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第二章
うわの空の旅
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試合後の数日間は怒濤の日々だった。いや正確に言うと試合直後、監督室で仮契約をした直後から数日間、だ。
秘密裏に王城へ移動し面談ののち正式契約を結ぶ。そう言ってしまえば簡単だが実情はもっと激しいものだった。
まず移動手段がグリフォン。そう、頭が鷲で身体が獅子のモンスター。その爪は軽く人間や馬を切り裂き嘴でバリバリ喰うという……そんな魔獣だ。知っていればもちろん拒否しただろう。
「地球にもベルカンプという飛行機NGの選手がいて……」
とか何とか言って。
だがそんな機会は一切訪れず、俺はリーブズスタジアムの地下通路を通り、付近のグリポート――グリフォンの発着場――にてアイドリング状態という名の「俺はやるぜ状態」だったグリフォンにダリオさんと二人乗りで乗せられ、監督室を出て5分後には空の上だった。
「うわ……怖い……美しい……怖い」
初めて見るスタジアムの外の世界、エルフの王国首都の景観に俺は思わず溜息を漏らした。
都は遙か北に雪を頂いた山脈を望み、その雪解け水が流れ込んでてきたと思わしき湖の西に凛と広がっていた。透明度も色も様々なクリスタルの尖塔と城壁、白い石を敷き詰めた街道と方円状に広がる街なみ、湖から流れ出る川で作られた様々な運河。なんとそのうち一本は直接スタジアムへ繋がり、選手達はそこを船でスタジアム入りをするという。
「いかがですか?」
「美しいと思います。でも、なんかイメージと違いますね。もっと森とか……」
「ああ、それはですね……」
と機上ならぬグリフォン上で明かされた驚愕の新事実! 実はエルフ族は単一種族ではないらしい。
俺が想像していたエルフ――森に住み動物や自然と暮らし、野山を駆け抜け弓を放つ――それらは「デイエルフ」と名乗る種類で、総エルフ口で言えば多数派ではあるものの、都にはあまり住んでいないという。
そんな「デイエルフ」の彼女らがエルフの「肉体」であれば、もう片方の「ドーンエルフ」は「精神」。魔術を自在に操る彼女らはその長大な生涯を駆けて「学問」として魔術を研究し様々な不可能を可能にする。実際にこの都を作り王国を治めるのもそれを使っての事だそうだ。
まあ「治める」と言ってのその二種類の間に上下や優劣はなく、魔術を好むドーンエルフの方が都市や設備に重きをおく性質から「国」を運営し、植物を愛するデイエルフが各地の自然の中に住み、緩やかな仲間意識で王国に従う……という形らしかった。
「ではダリオさんはドーンエルフ?」
「ええ。あまりそう見えないかもしれませんが」
グリフォンの手綱を握った女性はそう言って苦笑したがそれには訳があった。と言うのもドーンエルフは魔法という不可思議なモノを扱うからか良く言えば頭が柔らかく独創的、悪く言えば精神が幼く不真面目。シャマーさんやカイヤさんがまさにそれらしい。言われてみればあの二人、しょっちゅうふにゅふにゃ笑っていたな。思い出すと微笑みと同時に失恋の痛みが甦ってきた。
一方、肉体派のデイエルフは質実剛健行動迅速。強気で真面目だが融通が効かない。コーチのナリンさん及び代表チームのスタメンの大半がそれだが、特にリーシャさんなんかが典型的らしい。言われてみれば納得。もっとファンタジーらしい出会いをしていれば俺の眉間に弓矢を打ち込んでから「ここを去れ人間!」とか言ってきそう。(死んどるがな)
と、言う事を踏まえて。ダリオさんは「ドーンエルフの姫」という「ドーンの中のドーン」でありながら、その出自や責任からか性格的には真面目で堅物、極めてデイエルフ的……らしい。そうは言っても不要なキスしてきたあたりドーンエルフの片鱗を感じたけどな。ありがたかったけどな。
そしてここからエルフ代表の問題点も見える。あのミノタウロス戦のスタメンはなんと11人中10人がデイエルフであり、唯一のドーンエルフであるダリオさんがデイエルフ的……となればあの固いプレイスタイルや展開になるのもむべなるかな。それでも、中盤にカイヤさんがいれば少しは変化を与えられたが……チクリ。
また胸が痛くなってきた。
「どうしました?」
「いや、気圧の変化で肺が」
「なんと! 慣れない方に負担をかけてしまいました。ではゆっくり下降します」
グリフォンが降下体制に入った。俺は胸の痛みを高度変化による気圧のせいにして紛らわす事にした。
城側のグリポートには侍従らしきエルフさんが何人もおり、俺と姫様をそれぞれの部屋へ案内した。俺の部屋は客間らしいが、これがまた笑っちゃうくらいに「貴族の部屋」っぽい作りになっていた。
謎の鏡台付き椅子に天蓋付きベッド。原料は分からないがインクとペン的なものがセットされた書き物机とふかふかの椅子。その隣のテーブルにはご丁寧にお茶とお菓子が用意されていた。
本来であればそこで「王族との面会にふさわしい衣装」などに着替えるとことだが、幸いにも俺は高そうなスーツを着ており、文化的背景は違えども「どうやら正装らしい」とは伝わっていたので上にマントを羽織るだけで済んだ。
だけで済んだ、とは言ってもスーツにマントだからなんかアニメに出てくる現代のバチカンのエクソシストみたいでこそばゆかったが。
そうそう、バチカンもサッカーの代表チームあるんだよ? 知ってた?
「ショウキチ様、よろしいでしょうか?」
出されたハーブティー的な何かを飲んでしばらくまったりしていると使いが来た。
「はい!」
面接に呼ばれる就活生のような大声で返事をし、俺は部屋を出た。いよいよエルフの王族と面会だ。
秘密裏に王城へ移動し面談ののち正式契約を結ぶ。そう言ってしまえば簡単だが実情はもっと激しいものだった。
まず移動手段がグリフォン。そう、頭が鷲で身体が獅子のモンスター。その爪は軽く人間や馬を切り裂き嘴でバリバリ喰うという……そんな魔獣だ。知っていればもちろん拒否しただろう。
「地球にもベルカンプという飛行機NGの選手がいて……」
とか何とか言って。
だがそんな機会は一切訪れず、俺はリーブズスタジアムの地下通路を通り、付近のグリポート――グリフォンの発着場――にてアイドリング状態という名の「俺はやるぜ状態」だったグリフォンにダリオさんと二人乗りで乗せられ、監督室を出て5分後には空の上だった。
「うわ……怖い……美しい……怖い」
初めて見るスタジアムの外の世界、エルフの王国首都の景観に俺は思わず溜息を漏らした。
都は遙か北に雪を頂いた山脈を望み、その雪解け水が流れ込んでてきたと思わしき湖の西に凛と広がっていた。透明度も色も様々なクリスタルの尖塔と城壁、白い石を敷き詰めた街道と方円状に広がる街なみ、湖から流れ出る川で作られた様々な運河。なんとそのうち一本は直接スタジアムへ繋がり、選手達はそこを船でスタジアム入りをするという。
「いかがですか?」
「美しいと思います。でも、なんかイメージと違いますね。もっと森とか……」
「ああ、それはですね……」
と機上ならぬグリフォン上で明かされた驚愕の新事実! 実はエルフ族は単一種族ではないらしい。
俺が想像していたエルフ――森に住み動物や自然と暮らし、野山を駆け抜け弓を放つ――それらは「デイエルフ」と名乗る種類で、総エルフ口で言えば多数派ではあるものの、都にはあまり住んでいないという。
そんな「デイエルフ」の彼女らがエルフの「肉体」であれば、もう片方の「ドーンエルフ」は「精神」。魔術を自在に操る彼女らはその長大な生涯を駆けて「学問」として魔術を研究し様々な不可能を可能にする。実際にこの都を作り王国を治めるのもそれを使っての事だそうだ。
まあ「治める」と言ってのその二種類の間に上下や優劣はなく、魔術を好むドーンエルフの方が都市や設備に重きをおく性質から「国」を運営し、植物を愛するデイエルフが各地の自然の中に住み、緩やかな仲間意識で王国に従う……という形らしかった。
「ではダリオさんはドーンエルフ?」
「ええ。あまりそう見えないかもしれませんが」
グリフォンの手綱を握った女性はそう言って苦笑したがそれには訳があった。と言うのもドーンエルフは魔法という不可思議なモノを扱うからか良く言えば頭が柔らかく独創的、悪く言えば精神が幼く不真面目。シャマーさんやカイヤさんがまさにそれらしい。言われてみればあの二人、しょっちゅうふにゅふにゃ笑っていたな。思い出すと微笑みと同時に失恋の痛みが甦ってきた。
一方、肉体派のデイエルフは質実剛健行動迅速。強気で真面目だが融通が効かない。コーチのナリンさん及び代表チームのスタメンの大半がそれだが、特にリーシャさんなんかが典型的らしい。言われてみれば納得。もっとファンタジーらしい出会いをしていれば俺の眉間に弓矢を打ち込んでから「ここを去れ人間!」とか言ってきそう。(死んどるがな)
と、言う事を踏まえて。ダリオさんは「ドーンエルフの姫」という「ドーンの中のドーン」でありながら、その出自や責任からか性格的には真面目で堅物、極めてデイエルフ的……らしい。そうは言っても不要なキスしてきたあたりドーンエルフの片鱗を感じたけどな。ありがたかったけどな。
そしてここからエルフ代表の問題点も見える。あのミノタウロス戦のスタメンはなんと11人中10人がデイエルフであり、唯一のドーンエルフであるダリオさんがデイエルフ的……となればあの固いプレイスタイルや展開になるのもむべなるかな。それでも、中盤にカイヤさんがいれば少しは変化を与えられたが……チクリ。
また胸が痛くなってきた。
「どうしました?」
「いや、気圧の変化で肺が」
「なんと! 慣れない方に負担をかけてしまいました。ではゆっくり下降します」
グリフォンが降下体制に入った。俺は胸の痛みを高度変化による気圧のせいにして紛らわす事にした。
城側のグリポートには侍従らしきエルフさんが何人もおり、俺と姫様をそれぞれの部屋へ案内した。俺の部屋は客間らしいが、これがまた笑っちゃうくらいに「貴族の部屋」っぽい作りになっていた。
謎の鏡台付き椅子に天蓋付きベッド。原料は分からないがインクとペン的なものがセットされた書き物机とふかふかの椅子。その隣のテーブルにはご丁寧にお茶とお菓子が用意されていた。
本来であればそこで「王族との面会にふさわしい衣装」などに着替えるとことだが、幸いにも俺は高そうなスーツを着ており、文化的背景は違えども「どうやら正装らしい」とは伝わっていたので上にマントを羽織るだけで済んだ。
だけで済んだ、とは言ってもスーツにマントだからなんかアニメに出てくる現代のバチカンのエクソシストみたいでこそばゆかったが。
そうそう、バチカンもサッカーの代表チームあるんだよ? 知ってた?
「ショウキチ様、よろしいでしょうか?」
出されたハーブティー的な何かを飲んでしばらくまったりしていると使いが来た。
「はい!」
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