D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが

米俵猫太朗

文字の大きさ
99 / 700
第六章

ドアの外でお待たせしました

しおりを挟む
 宿に着いた俺達は、部屋で荷物をまとめるクエンさんとフロントで話をまとめる俺とに分かれて作業を進める事にした。
 俺の方は部屋をキャンセルすると言うよりは部屋を利用する人物が変わる、という交渉で意外と簡単に話がついた。現代日本で考えれば断られそうな話だがやはりこの世界、かなりルーズなんだろう。
 ものの数分で話が終わって部屋につくと、そちらでもクエンさんの作業は終わっていた。何せ一泊すらしていない部屋である。荷物は殆ど広げていないしベッドメイクの必要すらない。
 俺達はやる事もないので床の上でルーナさんがやっていたリフティングにチャレンジすることにした。
「はあ……はあ……ショーパイセン、これ結構きついっす!」
「クエンさん、もう少し足を開いて」
「こうっすか? あ、良い感じかも?」
「うん、ナイスですね~! そう、上に乗せて……あ、でも玉を蹴り上げちゃいけません!」
「分かってるっす! 確か撫で上げるようにっすね……」
「おお、素晴らしい! とても初めてとは思えませんね!」
「コツが分かってきたっすよ。腰ですね、腰をこう使って」
「あ、いけません! 一気に動いたら……」
 と、盛り上がっている間にふと廊下で気配がした。
「あら、あなた? まだ入ってないの? ご挨拶は?」
「いや、それが……今は入ってはいけない気がする……」
「なに言ってんだよとーちゃん。おーい、おにいちゃーん!」
 そんな声がしてドアが開いて例のオーク親子が入ってきた。後ろについてダッシュで入ってきたのは、なんと人間の男性だ。
「おい待てダニー見ちゃ駄目……あれ? あ、どうも」
 その男性は鎧に包まれた腕でオークの坊やを押さえつけ、何故か必死に少年の目を隠そうとしていた。明らかに兵士だが、もしやこの人がオーク母子のお父さんだろうか?
「ショーキチさん、こちらが夫のダンです。少し時間がとれたのでご挨拶を、と思いまして」
 オークのお母さんはそう言って優しい目で旦那のダンという男性を紹介する。
「あ、やはりそうでしたか! はじめまして、エルフの監督をしていますショーキチと申します」
「新人のクエンっす!」
 俺達がそう挨拶するとダンさんはやや警戒した面もちで頭を下げた。
「はじめまして、ダンと申します。いきなりで失礼ですが、どんな監督をなさっておられるのですか?」
 確かにいきなりだな。
「サッカードウの監督です。あの、11人でボールを蹴るスポーツの」
「ああ、そっちでしたか!」
 ダンさんは唐突に大声を出すと、一気に緊張を解いて息子さんも離した。そっちってどっちや?
「すみません、可愛らしいお嬢さんを複数連れてらっしゃるそうだし、部屋も広いのを借りてらっしゃるし、あんな声もしてたもので……。てっきり私は全裸な監督の方かと思いまして」
 全裸な監督? よく分からないが全裸で指揮するつもりはないな。たぶんジャージかスーツを着るぞ?
「え? 自分可愛いっすか!?」
 クエンさんが素早く反応する。俺の通訳を待たずに分かった……てことはダンさんエルフ語で話しているな?
「ルーナさんの事かも知れないよ?」
「えっ、酷いっす! 自分も入ってますよ! ちゃんと『複数』て言いましたよねダンさん!?」
 俺達がそう言い合っているとダンさんは更に笑顔になったが、
「いえ、勘違いだったので気になさらず。遅れましたが、この度は部屋の提供ありがとうございます」
やおら姿勢を正しビシッと敬礼を行った。
「いえいえ。部屋とお金を無駄にしてしまう所を救って頂けたのは俺達の方ですよ。ところで他のご家族の候補は見つかりましたか?」
 敬礼って格好良くていいなあ、と思いながら訊ねる。
「はい! 幸い、部隊にも家族を呼び寄せる者、二、三日後に呼ぶ者がおりまして、彼らも喜んでいたであります」
「それは良かった! ダニー君もお父さんと一緒で嬉しいかい?」
「うん!」
 ダンさんの傍らのダニー君に声をかけると、少年は声を上げながらベッドにダイブした。
「たーのしー! ふかふか!」
 子供特有の急に上がるテンションと奇行に俺達ほ頬が緩んだ。が、その様子を見てふとある疑念が沸き上がった。
「ダンさんはヒューマンですよね? ということはオークの奥さんとは異種族婚ですか?」
 オークの奥さんという響きに自分でも笑いそうになるのを堪えながら旦那のダンさんに訊ねる。
「はい? そうですが」
「と言うことは失礼ですがダニー君は混血さん?」
「ええ」
 そう答えるとダンさんは傍らのオークの奥さんの肩を抱き微笑む。
「二人のラブの結晶です」
 そっそうか……。
「おおう、ごちそうさまっす!」
 クエンさんは喜んで敬礼で返す。だが俺はそう喜んで? もいられなかった。
「そっか、じゃあオーク代表チームにも混血の選手とかいるのかな? どんなプレイスタイルなんだろう?」 
 実のところ、エルフとオークの関係性仲の悪さや旅の短縮のあおりを受けてオークの視察は殆どできていなかった。その上、混血さんまでいるとなるとなかなか分析が難しくなるな。
「はは、本当にサッカードウの監督なんですね」
 考え込む俺を見てダンさんが吹き出す。
「あ、すみません。職業病というかなんというか」
「こちらこそ笑ってすみません。自分は一兵卒なので隊を指揮する苦労は分かりかねますが、曹長どのを見て大変だなあ、とは常々思っております」  
 そう言えば彼は仮面をつけていない。つまりはノートリアス、士官ではないという事か。
「でもすぐに任官されますわ。夫はオーク語もエルフ語も堪能で頭が良いもの」
 オークの奥さんはそう言って誇らしげに旦那のダンさん(しつこい?)を見上げる。
「おっと。オーク語を覚えたのは君を口説く為さ。二度とできないよ」
 そう言うとダンさんは再びオークの奥さん(こっちもしつこい?)を抱き寄せ、彼女の鼻にキスをした。
「でも君たちが来てくれたから頑張れるかもな? 昇進試験に向けて気合いが入ったよ」
「いいなあ。家族の助けがあれば百人力っすよねー!」
 クエンさんがつくづく羨ましそうに呟くとダンさん一家は嬉しそうにはにかんだ。
「そうだ、家族の助けか……」
 だが俺はまた別のアイデアが思い浮かんで考え込む。
「どうしました?」
「あ、また職業病でした。ともかく、お役に立てて幸いです。大変なお仕事だと思いますがどうか健やかで。では!」
 あまり永くいると家族団らんの邪魔だろう。俺とクエンさんは荷物を拾い、最後にもう一度お礼を言い合って宿を後にした。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

処理中です...