復讐は、冷やして食すのが一番美味い

Yuito_Maru

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第1章 3度目の人生

[09] 2度目の人生:回帰

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 1度目の人生を17歳で終え、2度目の人生に回帰したのは、13歳の時だった。
 目を開けると銀色の髪にアースアイの母・ニュイ・レノドンの心配そうな顔が飛び込んできた。
「お母様……」
「ピオ! 良かった! 3日間も熱でうなされていたのよ!」
 母の頬に涙が落ちる。
 私は死んだはずなのに、3日間も病気で寝ていたというの?
 私は辺りを見回した。
 母の後ろに母の侍女のメリッサがいた。
 メリッサは私のかつての乳母で、7歳過ぎてからは母の侍女になっていた。
 そして、母が亡くなった後、自害した。そのメリッサもここに居るとは。
「お母様、今日は、何年の何月何日ですか」
 私の質問に母とメリッサは驚いた顔をした。
「奥様、お嬢様は高熱で意識も朦朧としてましたもの」
「確かにそうだわ。ピオ、今はね、×××年の××月××日よ。あなたの13歳の誕生日は半月前だったわ」
「13歳……」
 私は困惑した。先ほどまで17歳だった私が、13歳だなんて。
 ああ、私はまた生かされたのだ。
 前の人生には、憎しみと恨みしかない。
 だが、今度の人生では、幸いにも、母もメリッサもまだ生きている。
 1度目の人生の結末と同じ通りにならないように細心の注意を払えば、母と幸せになれるに違いない。
 そう思うと、安堵と共に私の目からも涙がこぼれ落ちた。
 母は私を抱きかかえた。
「ピオ、もう大丈夫よ。安心して。泣かなくても大丈夫」
「ええ。ありがとう。お母様」
 私がそう言うと、母は私から離れ、私を見つめて微笑んだ。
「……お父様は?」
 私が尋ねると母の顔は曇った。
「お仕事がお忙しくて。そんなことより、厨房に行ってくるわ。胃腸に良い物を用意させなければ」
 母はいつもの取り繕った笑顔を見せた。
 安心した母がメリッサとピオニーの部屋から出て行った後、私は、家令を呼んだ。
 家令が顔を出すまでの間、1度目の人生の13歳の時に私は高熱を出したことがあったか、記憶をたどった。
 だが、曖昧ではっきりしなかった。
 白髪の家令は、1度目の人生と変わらず居心地が悪そうに私の前に立った。
「お目覚めになられて安堵いたしました。お嬢様」
「……お父様はどこにいらっしゃるの?」
「領地を見回りに行かれています」
「そう。いつから行ってらっしゃるのかしら」
「そ、それは……2週間ほど前からです」
 3、4日もあれば見回れる小さな領地に2週間もかけているとは、相変わらずだ。
「私が病で倒れたことをお伝えしたのかしら?」
「もちろんでございます」
「……わかったわ。私が尋ねたことは、お父様に言わないように。あなたも父の機嫌を損ねては仕事がやりづらいでしょう?」
「……かしこまりました。お気遣い、ありがとうございます」
 レノドン伯爵は、領地を見回るという口実で女遊びをしているのだ。
 1度目の人生の時もそうだったから。
 2度目の人生でも変わらないとは、笑える。
 母にも冷たく、一人娘の私にも冷たい父親。
 彼はなぜ、私たちに冷たく、無情なのか。
 その謎も解かなければならない。

 後日、私は、医者が驚くほどあっという間に回復し、元の生活に戻った。
 早々に街に出て、魔道具屋を探した。
 そこで、私の指紋がないと開かないノートを日記帳として買った。
 日記帳には1度目の人生と並行に2度目の出来事を書いていった。
 比較しながら、今後の対策をとっていくことが大事だと思っていたからだ。
 日記を書き始めて、私はバードックと婚約しているかどうか確認すべきことを思い出した。
 1度目の人生では、私の5歳の誕生日にバードックから指輪をもらっていた。
「確か、ここにしまっていたはず」
 私は机の引き出しの奥にある隠し板を外して中を覗いた。
 無い! 指輪が無い。婚約はしていないのかしら? それとも誰かが盗んだ?
 私は心配になって、散々、迷った挙句、母に尋ねることにした。
 母の部屋へ行き、ノックをするとメリッサが顔を出した。
「お母様とお話をしたいのだけど、ご都合はいかがかしら?」
 メリッサは扉の前に一歩出て、後ろ手で扉を閉めた。
「奥様はお休み中でございます。お目覚めになりましたら、お嬢様がお会いしたいとお伝えいたしましょう」
「ありがとう。お母様は具合でも悪いの? お昼はお食べになった?」
「ええ、もちろん。残さずお食べになりましたよ。ただ、眠気を催されまして、お休みになっているだけでございます」
「そう……あのね、メリッサ。私、熱のせいか記憶が飛んでいて、聞きたいことがあるのだけど」
「まあ! あの高熱ではそういうこともまれにございます。気にすることはございませんよ、お嬢様。何でもお聞きください」
「ちょっと聞きづらいのだけど……私は婚約者のような方がいらっしゃったかしら?」
 私は小声でメリッサに尋ねた。
 するとメリッサの顔が一瞬強張ったように見えた。
「バードック様のことでしょうか」
 ああ、やはり、私は1度目と同様にバードックと婚約していたのだ。
 私は落胆した。婚約してしまっていたら、破棄するために相当な計画を練らなければならない。
「あの方とは婚約などしておりませんが」
「え?」
「お嬢様もご納得だったと私は思っておりました」
 メリッサは困った顔をしたので、私は慌てた。
「も、もちろんよ。私は彼と結婚なんてしたくないわ」
 メリッサは、ホッとしたように顔をほころばせた。
「お嬢様の仰る通りです。お嬢様の5歳の誕生日に指輪を出して来た時には、奥様も手順を踏まない無礼者と大いにご立腹でした。ですが、お嬢様が”私はあなたと永遠に仲の良い友達でいたいの”と仰ったので、本当に安心されて……」
 ”永遠に仲の良い友達”とは、言い得て妙だ。
 恋愛感情など芽生える前の5、6歳なら、言われてみれば確かにそうだと思ったのかもしれない。
 私は心の中で自分を褒めた。よくやった、私。
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