異世界の魔女と四大王国 〜始まりの魔法と真実の歴史〜

祐*

文字の大きさ
111 / 114
第十章 終わりと始まり

10-12. 公表と発表

しおりを挟む
 翌日から、ユウリの日々は目まぐるしく過ぎていった。

 まず、法皇は、教会幹部会へとユウリを招いた。
 アトヴァルの最期を知ったクタトリアの残党達は、我先にと姿を隠そうとしていた。その始末をつける為、ユウリは《契約の地図》を開く。

「《始まりの魔女》の名の下、これを《契約の地図》に記し、協定を終結する」

 幹部会全員と四大王国国王の同意がなければならないとする《始まりの魔女》封印に関する記述を終えて、ユウリはほっと息をついた。
 これで、ある一部の者たちが《始まりの魔女》を手にかけることは出来ない。
 無事《契約の地図》を仕舞って、紅い瞳で微笑んだ《魔女》に畏れをなした幹部の面々にひざまずかれ、かしずかれ、こそばゆい思いをするユウリに、ラヴレは苦笑する。

 次に行ったのは、教会の名の下、真実の歴史を発表することだった。
 これは、イェルディスの残した全ての経緯を最も詳しく知るラヴレが表立って行なった。
 民衆は、クタトリア帝国の本当の姿に戦慄し、《始まりの魔女》の誕生と初代四大王国国王たちの活躍を賞賛し、そして、《始まりの魔女》の悲劇の終わりに涙した。

 そのタイミングで、ラヴレは、復活した《始まりの魔女》が現在、学園に在学中であることを公表した。
 それが、ユウリである、と明言こそされなかったが、学園内では、カウンシルの庇護を受ける《奨学生》がそうではないか、と瞬く間に広まったようだった。

「ユウリ……さん?」

 背後から声を掛けられてユウリが振り向くと、数人の生徒が居て、小さな嬌声が上がる。
 本日何度目かのやりとりに、ユウリは少々うんざりしている。

「えっと、貴女、もしかして《始まりの魔女》様なのかしら……?」

 期待に満ちた目で問い掛ける生徒達とは別に、率先して嫌がらせをしていた女生徒達が遠巻きに見ていた。
 ユウリは少し仕返しの意味も込めて、ニッコリ笑って小首を傾げてやる。
 きゃあきゃあと彼女を囲むミーハーな生徒達とは裏腹に、嫌がらせグループは顔を真っ青にして足早に立ち去っていった。

「もう、なんなの、みんな! あれだけシカトしていた癖に、今更!」

 ようやく解放されると、ずっと黙って成り行きを見ていたナディアが憤慨している。

「仕方ないよ。ほら、私、《始まりの魔女》様だし?」
「もうっ」

 肩を竦めながら自嘲気味に笑うユウリを、ナディアが抱きしめた。

「私の前で、その顔はなしよ! 無理してるの、バレバレなんだから!」
「……ありがと、ナディア」
「もういっそ、さらって閉じ込めて、私だけで愛でてあげたいわ」
「いや、そっちのが怖いから!!」

 真顔でさらっと恐ろしいことを言うナディアだが、その態度が以前と全く変わらない。ユウリはそれが、とてつもなく嬉しかった。少々重たすぎる彼女の愛は、確実にユウリの心を軽くしてくれている。

 二人が向かった大講堂では、何やら人垣が出来、ざわざわと騒がしい。前方では、撮影機と思われる閃光がいくつもほとばしっていた。

「な、何事……?」

 ユウリがぽつりと呟くと、徐々に人垣が割れて道ができる。
 その先に、笑顔のヨルンが居て、彼女に手招きしていた。

 ——そこはかとなく、嫌な予感しかしない

 ナディアに加えて、カウンシルの面々の態度も以前と全く変わらなかった。けれど、それが意味するところは、リュカが変わらずシスコンを炸裂するように、ヨルンも人目を憚らずユウリを溺愛しているということだ。
 《始まりの魔女》騒動に加えて、色んな意味での好奇の目に晒されるのに慣れない一般人のユウリは、たまったものではない。

 恐る恐るナディアの背後に隠れてヨルンに近づいたユウリは、警戒しながらヨルンに尋ねる。

「なんの騒ぎですか、これ」
「んーそうだねぇ」

 緩慢な動作でユウリの背に手を回し、自分の側に引き寄せる。
 ナディアが、面白くなさそうにそれを見て舌打ちしたのを、ユウリは見逃さなかった。
 記者のような風貌の男が、撮影隊に指示を出しながら、メモを取っている。
 ヨルンはその男に、にっこりと微笑んで告げた。

「そういうわけで、本当のことだよ」
「だから、なんの話ですかってば!」

 意味もわからずバシャバシャと撮影されるのに苛立ちながら、ユウリはヨルンを仰ぎ見る。
 ニヤリと悪戯っぽい笑みを返して、彼は続けた。

「《始まりの魔女》は、俺、フィニーランド王国次期王位継承者である、ヨルン = ブルムクヴィストの正妃候補だ」

 声高々と発表したヨルンから一拍置いて、ユウリとナディアの絶叫が大講堂へこだましていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

断罪ざまぁも冴えない王子もお断り!~せっかく公爵令嬢に生まれ変わったので、自分好みのイケメン見つけて幸せ目指すことにしました~

古堂 素央
恋愛
【完結】 「なんでわたしを突き落とさないのよ」  学園の廊下で、見知らぬ女生徒に声をかけられた公爵令嬢ハナコ。  階段から転げ落ちたことをきっかけに、ハナコは自分が乙女ゲームの世界に生まれ変わったことを知る。しかもハナコは悪役令嬢のポジションで。  しかしなぜかヒロインそっちのけでぐいぐいハナコに迫ってくる攻略対象の王子。その上、王子は前世でハナコがこっぴどく振った瓶底眼鏡の山田そっくりで。  ギロチンエンドか瓶底眼鏡とゴールインするか。選択を迫られる中、他の攻略対象の好感度まで上がっていって!?  悪役令嬢? 断罪ざまぁ? いいえ、冴えない王子と結ばれるくらいなら、ノシつけてヒロインに押しつけます!  黒ヒロインの陰謀を交わしつつ、無事ハナコは王子の魔の手から逃げ切ることはできるのか!?

『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています

六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。 しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。 「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!

【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。 ※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。

転生皇女セラフィナ

秋月真鳥
恋愛
公爵家のメイド・クラリッサは、幼い主君アルベルトを庇って十五歳で命を落とした。 目覚めたとき、彼女は皇女セラフィナとして生まれ変わっていた——死の、わずか翌日に。 赤ん坊の身体に十五歳の記憶を持ったまま、セラフィナは新しい人生を歩み始める。 皇帝に溺愛され、優しい母に抱かれ、兄に慈しまれる日々。 前世で冷遇されていた彼女にとって、家族の愛は眩しすぎるほどだった。 しかし、セラフィナの心は前世の主・アルベルトへの想いに揺れ続ける。 一歳のお披露目で再会した彼は、痩せ細り、クラリッサの死を今も引きずっていた。 「わたしは生涯結婚もしなければ子どもを持つこともない。わたしにはそんな幸福は許されない」 そう語るアルベルトの姿に、セラフィナは決意する。 言葉も満足に話せない。自由に動くこともできない。前世の記憶を明かすこともできない。 それでも、彼を救いたい。彼に幸せになってほしい。 転生した皇女が、小さな身体で挑む、長い長い物語が始まる。 ※ノベルアップ+、小説家になろうでも掲載しています。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...