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第六章
にいさんの手引きならぬ羽引き
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やってもうた、という俺の悔恨をよそに旅は恙なく続いた。人数が増えたので駆け足ではあったが、一部リーグの残りの種族や来期昇格が見込まれる二部リーグの種族などの国々、街々を俺達は旅して見て回った。
人数が増えた反面で良い事もあった。一つは旅の安全だ。女性が大半とは言えやはり総勢7人(6人と一羽)いると怖さは和らぐし、リストさんはナイトエルフ随一の剣士とあってボディーガードが二名になった安心感があった。いやリストさんは気絶さえしなければ、だけれども。
もう一つは軽く3vs3形式の練習もできるようになった事だ。旅の合間の休憩時間に開けた場所を見つけると、軽く線を引いてシチュエーションを決めて俺達は何度もボールを蹴った。
一番多く行ったのはナリンさんやスワッグをGKとして立たせてFP二人で開始しシュートで終わる形だ。その場合は俺がFPに含まれる事になり運動不足や自身のサッカーテクニックの無さを痛感させられた訳だが……もやもやした気分やコーチングの件で疲れた頭を晴らすには最高のレクレーションだった。
とは言え問題は解決した訳でもなく……。俺はある晩、馬車を抜け出してこっそり助言を求めに行った。
「(スワッグにいさん! 起きてます?)」
「ぴい? なんだ、また羽毛100%で眠りたくなったかぴよ?」
俺はただ一人、野外で焚き火に当たりながら寝ているスワッグの所へ忍び寄っていた。
「アーロンでのその節はおおきに。今晩はスワッグにいさんに聞きたい事があるんです」
そう言いながら、俺はスワッグの側に正座し頭を下げる。
「スワッグにいさん、僕に……僕におんなの扱い方を教えて下さい!」
「えっ!? 良いけど何か口調が気持ち悪いぴい。普段の話し方で喋って欲しいぴよ」
珍しくスワッグが戸惑っている。俺もたいがい自分に気持ち悪くなっていたので、佇まいと口調をいつものに戻して続ける。
「種族は違えどスワッグは恋愛マスターだろ? 俺に複数女性との付き合い方というか、付き合わずに済む方法を教えてくれないか?」
上司として女性の部下に接する方法ならある程度は分かっていたつもりだ。だがこの世界に来てからプライベートにまで踏み込まれる事が増え、気付けば少々、不味い状況になっているかもしれない。
「ああ、そう言えばレイちゃんとキスとかしてたぴよ?」
「うん。でも実は彼女だけじゃないんだ」
「そうそう、ナリンさんもだったぴい」
「ええと、そう。でもまだ……」
「まだいるぴい!?」
スワッグの声が跳ね上がった。俺は慌てて彼の嘴を覆う。(いや実際はでかいので覆えない)
「(スワッグ! 声が大きい!)」
「(すまんぴい。だが助言には正確な情報が必要ぴよ。キスした全員を教えろぴい)」
そう言うスワッグの質問に俺は指折り数える。
「えっと最初はシャマーさんで、これは翻訳の魔法をかける為に仕方なく……という体で騙されたやつ。次はダリオ姫で、さっきの翻訳の魔法をかけるのに必要だと思い込んでて間違ったやつ。でナリンさんのは、逃げる時に演技で。レイさんとのは、スワッグも知っての通り」
そこまで言ってスワッグの顔を見ると彼はそっと俺の両肩に羽根を置いた。
「嘴、もとい歯を食いしばるぴい」
「はい?」
「このばかちんが~!」
そう言ってスワッグが強烈に羽根で俺の両頬を張る。
「これはシャマーの分! これはダリオさんの分! これは俺の分! これはナリンさんの分!」
「やめてスワッグ! 痛くないけどなんか悔しい!」
あとさりげなく関係ないスワッグの分が混ざってなかったか!?
「ちゅっちゅちゅっちゅと4人もキスしやがって! ショーキチは小鳥なのか!? しかも全部、受け身なのか!?」
くっ、痛い所を突かれた!
「そうだよ全部、受け身だし有り難かったしトキメキもしたけど、本意ではないんだ!」
頬を張った勢いで舞い散る羽毛の中、地面に倒れた俺はまるで悲劇のヒロインのように訴えた。
「ショーキチ……」
「俺はどうすれば良いんだ!?」
真摯に訴える俺の言葉にさしものスワッグも心を動かされたのだろう。懐から例のトモダチ手帳を取り出しパラパラとめくる。
「どうするも何も、今のショーキチはそれ以前の段階ぴい。これを見るぴよ」
スワッグが羽根を止めた付近には何頭もの馬の名前やイラストと『スピード』『パワー』『脚質』といった数値がたくさん書いてあった。
「これは?」
「これは今まで俺が付き合ってきた牝馬……ウマの娘さんたちの記録だぴよ」
いま何で牝馬からウマの娘さんって言い換えた?
「この記録がいったい?」
「俺は一人一人のウマの娘さんについて、毎回これくらい客観的なデータを取ってるぴい。一方のショーキチはどうだぴよ?」
「俺が……ウマの娘さんについて?」
「違うぴい! ショーキチがちゅっちゅしたエルフさんたちの事ぴい!」
スワッグに言われて俺の体に稲妻のようなモノが走った。
「俺は……何も知らない!」
「そりゃシャマーは小悪魔っぽいとかレイちゃんは積極的とかのイメージくらいは持ってるだろうぴよ。でもそれは主観の話だぴい」
確かに! サッカーでも漠然と『運動量が豊富』とか『脚が早い』ではなく、『走行距離』や『時速何km以上のスプリントを何回』といった情報を集めて分析する、データアナリティクスが主流になりつつある!
「俺はただ彼女たちの言動に翻弄されるだけで、それを情報として整理してこなかった……」
「それでは付き合う付き合わない以前の問題だぴい」
言われてみればそうだ。
「これから俺がするべき事は、データを集めること!」
「そうだぴい! 今日からでも遅くない、彼女たちの趣味志向どんなプレイやシチュエーションを何回したか事細かに記録して分類するぴい!」
いつしか俺とスワッグは立ち上がり拳と羽根を突き上げ叫んでいた。
「それがデータアナリティクス!」
「気分は小柳ゆきぴい!」
「あなたのキスを数えましょう!?」
「レジェンド校長を越えろぴい!」
「静かにしろ! 寝れねえわ!」
そんな中、馬車の方からステフの怒声と金たらいが飛んできて、見事に俺とスワッグの頭部に命中した!
「しかもレジェンド校長は犯罪だろうが……」
そんなステフの吐き台詞を聞きながら、俺の意識は暗転した……。
人数が増えた反面で良い事もあった。一つは旅の安全だ。女性が大半とは言えやはり総勢7人(6人と一羽)いると怖さは和らぐし、リストさんはナイトエルフ随一の剣士とあってボディーガードが二名になった安心感があった。いやリストさんは気絶さえしなければ、だけれども。
もう一つは軽く3vs3形式の練習もできるようになった事だ。旅の合間の休憩時間に開けた場所を見つけると、軽く線を引いてシチュエーションを決めて俺達は何度もボールを蹴った。
一番多く行ったのはナリンさんやスワッグをGKとして立たせてFP二人で開始しシュートで終わる形だ。その場合は俺がFPに含まれる事になり運動不足や自身のサッカーテクニックの無さを痛感させられた訳だが……もやもやした気分やコーチングの件で疲れた頭を晴らすには最高のレクレーションだった。
とは言え問題は解決した訳でもなく……。俺はある晩、馬車を抜け出してこっそり助言を求めに行った。
「(スワッグにいさん! 起きてます?)」
「ぴい? なんだ、また羽毛100%で眠りたくなったかぴよ?」
俺はただ一人、野外で焚き火に当たりながら寝ているスワッグの所へ忍び寄っていた。
「アーロンでのその節はおおきに。今晩はスワッグにいさんに聞きたい事があるんです」
そう言いながら、俺はスワッグの側に正座し頭を下げる。
「スワッグにいさん、僕に……僕におんなの扱い方を教えて下さい!」
「えっ!? 良いけど何か口調が気持ち悪いぴい。普段の話し方で喋って欲しいぴよ」
珍しくスワッグが戸惑っている。俺もたいがい自分に気持ち悪くなっていたので、佇まいと口調をいつものに戻して続ける。
「種族は違えどスワッグは恋愛マスターだろ? 俺に複数女性との付き合い方というか、付き合わずに済む方法を教えてくれないか?」
上司として女性の部下に接する方法ならある程度は分かっていたつもりだ。だがこの世界に来てからプライベートにまで踏み込まれる事が増え、気付けば少々、不味い状況になっているかもしれない。
「ああ、そう言えばレイちゃんとキスとかしてたぴよ?」
「うん。でも実は彼女だけじゃないんだ」
「そうそう、ナリンさんもだったぴい」
「ええと、そう。でもまだ……」
「まだいるぴい!?」
スワッグの声が跳ね上がった。俺は慌てて彼の嘴を覆う。(いや実際はでかいので覆えない)
「(スワッグ! 声が大きい!)」
「(すまんぴい。だが助言には正確な情報が必要ぴよ。キスした全員を教えろぴい)」
そう言うスワッグの質問に俺は指折り数える。
「えっと最初はシャマーさんで、これは翻訳の魔法をかける為に仕方なく……という体で騙されたやつ。次はダリオ姫で、さっきの翻訳の魔法をかけるのに必要だと思い込んでて間違ったやつ。でナリンさんのは、逃げる時に演技で。レイさんとのは、スワッグも知っての通り」
そこまで言ってスワッグの顔を見ると彼はそっと俺の両肩に羽根を置いた。
「嘴、もとい歯を食いしばるぴい」
「はい?」
「このばかちんが~!」
そう言ってスワッグが強烈に羽根で俺の両頬を張る。
「これはシャマーの分! これはダリオさんの分! これは俺の分! これはナリンさんの分!」
「やめてスワッグ! 痛くないけどなんか悔しい!」
あとさりげなく関係ないスワッグの分が混ざってなかったか!?
「ちゅっちゅちゅっちゅと4人もキスしやがって! ショーキチは小鳥なのか!? しかも全部、受け身なのか!?」
くっ、痛い所を突かれた!
「そうだよ全部、受け身だし有り難かったしトキメキもしたけど、本意ではないんだ!」
頬を張った勢いで舞い散る羽毛の中、地面に倒れた俺はまるで悲劇のヒロインのように訴えた。
「ショーキチ……」
「俺はどうすれば良いんだ!?」
真摯に訴える俺の言葉にさしものスワッグも心を動かされたのだろう。懐から例のトモダチ手帳を取り出しパラパラとめくる。
「どうするも何も、今のショーキチはそれ以前の段階ぴい。これを見るぴよ」
スワッグが羽根を止めた付近には何頭もの馬の名前やイラストと『スピード』『パワー』『脚質』といった数値がたくさん書いてあった。
「これは?」
「これは今まで俺が付き合ってきた牝馬……ウマの娘さんたちの記録だぴよ」
いま何で牝馬からウマの娘さんって言い換えた?
「この記録がいったい?」
「俺は一人一人のウマの娘さんについて、毎回これくらい客観的なデータを取ってるぴい。一方のショーキチはどうだぴよ?」
「俺が……ウマの娘さんについて?」
「違うぴい! ショーキチがちゅっちゅしたエルフさんたちの事ぴい!」
スワッグに言われて俺の体に稲妻のようなモノが走った。
「俺は……何も知らない!」
「そりゃシャマーは小悪魔っぽいとかレイちゃんは積極的とかのイメージくらいは持ってるだろうぴよ。でもそれは主観の話だぴい」
確かに! サッカーでも漠然と『運動量が豊富』とか『脚が早い』ではなく、『走行距離』や『時速何km以上のスプリントを何回』といった情報を集めて分析する、データアナリティクスが主流になりつつある!
「俺はただ彼女たちの言動に翻弄されるだけで、それを情報として整理してこなかった……」
「それでは付き合う付き合わない以前の問題だぴい」
言われてみればそうだ。
「これから俺がするべき事は、データを集めること!」
「そうだぴい! 今日からでも遅くない、彼女たちの趣味志向どんなプレイやシチュエーションを何回したか事細かに記録して分類するぴい!」
いつしか俺とスワッグは立ち上がり拳と羽根を突き上げ叫んでいた。
「それがデータアナリティクス!」
「気分は小柳ゆきぴい!」
「あなたのキスを数えましょう!?」
「レジェンド校長を越えろぴい!」
「静かにしろ! 寝れねえわ!」
そんな中、馬車の方からステフの怒声と金たらいが飛んできて、見事に俺とスワッグの頭部に命中した!
「しかもレジェンド校長は犯罪だろうが……」
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