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第十章 終わりと始まり
10-12. 公表と発表
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翌日から、ユウリの日々は目まぐるしく過ぎていった。
まず、法皇は、教会幹部会へとユウリを招いた。
アトヴァルの最期を知ったクタトリアの残党達は、我先にと姿を隠そうとしていた。その始末をつける為、ユウリは《契約の地図》を開く。
「《始まりの魔女》の名の下、これを《契約の地図》に記し、協定を終結する」
幹部会全員と四大王国国王の同意がなければならないとする《始まりの魔女》封印に関する記述を終えて、ユウリはほっと息をついた。
これで、ある一部の者たちが《始まりの魔女》を手にかけることは出来ない。
無事《契約の地図》を仕舞って、紅い瞳で微笑んだ《魔女》に畏れをなした幹部の面々に跪かれ、かしずかれ、こそばゆい思いをするユウリに、ラヴレは苦笑する。
次に行ったのは、教会の名の下、真実の歴史を発表することだった。
これは、イェルディスの残した全ての経緯を最も詳しく知るラヴレが表立って行なった。
民衆は、クタトリア帝国の本当の姿に戦慄し、《始まりの魔女》の誕生と初代四大王国国王たちの活躍を賞賛し、そして、《始まりの魔女》の悲劇の終わりに涙した。
そのタイミングで、ラヴレは、復活した《始まりの魔女》が現在、学園に在学中であることを公表した。
それが、ユウリである、と明言こそされなかったが、学園内では、カウンシルの庇護を受ける《奨学生》がそうではないか、と瞬く間に広まったようだった。
「ユウリ……さん?」
背後から声を掛けられてユウリが振り向くと、数人の生徒が居て、小さな嬌声が上がる。
本日何度目かのやりとりに、ユウリは少々うんざりしている。
「えっと、貴女、もしかして《始まりの魔女》様なのかしら……?」
期待に満ちた目で問い掛ける生徒達とは別に、率先して嫌がらせをしていた女生徒達が遠巻きに見ていた。
ユウリは少し仕返しの意味も込めて、ニッコリ笑って小首を傾げてやる。
きゃあきゃあと彼女を囲むミーハーな生徒達とは裏腹に、嫌がらせグループは顔を真っ青にして足早に立ち去っていった。
「もう、なんなの、みんな! あれだけシカトしていた癖に、今更!」
ようやく解放されると、ずっと黙って成り行きを見ていたナディアが憤慨している。
「仕方ないよ。ほら、私、《始まりの魔女》様だし?」
「もうっ」
肩を竦めながら自嘲気味に笑うユウリを、ナディアが抱きしめた。
「私の前で、その顔はなしよ! 無理してるの、バレバレなんだから!」
「……ありがと、ナディア」
「もういっそ、さらって閉じ込めて、私だけで愛でてあげたいわ」
「いや、そっちのが怖いから!!」
真顔でさらっと恐ろしいことを言うナディアだが、その態度が以前と全く変わらない。ユウリはそれが、とてつもなく嬉しかった。少々重たすぎる彼女の愛は、確実にユウリの心を軽くしてくれている。
二人が向かった大講堂では、何やら人垣が出来、ざわざわと騒がしい。前方では、撮影機と思われる閃光がいくつもほとばしっていた。
「な、何事……?」
ユウリがぽつりと呟くと、徐々に人垣が割れて道ができる。
その先に、笑顔のヨルンが居て、彼女に手招きしていた。
——そこはかとなく、嫌な予感しかしない
ナディアに加えて、カウンシルの面々の態度も以前と全く変わらなかった。けれど、それが意味するところは、リュカが変わらずシスコンを炸裂するように、ヨルンも人目を憚らずユウリを溺愛しているということだ。
《始まりの魔女》騒動に加えて、色んな意味での好奇の目に晒されるのに慣れない一般人のユウリは、たまったものではない。
恐る恐るナディアの背後に隠れてヨルンに近づいたユウリは、警戒しながらヨルンに尋ねる。
「なんの騒ぎですか、これ」
「んーそうだねぇ」
緩慢な動作でユウリの背に手を回し、自分の側に引き寄せる。
ナディアが、面白くなさそうにそれを見て舌打ちしたのを、ユウリは見逃さなかった。
記者のような風貌の男が、撮影隊に指示を出しながら、メモを取っている。
ヨルンはその男に、にっこりと微笑んで告げた。
「そういうわけで、本当のことだよ」
「だから、なんの話ですかってば!」
意味もわからずバシャバシャと撮影されるのに苛立ちながら、ユウリはヨルンを仰ぎ見る。
ニヤリと悪戯っぽい笑みを返して、彼は続けた。
「《始まりの魔女》は、俺、フィニーランド王国次期王位継承者である、ヨルン = ブルムクヴィストの正妃候補だ」
声高々と発表したヨルンから一拍置いて、ユウリとナディアの絶叫が大講堂へこだましていた。
まず、法皇は、教会幹部会へとユウリを招いた。
アトヴァルの最期を知ったクタトリアの残党達は、我先にと姿を隠そうとしていた。その始末をつける為、ユウリは《契約の地図》を開く。
「《始まりの魔女》の名の下、これを《契約の地図》に記し、協定を終結する」
幹部会全員と四大王国国王の同意がなければならないとする《始まりの魔女》封印に関する記述を終えて、ユウリはほっと息をついた。
これで、ある一部の者たちが《始まりの魔女》を手にかけることは出来ない。
無事《契約の地図》を仕舞って、紅い瞳で微笑んだ《魔女》に畏れをなした幹部の面々に跪かれ、かしずかれ、こそばゆい思いをするユウリに、ラヴレは苦笑する。
次に行ったのは、教会の名の下、真実の歴史を発表することだった。
これは、イェルディスの残した全ての経緯を最も詳しく知るラヴレが表立って行なった。
民衆は、クタトリア帝国の本当の姿に戦慄し、《始まりの魔女》の誕生と初代四大王国国王たちの活躍を賞賛し、そして、《始まりの魔女》の悲劇の終わりに涙した。
そのタイミングで、ラヴレは、復活した《始まりの魔女》が現在、学園に在学中であることを公表した。
それが、ユウリである、と明言こそされなかったが、学園内では、カウンシルの庇護を受ける《奨学生》がそうではないか、と瞬く間に広まったようだった。
「ユウリ……さん?」
背後から声を掛けられてユウリが振り向くと、数人の生徒が居て、小さな嬌声が上がる。
本日何度目かのやりとりに、ユウリは少々うんざりしている。
「えっと、貴女、もしかして《始まりの魔女》様なのかしら……?」
期待に満ちた目で問い掛ける生徒達とは別に、率先して嫌がらせをしていた女生徒達が遠巻きに見ていた。
ユウリは少し仕返しの意味も込めて、ニッコリ笑って小首を傾げてやる。
きゃあきゃあと彼女を囲むミーハーな生徒達とは裏腹に、嫌がらせグループは顔を真っ青にして足早に立ち去っていった。
「もう、なんなの、みんな! あれだけシカトしていた癖に、今更!」
ようやく解放されると、ずっと黙って成り行きを見ていたナディアが憤慨している。
「仕方ないよ。ほら、私、《始まりの魔女》様だし?」
「もうっ」
肩を竦めながら自嘲気味に笑うユウリを、ナディアが抱きしめた。
「私の前で、その顔はなしよ! 無理してるの、バレバレなんだから!」
「……ありがと、ナディア」
「もういっそ、さらって閉じ込めて、私だけで愛でてあげたいわ」
「いや、そっちのが怖いから!!」
真顔でさらっと恐ろしいことを言うナディアだが、その態度が以前と全く変わらない。ユウリはそれが、とてつもなく嬉しかった。少々重たすぎる彼女の愛は、確実にユウリの心を軽くしてくれている。
二人が向かった大講堂では、何やら人垣が出来、ざわざわと騒がしい。前方では、撮影機と思われる閃光がいくつもほとばしっていた。
「な、何事……?」
ユウリがぽつりと呟くと、徐々に人垣が割れて道ができる。
その先に、笑顔のヨルンが居て、彼女に手招きしていた。
——そこはかとなく、嫌な予感しかしない
ナディアに加えて、カウンシルの面々の態度も以前と全く変わらなかった。けれど、それが意味するところは、リュカが変わらずシスコンを炸裂するように、ヨルンも人目を憚らずユウリを溺愛しているということだ。
《始まりの魔女》騒動に加えて、色んな意味での好奇の目に晒されるのに慣れない一般人のユウリは、たまったものではない。
恐る恐るナディアの背後に隠れてヨルンに近づいたユウリは、警戒しながらヨルンに尋ねる。
「なんの騒ぎですか、これ」
「んーそうだねぇ」
緩慢な動作でユウリの背に手を回し、自分の側に引き寄せる。
ナディアが、面白くなさそうにそれを見て舌打ちしたのを、ユウリは見逃さなかった。
記者のような風貌の男が、撮影隊に指示を出しながら、メモを取っている。
ヨルンはその男に、にっこりと微笑んで告げた。
「そういうわけで、本当のことだよ」
「だから、なんの話ですかってば!」
意味もわからずバシャバシャと撮影されるのに苛立ちながら、ユウリはヨルンを仰ぎ見る。
ニヤリと悪戯っぽい笑みを返して、彼は続けた。
「《始まりの魔女》は、俺、フィニーランド王国次期王位継承者である、ヨルン = ブルムクヴィストの正妃候補だ」
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