D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが

米俵猫太朗

文字の大きさ
50 / 700
第四章

うぃるゆーまりーみー?

しおりを挟む
 あのど派手な発表会見の翌日早朝。俺たちはアーロン郊外の人通りの少ない街道にいた。猛烈に眠いが人目を避ける為だ。しょうがない。
 昨日の会見は大いに注目を集めた。はっきり言ってフェリダエチームの優勝が霞むほど。マスコミ、ファン、早くも自分を売り込もうとするリクルート希望者……そういった連中が山のように押し掛け、ダリオさんの宿泊するボビー・チャールトン、じゃなかったリッツ・カールトンみたいな高級ホテルの入り口で追い返されていた。
 その間にダリオさん以外の俺たちは例の一般利用客通路を使ってスタジアム外に脱出し研究棟の間を通って無事、シャマーさんの例の部屋に到着していた。ホテルとダリオさんを囮にしてしまった形で申し訳ない。でもダリオさん、見事なデコイラン囮の動きでしたよ……なんちゃって。
 で、部屋の中でミーティングを行い目指すサッカーやその為の準備方針を話し合い、明け方頃にようやく解散となった訳である。
 結果、決まった事はこうだ。ザックさんとジノリさんは地元で用事を済ませてから『残雪溶かす朝の光』王国へ向かい建設中の練習場や施設の監修、自分がエルフの国に住む足場固め(俺がやったみたいにね)をする。 
 ニャイアーさんはもっと身軽な上にナリンさんの家に彼女専用の宿泊スペースがある事から直接、王国へ向かいユイノさんの指導を開始する。
 そして残った俺たちという変わらぬメンツで視察の旅を続け、早速ゴブリンの王国へ向かう……と。

「ニャリン、本当に僕がついていかなくて大丈夫かい?」
 見送りに来たニャイアーさんが未練たらたらの声で言った。
「大丈夫よ。全部ショーキチ殿の手配で上手くいっているわ」
「そのショーキチが心配にゃんだよ……」
 笑顔で応えるナリンさんの前でまたニャイアーさんが耳を垂れ下げて呟いた。おい、聞こえているぞ?
「ありがとう。でもショーキチ殿に何かあったら、私が命に換えても守り抜くから!」
 いやそっちの意味じゃないと思うぞ? ありがたいけどさ。
「ショーちゃん大丈夫? やっぱり持っていかない?」
 同じく見送りに来たシャマーさんが様々な『護身用』のマジックアイテムが入った鞄を差し出した。
「いえ、何度も言ったけど本当に結構です。護衛はちゃんといるんで」
 俺はそう言いながら馬車を点検するスワッグとステフを見る。両者は夜通しの会議に殆ど関わらず別室で寝ていたので元気いっぱいだ。特にトモダチ手帳にコーチ陣三名の名前を加えたスワッグが機嫌が良い。(会議には参加しないのにちゃっかりした鳥だ)
「あの二人を信頼してない訳じゃないのよ。でも心配で……」
 ダリオさんもいないと言うのに、シャマーさんはあまり強引に迫ってこない。むしろ真剣に俺の身を案じているようだ。俺は少しだけ考えを改めそうになった。
 だが彼女の言う『護身用』がどれほどの破壊力を持っているか分からないし、その、ちょっとだけ、盗聴的なものを恐れている。いやごめん、疑って! でも何回も騙されたからさ!
「おーい、そろそろ行くぞー!」
 点検とスワッグの装着を終えたステフが俺たちに呼びかけた。ナリンさんは軽くニャイアーさんを抱き締め、シャマーさんに手を振ると馬車へ乗り込んで行く。
「ユイノ君の事は任せておけ。だがニャリンに何かあったら……承知しないぞ?」
 お、ユイノさんの事はニャイノとか言わないんだな? ニャイアーさんは俺を一睨みすると、最後まで見送るのが辛いのかさっさと身を翻して去る。
 これはチャンスだな。
「じゃあ、シャマーさん。俺も行きますが」
 俺は懐から小さな箱を取り出した。
「ん~何?」
「今回はいろいろ手助けして貰ってありがとうございます。お礼にこれを贈りたいんですが」
 俺は箱の上蓋を開ける。そして中の、リングピローの上に鎮座する金色の小さな輪っかを彼女に見せる。
「え、これって!?」
 彼女は両手を口に当て、箱の中身と俺の顔を交互に何度も見やる。
「こんなものでシャマーさんが喜んでくれるか自信は無いんですが……どうしても貴女に贈りたいんです」
「そんな! でもまさか……めちゃくちゃうれしいです……」
 シャマーさんは目を潤ませ顔を伏せながら聞いたこともないような声でそっと呟く。
「じゃあ、俺がつけさせても良い?」
 俺がそう聞くと彼女は服の袖で顔をゴシゴシ擦ってから頷き、俯いたまま目を閉じて左手を差し出した。
「手……小さかったんですね」
 そう囁きながら輪っかを取り出し箱をポケットに仕舞い、左手で彼女の左手を握り、右手で輪っかのある部分をなぞる。
 そしてシャマーさんが気付く前に、少し大きくなった輪っかを彼女の腕に通し上腕まで通す。
「んん? 何!?」
「いやー似合いますね、キャプテンマーク!」
 魔法で小さくされていた腕章はその効果を解呪され、ちょうど良い大きさに戻って彼女の腕で輝いていた。
「これ!?」
 黄金の下地に赤い矢が描かれたそれは、アローズ――エルフ代表――の緑のユニフォームに映える黄金色のキャプテンマークだった。
「もともと作っていたんですけど矢のデザインを入れるのは急遽、決まりまして。でもジョバ……もといステフが一晩でやってくれました」
 ダリオさんに話した『放っていると緩んでしまうというか……気持ちが離れてしまいそうな選手』の筆頭がシャマーさんだ。彼女は間違いなく能力が高い。サッカー選手として何でもできるし狡賢さもある。
 だがむらっけが大きく真剣みに欠け、試合に集中しない部分がある。余談だがそれが昨シーズンまでスタメンに起用されない理由の一つでもあった(ダリオさん談)。
 そこで俺は彼女をキャプテンに任命し、責任感を与える事で改善するのに期待することにした。もっともこの後の視察でよりキャプテンに相応しい人物が見つかるかもしれない。それはそれで副キャプテンだったりやりようはあるので、とりあえず仮採用しておこうと思ったのだ。
「私がキャプテン!?」
「やってくれますよね? いやあ、『うれしい』って言ってくれたから断るわけないですよね~」
 だがシャマーさんが素直にキャプテン就任を受け入れてくれるとは限らない。激しく拒絶したり(大穴予想)のらりくらりとかわしたり(本命予想)何か大人な見返りを要求したり(対抗予想)する可能性があった。
 そこで俺はダリオさんと(また)策略を考えた。それがこれだ。
「なるほど。この私を騙すなんて……」
 シャマーさんは左腕の腕章を右手で触り、俯いて地面を見つめながら呟いた。
「おもしろーい! ショーちゃん、だから好き!」
 そしてまたふわっと宙に浮き抱きつく。その台詞まえも聞いたぞ!
「OKなんですよね? 宜しくお願いしますよ!?」
「やるやる! ねえねえキャプテンと監督なんだから、今後はもっと密にコミュニケーションをとらないとね!」
 嬉しそうに俺の耳元で囁くシャマーさんをなんとか押しとどめる。普通に考えたら騙し討ちで嫌がる(嫌がりそうな)選手をキャプテンに就任させるなんて無謀だ。選手がやる気を失うかもしれないし、監督との信頼関係にも悪影響を与えるだろう。
 だが相手はシャマーさんだ。頭脳明晰な割に稚気の塊のようなドーンエルフの中でも、最も悪戯心に溢れた存在。彼女なら、俺の不意打ちを「善し」とする可能性は十分にあった。
「ミーティングはいずれしますから! 今日は任命の連絡だけです。じゃあ行ってきます!」
「は~い。楽しみにしてるからね~。いってらっしゃい!」
 たぶん、受け入れられたのだろう。俺は手を振る彼女を残して、馬車へ乗り込んだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

処理中です...