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第1章 3度目の人生
[08] 1度目の人生:最後の時②
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処刑当日の夜明け。
半醒半睡のうちに、喉の渇きが私の眠りを揺らした。
どうせ死ぬのだからと昨日から水も食料も与えられていない。
朦朧とした意識の中で、チャリンと金属音が響いた。
目を開けると、獣がいた。金色の瞳が私をとらえ、銀色の毛を逆立てている。
北限の狼? どうしてこんなところに?
私がじっと見つめると北限の狼も見つめ返す。よく見る口元は血だらけだった。そして、その口元には鍵を咥えている。
辺りを見回すと2人の兵士は鉄格子の前で倒れていた。
「……助けに来てくれたの?」
夢だろうか? ここから出たいという小さな願望が夢となったのかもしれない。
北限の狼が咥えていた鍵を私に放った。
大きな金属音に私は慌てて鍵を拾った。夢ではない。手に金属の感触がある。
最後のチャンスだ。
大急ぎで鉄格子の扉を開け、北限の狼の後ろについて走った。
階段を上っている間、恐怖より喜びが先だった。
自由だ! 自由になれる。今度こそ、誰の言いなりにもならない。私は、私を生きる。
まずは、母の両親がいるビッザント帝国へ逃げよう。嘆願書を送ってくれた唯一の人たちだ。
私は思いがけないチャンスに無我夢中だった。
枯れ果てた力がどこからか湧き出てくる気がした。
北限の狼は走りながら私がついてきているか、時折振り返った。
最後の扉を開けると、風を感じた。
久しぶりの外だった。
空には靄がかかり、月あかりはなかった。
北限の狼は、すでに倒れている兵士たちを飛び越えて建物の壁に沿って走った。
私は遅れないように一生懸命走った。
だが、痩せ細った身体はいとも簡単につまずき、固い地面に這いつくばった。
それでも、力を振り絞って素早く立ち上がり、北限の狼を追った。
「うッ!」
私は背中に痛みを感じ、地面につんのめった。
見守り塔から放った矢が私の肩甲骨を突き刺していた。
一気に呼吸が浅くなり、空気が漏れるような感覚に襲われる。
それでも地面に這いつくばったまま、私は北限の狼を追おうとした。
すると、北限の狼は私が矢に当たったことに気づいて引き返してきた。
「ダメ! 逃げて!」
私は枯れた声で叫んだ。
次の瞬間、私のやせ細ったふくらはぎに矢が刺さった。
ああ、もう痛くて動けない。
息が吸えない。もう声も出なかった。
見守り塔から北限の狼を狙って、何本もの矢が飛んでくるのが見えた。
北限の狼は、うまくかわしてはいたものの、2本の矢を体に受けても私に近づいてきた。
逃げてって言ったのに。私は言おうとしたが声にならなかった。
身体にある多くの血がどくどくと外に流れ出るのを感じた。
ようやく死ねる。
そう思った時に北限の狼は私の顔に近づき小声で言った。
「安らかに眠れ。また会おう」
無理よ、と思わず笑おうとした。けれど、唇はもう動かなかった。
私は、音も色もない漆黒の深みに沈んでいった。
半醒半睡のうちに、喉の渇きが私の眠りを揺らした。
どうせ死ぬのだからと昨日から水も食料も与えられていない。
朦朧とした意識の中で、チャリンと金属音が響いた。
目を開けると、獣がいた。金色の瞳が私をとらえ、銀色の毛を逆立てている。
北限の狼? どうしてこんなところに?
私がじっと見つめると北限の狼も見つめ返す。よく見る口元は血だらけだった。そして、その口元には鍵を咥えている。
辺りを見回すと2人の兵士は鉄格子の前で倒れていた。
「……助けに来てくれたの?」
夢だろうか? ここから出たいという小さな願望が夢となったのかもしれない。
北限の狼が咥えていた鍵を私に放った。
大きな金属音に私は慌てて鍵を拾った。夢ではない。手に金属の感触がある。
最後のチャンスだ。
大急ぎで鉄格子の扉を開け、北限の狼の後ろについて走った。
階段を上っている間、恐怖より喜びが先だった。
自由だ! 自由になれる。今度こそ、誰の言いなりにもならない。私は、私を生きる。
まずは、母の両親がいるビッザント帝国へ逃げよう。嘆願書を送ってくれた唯一の人たちだ。
私は思いがけないチャンスに無我夢中だった。
枯れ果てた力がどこからか湧き出てくる気がした。
北限の狼は走りながら私がついてきているか、時折振り返った。
最後の扉を開けると、風を感じた。
久しぶりの外だった。
空には靄がかかり、月あかりはなかった。
北限の狼は、すでに倒れている兵士たちを飛び越えて建物の壁に沿って走った。
私は遅れないように一生懸命走った。
だが、痩せ細った身体はいとも簡単につまずき、固い地面に這いつくばった。
それでも、力を振り絞って素早く立ち上がり、北限の狼を追った。
「うッ!」
私は背中に痛みを感じ、地面につんのめった。
見守り塔から放った矢が私の肩甲骨を突き刺していた。
一気に呼吸が浅くなり、空気が漏れるような感覚に襲われる。
それでも地面に這いつくばったまま、私は北限の狼を追おうとした。
すると、北限の狼は私が矢に当たったことに気づいて引き返してきた。
「ダメ! 逃げて!」
私は枯れた声で叫んだ。
次の瞬間、私のやせ細ったふくらはぎに矢が刺さった。
ああ、もう痛くて動けない。
息が吸えない。もう声も出なかった。
見守り塔から北限の狼を狙って、何本もの矢が飛んでくるのが見えた。
北限の狼は、うまくかわしてはいたものの、2本の矢を体に受けても私に近づいてきた。
逃げてって言ったのに。私は言おうとしたが声にならなかった。
身体にある多くの血がどくどくと外に流れ出るのを感じた。
ようやく死ねる。
そう思った時に北限の狼は私の顔に近づき小声で言った。
「安らかに眠れ。また会おう」
無理よ、と思わず笑おうとした。けれど、唇はもう動かなかった。
私は、音も色もない漆黒の深みに沈んでいった。
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