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第二章
ストライダー到来
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窓の外。城壁の上に不釣り合いなほど大きな鳥がいる。いや、それは鳥ではなかった。トカゲのような細い顔に青い鱗、大きく広がる翼に尖った尻尾。前足の無いドラゴンのような存在が、凄いスピードで窓へ近づいてきた!
「ダリオさん、危ない!」
考えるより先に身体が動いた。というのは正確ではないかも知れない。
「城の守備はどうなっているんだ?」
と
「少しでも身を低く」
という考えが脳裏の殆どを占めつつ、身体は机を飛び越えダリオさんを床に押し倒していた。
「きゃっ!」
ダリオさんの小さな悲鳴に、風圧で開く窓と吹き飛ぶ書類の数々の音が重なった。彼女の上に覆い被さり、ドラゴンっぽい存在が吐くかもしれないブレスに備える。
ぬう、という気配を背中から感じた。ソイツは頭部と首を窓から室内へ差し込んだらしい。もしかしてブレスではなく噛みつきか?
「お取り込み中に申し訳ないが、先に俺の用事を済ませても良いか?」
ブレスでも噛みつきでもなく声だった。かなり理性を感じさせる感じの。
「あら、マローンさん!? お待ち下さい。あの、ショウキチさん……」
ダリオさんはそう挨拶しながらも、ややピンクに染まった顔で俺をそっと押しのけて立ち上がった。
「紹介します。こちら、DSDKのマローン・メイルマンさん。こちらはサッカードウエルフ代表監督のショウキチさんです」
「えっ? あ、ども……」
同じく立ち上がる俺の横でダリオさんがいそいそと服装を直す。押し倒された時の衝撃でシャツのボタンが飛んだらしく、胸はさらにはだけている……と観ている間にタンカースジャケットの前が閉められてしまった。
「知っておる。今日は彼に用事できたのでな」
「と言うことは何かのお知らせでしょうか? あ、ショウキチさんはワナバーンを見るのは初めてですか? とっても速くて強い方なので、マローンさんはDSDKからの重要なお知らせを届けたり、配達のお仕事をされたりされているのです」
バツが悪いのかダリオさんは早口でそう説明する。なるほど、それでこんな剣呑な存在が凄いスピードで飛んできても城の護衛たちは警戒したり迎撃したりしなかったのか。
「ワナバーンではなくワイバーンだ。飛竜とも呼ばれるな。まあ良い、彼にこれを持ってきた。受け取るが良い」
マローンさんは首に下げていた鞄から封書のようなモノと小包を舌で取り出し、様々なものが吹き飛んで広くなっていたテーブルの上に置いた。
「これは?」
「ストックトン様からだ。確かに届けたぞ」
そう言うとマローンさんは素早く身を翻し飛び立つ。さすが飛竜、見る間に小さくなって青空の点になってしまった。
「ストックトン様てのは……?」
俺は封書と小包にそっと手を触れつつ尋ねる。マローンさんの涎で湿っているかと思ったがそうでもなかった。
「DSDKの役員でありスペシャルレフリーでもあります。あ、ミノタウロス戦の笛を吹いて下さったかたと言った方が分かり易かったですね」
ダリオさんは床に散らばった書類を拾いながら答える。そうか、あの審判さんか。
「あーそれで分かりました。でも用件の方は分からないなあ」
「開けてご覧になりますか? 席を外しますが」
「いえ、悪いので結構です。というか教えて頂きたいモノが出るかもしれないので、ここにいて貰えますか?」
俺がそう言って頭を下げると、彼女は微笑みながら頷き、手に持ったものを置いて側まできた。
「じゃあまずは封書から。手紙か。俺に読める文字だ。なになに……『監督就任おめでとうございます。これは先日買い取ったユニフォームの代金がわりのモノです。お納め下さい。追伸:敗北の責任をとってクビになった際には必要かもしれないので、無駄遣いなさらぬよう』だそうで」
アレはこっそりスタッフに紛れ込んだ事のペナルティで没収されたモノと思っていたが……違ったのか?
「分かるような分からないような」
「そうですね。あ、言っておきますがクビにするつもりなんて全くありませんので!」
肩を寄せて手紙の文面を覗き込んでいたダリオさんは、言葉の最後で目を合わせて優しく笑いかけてきた。嬉しい……けどそれはそれでどうかと思いますよ協会会長さん!
「あの、その、そこは実際に始まってから冷静に考えて頂くとして……こっちの小包がそれかな」
話を逸らしたくて俺は小包を開封した。中に入っていたのは、くすんだ小判のような石のような何かだった。
「これは昔の貨幣とか何かですかね……? あれ、ダリオさん!?」
いつの間にかダリオさんは俺の肩にしがみつき、足下から崩れ落ちそうな自分に必死で抗っていた。
「大丈夫ですかダリオさん!?」
「はい……ちょっと魔力に中てられて……」
魔力!? この小汚い小判が?
「こっこれのせいですか? これは何物なんですか?」
「それは……至高の竜鱗です……」
俺は彼女に肩を貸して椅子に座らせながら問う。
「竜鱗……ドラゴンの鱗って意味ですか? 価値がありそうな?」
「はい、価値はあります。すみません、ここを楽にさせて下さい」
息の辛そうな彼女の為にジャケットの前を開ける。再び色っぽい胸元が現れた。なんかすげー背徳感や罪悪感がある。
「じゃあ換金したらしばらくは暮らせますかね?」
俺は目の前に現れた絶景から必死で目を反らし、紙を束ねて団扇のように扇いだ。ドラゴンのストックトンさんは
「監督をクビになった時の当座の生活資金にしろ」
て意味でくれたのかもしれない。
「ありがとうございます。あの、それを換金したらしばらく暮らせるどころか……」
ダリオさんは苦しい息から絞り出すように言った。
「城が建ちます」
「はい?」
クラブハウスの建設費用問題は軽く解決した模様だった。
「ダリオさん、危ない!」
考えるより先に身体が動いた。というのは正確ではないかも知れない。
「城の守備はどうなっているんだ?」
と
「少しでも身を低く」
という考えが脳裏の殆どを占めつつ、身体は机を飛び越えダリオさんを床に押し倒していた。
「きゃっ!」
ダリオさんの小さな悲鳴に、風圧で開く窓と吹き飛ぶ書類の数々の音が重なった。彼女の上に覆い被さり、ドラゴンっぽい存在が吐くかもしれないブレスに備える。
ぬう、という気配を背中から感じた。ソイツは頭部と首を窓から室内へ差し込んだらしい。もしかしてブレスではなく噛みつきか?
「お取り込み中に申し訳ないが、先に俺の用事を済ませても良いか?」
ブレスでも噛みつきでもなく声だった。かなり理性を感じさせる感じの。
「あら、マローンさん!? お待ち下さい。あの、ショウキチさん……」
ダリオさんはそう挨拶しながらも、ややピンクに染まった顔で俺をそっと押しのけて立ち上がった。
「紹介します。こちら、DSDKのマローン・メイルマンさん。こちらはサッカードウエルフ代表監督のショウキチさんです」
「えっ? あ、ども……」
同じく立ち上がる俺の横でダリオさんがいそいそと服装を直す。押し倒された時の衝撃でシャツのボタンが飛んだらしく、胸はさらにはだけている……と観ている間にタンカースジャケットの前が閉められてしまった。
「知っておる。今日は彼に用事できたのでな」
「と言うことは何かのお知らせでしょうか? あ、ショウキチさんはワナバーンを見るのは初めてですか? とっても速くて強い方なので、マローンさんはDSDKからの重要なお知らせを届けたり、配達のお仕事をされたりされているのです」
バツが悪いのかダリオさんは早口でそう説明する。なるほど、それでこんな剣呑な存在が凄いスピードで飛んできても城の護衛たちは警戒したり迎撃したりしなかったのか。
「ワナバーンではなくワイバーンだ。飛竜とも呼ばれるな。まあ良い、彼にこれを持ってきた。受け取るが良い」
マローンさんは首に下げていた鞄から封書のようなモノと小包を舌で取り出し、様々なものが吹き飛んで広くなっていたテーブルの上に置いた。
「これは?」
「ストックトン様からだ。確かに届けたぞ」
そう言うとマローンさんは素早く身を翻し飛び立つ。さすが飛竜、見る間に小さくなって青空の点になってしまった。
「ストックトン様てのは……?」
俺は封書と小包にそっと手を触れつつ尋ねる。マローンさんの涎で湿っているかと思ったがそうでもなかった。
「DSDKの役員でありスペシャルレフリーでもあります。あ、ミノタウロス戦の笛を吹いて下さったかたと言った方が分かり易かったですね」
ダリオさんは床に散らばった書類を拾いながら答える。そうか、あの審判さんか。
「あーそれで分かりました。でも用件の方は分からないなあ」
「開けてご覧になりますか? 席を外しますが」
「いえ、悪いので結構です。というか教えて頂きたいモノが出るかもしれないので、ここにいて貰えますか?」
俺がそう言って頭を下げると、彼女は微笑みながら頷き、手に持ったものを置いて側まできた。
「じゃあまずは封書から。手紙か。俺に読める文字だ。なになに……『監督就任おめでとうございます。これは先日買い取ったユニフォームの代金がわりのモノです。お納め下さい。追伸:敗北の責任をとってクビになった際には必要かもしれないので、無駄遣いなさらぬよう』だそうで」
アレはこっそりスタッフに紛れ込んだ事のペナルティで没収されたモノと思っていたが……違ったのか?
「分かるような分からないような」
「そうですね。あ、言っておきますがクビにするつもりなんて全くありませんので!」
肩を寄せて手紙の文面を覗き込んでいたダリオさんは、言葉の最後で目を合わせて優しく笑いかけてきた。嬉しい……けどそれはそれでどうかと思いますよ協会会長さん!
「あの、その、そこは実際に始まってから冷静に考えて頂くとして……こっちの小包がそれかな」
話を逸らしたくて俺は小包を開封した。中に入っていたのは、くすんだ小判のような石のような何かだった。
「これは昔の貨幣とか何かですかね……? あれ、ダリオさん!?」
いつの間にかダリオさんは俺の肩にしがみつき、足下から崩れ落ちそうな自分に必死で抗っていた。
「大丈夫ですかダリオさん!?」
「はい……ちょっと魔力に中てられて……」
魔力!? この小汚い小判が?
「こっこれのせいですか? これは何物なんですか?」
「それは……至高の竜鱗です……」
俺は彼女に肩を貸して椅子に座らせながら問う。
「竜鱗……ドラゴンの鱗って意味ですか? 価値がありそうな?」
「はい、価値はあります。すみません、ここを楽にさせて下さい」
息の辛そうな彼女の為にジャケットの前を開ける。再び色っぽい胸元が現れた。なんかすげー背徳感や罪悪感がある。
「じゃあ換金したらしばらくは暮らせますかね?」
俺は目の前に現れた絶景から必死で目を反らし、紙を束ねて団扇のように扇いだ。ドラゴンのストックトンさんは
「監督をクビになった時の当座の生活資金にしろ」
て意味でくれたのかもしれない。
「ありがとうございます。あの、それを換金したらしばらく暮らせるどころか……」
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