 終わりと始まり
10-2. 王子達の出立
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執務室へ集められたユウリとカウンシルの面々は、信じられないものでも見るように、報告を終えたラヴレの顔を凝視している。
中立である教会。そこに巣食う、帝国の影。
予想通りであったにしろ、こうはっきりと明確な証拠を持って提示されると、絶望的な気分になった。
しかし、ラヴレはさらに続ける。
「各国の支部にまで手が及んでいる可能性があります」
四大王国——ガイア、パリア、ノーラン、フィニーランドの教会支部は、比較的近年になって、わざわざ《北の大地》まで出向かぬともその業務が円滑に進むよう設置されていた。
次期王位継承者の洗礼や登録もここで行われるようになったため、王子達には馴染みの深い場所でもある。
「どういうことですか」
「報告書には、あまり詳しく記されていません。だからこそ、お呼びしたんですよ」
教会支部に発見されたという痕跡は、偶然では決してない。
あの日、学園上空を覆ったドラゴンの群れも、古代文字を使った複雑な魔法陣によって喚び出されていた。
「各国の教会支部への、一般人の立ち入りは制限されています。ということは、やはり教会関係者が一番疑わしい」
「そうなりますね」
「そこで、貴方方に調査していただきたいのです」
「俺たち……ですか?」
呟いたロッシに、ラヴレが頷く。
「ええ。教会支部への立ち入り制限……それは、その国の王族の限りではない」
「ああ、そうか。俺たちなら、許可を待たずに入ることができる」
「ええ。ユージン君のいうように、貴方方なら許可なく、咎められることなく内部調査ができます。発見し次第、速やかに伝達魔法を飛ばしてください。私とユウリさんは、学園に残り、報告を待ちます。先日の陣が、ユウリさんの魔法で発動したことを思うと、これが一番の対策ではないでしょうか」
断言するように告げたラヴレに、皆は同意するしかない。それ以外の、またそれ以上の一手が思い浮かばない。
「僕は、学園の方を見回ります」
「あ、私も。ユウリの護衛に学園長が就くなら、有事の時の生徒の避難とか、フォンに頼んだ方がいいだろうし」
「そうですね。レヴィ君は、ナディアさんと見回りを。ヴァネッサさんは、フォン君と警備団の方をお任せします」
ラヴレに指示されてすぐ、二人は執務室を後にする。
「学園長。確かに俺の力は、学園長には及びません。けれど、こんな状態でユウリの周りが手薄になるのは……」
「ヨルンさん……」
ぎゅっと、ユウリを外套の中に閉じ込めたまま、ヨルンは唸るようにこぼした。
一人で帰省する、と言ったのは、他のカウンシルメンバー達がユウリを守ってくれると思っていたからだ。
何処から仕掛けてくるかもわからない、そんな脅威が四六時中、ユウリを狙っている。
いくら学園長だからといって、守りきれるのだろうか。
ヨルンの懸念は、ラヴレもわかっていた。
しかしながら、教会が味方でない今、それしか方法はないのではないだろうか。
「大丈夫です、ヨルンさん」
「ユウリ、でも」
「言いましたよね。いざとなったら《始まりの魔法》で呼び戻しますから」
微笑むユウリを、ヨルンはもう一度抱き締めた。
僅かに震えていたユウリの唇が彼女の不安を物語っていたのに、それを微塵も見せぬよう振る舞う気丈さに、愛しさが募る。
「移動魔法陣管理所へ各国への転移魔法陣の使用を通しています。すぐに向かっていただけますか」
ユージン、ロッシと、次々執務室を出ていく中、リュカは一旦回れ右をして、ユウリをヨルンの外套ごとぎゅっとした。
少しムッとしたヨルンが、ユウリの額に口付ける。
「くれぐれも気をつけて」
「ヨルンさんも……」
一人一人の不安を写すように、空には重暗い雲が立ち籠め始めていた。
中立である教会。そこに巣食う、帝国の影。
予想通りであったにしろ、こうはっきりと明確な証拠を持って提示されると、絶望的な気分になった。
しかし、ラヴレはさらに続ける。
「各国の支部にまで手が及んでいる可能性があります」
四大王国——ガイア、パリア、ノーラン、フィニーランドの教会支部は、比較的近年になって、わざわざ《北の大地》まで出向かぬともその業務が円滑に進むよう設置されていた。
次期王位継承者の洗礼や登録もここで行われるようになったため、王子達には馴染みの深い場所でもある。
「どういうことですか」
「報告書には、あまり詳しく記されていません。だからこそ、お呼びしたんですよ」
教会支部に発見されたという痕跡は、偶然では決してない。
あの日、学園上空を覆ったドラゴンの群れも、古代文字を使った複雑な魔法陣によって喚び出されていた。
「各国の教会支部への、一般人の立ち入りは制限されています。ということは、やはり教会関係者が一番疑わしい」
「そうなりますね」
「そこで、貴方方に調査していただきたいのです」
「俺たち……ですか?」
呟いたロッシに、ラヴレが頷く。
「ええ。教会支部への立ち入り制限……それは、その国の王族の限りではない」
「ああ、そうか。俺たちなら、許可を待たずに入ることができる」
「ええ。ユージン君のいうように、貴方方なら許可なく、咎められることなく内部調査ができます。発見し次第、速やかに伝達魔法を飛ばしてください。私とユウリさんは、学園に残り、報告を待ちます。先日の陣が、ユウリさんの魔法で発動したことを思うと、これが一番の対策ではないでしょうか」
断言するように告げたラヴレに、皆は同意するしかない。それ以外の、またそれ以上の一手が思い浮かばない。
「僕は、学園の方を見回ります」
「あ、私も。ユウリの護衛に学園長が就くなら、有事の時の生徒の避難とか、フォンに頼んだ方がいいだろうし」
「そうですね。レヴィ君は、ナディアさんと見回りを。ヴァネッサさんは、フォン君と警備団の方をお任せします」
ラヴレに指示されてすぐ、二人は執務室を後にする。
「学園長。確かに俺の力は、学園長には及びません。けれど、こんな状態でユウリの周りが手薄になるのは……」
「ヨルンさん……」
ぎゅっと、ユウリを外套の中に閉じ込めたまま、ヨルンは唸るようにこぼした。
一人で帰省する、と言ったのは、他のカウンシルメンバー達がユウリを守ってくれると思っていたからだ。
何処から仕掛けてくるかもわからない、そんな脅威が四六時中、ユウリを狙っている。
いくら学園長だからといって、守りきれるのだろうか。
ヨルンの懸念は、ラヴレもわかっていた。
しかしながら、教会が味方でない今、それしか方法はないのではないだろうか。
「大丈夫です、ヨルンさん」
「ユウリ、でも」
「言いましたよね。いざとなったら《始まりの魔法》で呼び戻しますから」
微笑むユウリを、ヨルンはもう一度抱き締めた。
僅かに震えていたユウリの唇が彼女の不安を物語っていたのに、それを微塵も見せぬよう振る舞う気丈さに、愛しさが募る。
「移動魔法陣管理所へ各国への転移魔法陣の使用を通しています。すぐに向かっていただけますか」
ユージン、ロッシと、次々執務室を出ていく中、リュカは一旦回れ右をして、ユウリをヨルンの外套ごとぎゅっとした。
少しムッとしたヨルンが、ユウリの額に口付ける。
「くれぐれも気をつけて」
「ヨルンさんも……」
一人一人の不安を写すように、空には重暗い雲が立ち籠め始めていた。
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