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第1章 3度目の人生
[08] 1度目の人生:最後の時①
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私はすぐに王邸の地下牢に囚われた。
窓もなく、ネズミやゴキブリが走り回り、すえた臭いがした。
地下牢で3日間過ごした後に、裁判となった。
通常より早い裁判だった。
王女は亡くなり、バードックはようやく目覚めたがまだ起き上がれないと聞かされ、私は王族殺害と殺害未遂の重罪を犯したと言われた。
私についた弁護士は平民出身で、貴族たちに怯えて言いなりだった。
私は事実を訴えたが捏造や歪曲された証言が多数あり、私は断首となることが決まった。
囚われた牢の中で、うずくまっていると、ダリアンの声が聞こえた。
「お義姉さま、お元気? 皇后さまのお茶会の帰りに寄ってあげたのよ」
私は顔を上げた。これみよがしに着飾ったダリアンが楽しそうに私を見ていた。
私を見張っていた兵士を買収したようで、ダリアンしかいなかった。
親も一度も訪問しない場所にダリアンが来るとは思ってもみなかった。
「3日後には刑が執行されるというから、最後のご挨拶に来たの。いろいろ知りたいこともあるでしょうし」
「知りたいこと?」
「ええ、最後ですもの。できる範囲内でお答えするわ」
「家門は……レノドン伯爵家はどうなったの?」
「あなたが所有していた鉱山を王室に献上して、お咎めなしになったわ」
私は衝撃を受けた。実母から受け継いだ鉱山を騙し取られ、そのおかげでレノドン伯爵もスカビエス夫人もそして、ここにいるダリアンも、誰も傷ついていないことに。
「たかが鉱山に、そんな価値があるなんて……」
「あら? 何も知らなかったのね。確かに最初の頃は銅が少々出ていただけだったけど、奥に魔晶石があったのよ。とても良質で純度の高い物がたくさん。フフフ。あなたには内緒だったけど」
魔晶石は、魔力を保存することが出来る石で、その石があるからこそ、電力が使える。
石によって耐久年数が違い、質の良い魔晶石を求めて、王室だけでなく貴族もが探していた。
それが、私の手元にあったなんて。私は絶句した。
「そのお蔭で私たちは安泰。あなたは、王族殺しだけど」
ダリアンの容赦ない言葉で、私はヴァイバーナンの苦しむ顔と口から流れた赤い血を思い出した。
「……あなたがグラスに毒を盛ったの?」
「フフフ。そうであってほしいのね? 可哀想に」
「バードック様は知っていたのでしょう?」
「あら? 知っていたと確信している口ぶりね」
「だって、どちらのグラスが自分のところにくるのか分からないのだから、死ななかったってことは少ししか口をつけなかったのでしょう?」
「まあ、意外と賢いじゃない!」
ダリアンはコロコロと笑った。
「今日もね。最後だから、一緒にお義姉さまの所へ行きましょうってバードックを誘ったのだけど、あの人、気が弱いでしょう? お義姉さまが怖いから嫌だって」
「……バードック様はこれからどうなるの?」
「王女様の悲劇を乗り越えたら、私と結婚する予定よ」
「その間にお腹が大きくなるんじゃないの?」
「まあ、お義姉さま、感激だわ。心配してくださっているの? それとも好奇心かしら? もう死んでしまうのに!」
ダリアンの嘲るように細めた目と、顔を裂くほどに吊り上がった唇でできた不気味な笑みに私の心臓は早鐘のように鳴り出した。
「最後だから教えてあげる。お母様は私を妊娠した時、お腹があまり大きくならなかったからキューバス男爵を騙せたそうよ。どちらにしろ、お義姉さまは心配しなくても大丈夫。うまくやるわ」
そう言うと、ダリアンは扇子を仰ぎ始めた。
「ああ、もう限界だわ。臭すぎる」
「ま、待って! 最後に一つだけ教えて」
私は思わず立ち上がり、鉄格子の近くへ寄った。
ダリアンは眉根を寄せ、不快な顔をして後ずさりした。
「どうして私をこんな目に遭わせるの? あなたはどうして私を嫌っているの? 私が何かした?」
囚われてから私は何度も考えた。
いつも家族の言いなりとなり、酷い目に遭わされても、バカにされても、反論も抵抗もせずに大人しく過ごしてきた。
バードックとの婚約だって、私が望んだわけではない。
どうしてこんな目に遭わされるのか、どう考えても解らなかった。
ダリアンは嘲笑った。
「嫌いなものは、嫌いなだけよ。存在自体が不快なの。ただ、それだけ」
ダリアンは凍てつくほどの冷笑を私に浴びせて去った。
私は牢の中でしばらく立ちすくんでいた。
つま先から頭までがらんどうになってしまったようだった。
窓もなく、ネズミやゴキブリが走り回り、すえた臭いがした。
地下牢で3日間過ごした後に、裁判となった。
通常より早い裁判だった。
王女は亡くなり、バードックはようやく目覚めたがまだ起き上がれないと聞かされ、私は王族殺害と殺害未遂の重罪を犯したと言われた。
私についた弁護士は平民出身で、貴族たちに怯えて言いなりだった。
私は事実を訴えたが捏造や歪曲された証言が多数あり、私は断首となることが決まった。
囚われた牢の中で、うずくまっていると、ダリアンの声が聞こえた。
「お義姉さま、お元気? 皇后さまのお茶会の帰りに寄ってあげたのよ」
私は顔を上げた。これみよがしに着飾ったダリアンが楽しそうに私を見ていた。
私を見張っていた兵士を買収したようで、ダリアンしかいなかった。
親も一度も訪問しない場所にダリアンが来るとは思ってもみなかった。
「3日後には刑が執行されるというから、最後のご挨拶に来たの。いろいろ知りたいこともあるでしょうし」
「知りたいこと?」
「ええ、最後ですもの。できる範囲内でお答えするわ」
「家門は……レノドン伯爵家はどうなったの?」
「あなたが所有していた鉱山を王室に献上して、お咎めなしになったわ」
私は衝撃を受けた。実母から受け継いだ鉱山を騙し取られ、そのおかげでレノドン伯爵もスカビエス夫人もそして、ここにいるダリアンも、誰も傷ついていないことに。
「たかが鉱山に、そんな価値があるなんて……」
「あら? 何も知らなかったのね。確かに最初の頃は銅が少々出ていただけだったけど、奥に魔晶石があったのよ。とても良質で純度の高い物がたくさん。フフフ。あなたには内緒だったけど」
魔晶石は、魔力を保存することが出来る石で、その石があるからこそ、電力が使える。
石によって耐久年数が違い、質の良い魔晶石を求めて、王室だけでなく貴族もが探していた。
それが、私の手元にあったなんて。私は絶句した。
「そのお蔭で私たちは安泰。あなたは、王族殺しだけど」
ダリアンの容赦ない言葉で、私はヴァイバーナンの苦しむ顔と口から流れた赤い血を思い出した。
「……あなたがグラスに毒を盛ったの?」
「フフフ。そうであってほしいのね? 可哀想に」
「バードック様は知っていたのでしょう?」
「あら? 知っていたと確信している口ぶりね」
「だって、どちらのグラスが自分のところにくるのか分からないのだから、死ななかったってことは少ししか口をつけなかったのでしょう?」
「まあ、意外と賢いじゃない!」
ダリアンはコロコロと笑った。
「今日もね。最後だから、一緒にお義姉さまの所へ行きましょうってバードックを誘ったのだけど、あの人、気が弱いでしょう? お義姉さまが怖いから嫌だって」
「……バードック様はこれからどうなるの?」
「王女様の悲劇を乗り越えたら、私と結婚する予定よ」
「その間にお腹が大きくなるんじゃないの?」
「まあ、お義姉さま、感激だわ。心配してくださっているの? それとも好奇心かしら? もう死んでしまうのに!」
ダリアンの嘲るように細めた目と、顔を裂くほどに吊り上がった唇でできた不気味な笑みに私の心臓は早鐘のように鳴り出した。
「最後だから教えてあげる。お母様は私を妊娠した時、お腹があまり大きくならなかったからキューバス男爵を騙せたそうよ。どちらにしろ、お義姉さまは心配しなくても大丈夫。うまくやるわ」
そう言うと、ダリアンは扇子を仰ぎ始めた。
「ああ、もう限界だわ。臭すぎる」
「ま、待って! 最後に一つだけ教えて」
私は思わず立ち上がり、鉄格子の近くへ寄った。
ダリアンは眉根を寄せ、不快な顔をして後ずさりした。
「どうして私をこんな目に遭わせるの? あなたはどうして私を嫌っているの? 私が何かした?」
囚われてから私は何度も考えた。
いつも家族の言いなりとなり、酷い目に遭わされても、バカにされても、反論も抵抗もせずに大人しく過ごしてきた。
バードックとの婚約だって、私が望んだわけではない。
どうしてこんな目に遭わされるのか、どう考えても解らなかった。
ダリアンは嘲笑った。
「嫌いなものは、嫌いなだけよ。存在自体が不快なの。ただ、それだけ」
ダリアンは凍てつくほどの冷笑を私に浴びせて去った。
私は牢の中でしばらく立ちすくんでいた。
つま先から頭までがらんどうになってしまったようだった。
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