182 / 700
第十一章
風を掴むような話
しおりを挟む
「前に見た時は『ドワーフ代表頑張ってるな。上手いな』て思ったんですが、今見ると……」
「ドワーフ代表が上手いと言うより相手が下手過ぎる。具体的に言えば、落下地点の判断が」
ニャイアーコーチはGKコーチらしい視点でそう言った。GKは一つの判断ミスが失点に繋がる。それだけに落下地点の予想に関してはFP以上にシビアだ。
「風の影響かもしれんということか……」
ジノリコーチが暗い口調でそう言う。ボールの軌道や選手達の動きから察するに、ドワーフ代表陣から相手陣方向へ風が吹いているようだった
「普通の場所で試合していれば風の影響なんて普通に受けますし選手も予測して動きます。しかしここは地下でドームだし、たぶん風も特定のエリアでしか吹いてませんから、分からない選手には最後まで分からないでしょう。しかも人工的なのであれば、前半後半エンドが変わっても常に追い風を背に戦える」
追い風は相手のクロスを押し戻し、自分たちのクリアを遠くへ飛ばせる。また逆に自分達のシュートは伸びるし、相手のクリアを拾って勢いよく攻める事もできる。
とは言えサッカーは前半後半で陣を入れ替える競技なので、その恩恵は両チーム受ける。そう言う意味ではある程度、公平だ。
『ある程度』と言うのは所詮、自然の事だからね。前半で風が止むとか後半だけ大雨とか全然ありえるし。
だが自分たちで風を起こしているとなれば話は別だ。
「と言ってもこれは状況と短い映像を見ての仮説にしか過ぎないんですけどね」
設備はありそうだ、ポビッチ監督が妙に自信満々で秘策があるとインタビューに応えている、映像ではそれっぽい動きをしている……どれも証拠としては弱い。
「じゃあどうするって言うのさ?」
サオリさんが二股に分かれた蛇の舌を出し入れしながら言う。
「せめて仮説の立証だけでもできないかな? と思うのですが。すみませんニャイアーさんサオリさん。お二方って風を感じたり熱を感じたりする能力ってあったりしませんか?」
猫はヒゲで微妙な気流を感じたりするし、蛇の中にはピット器官という熱を感知する――人工的な風なら温度差があるかもしれないし――器官があってそれで暗闇でも狩りをしたりするらしい。
猫のようなフェリダエ族、そして蛇人間であるゴルルグ族なら似たような能力を持ってないかな?
「はてニャ? 風……風かあ」
「なに言ってんの? ないよ」
しかし二名の反応は芳しくないものだった。
「駄目か。それがあればそういう風があるか、あればどの高さかを絞り込めたのになあ」
「ですがショーキチ殿、もし試合で有利に立つ為の送風装置があったとしても、それこそ試合中や自分たちの練習中しか起動してないのではありませんか?」
ニャイアーコーチとサオリさんの返事に天を仰いだ俺に、ナリンさんが追い討ちをかけるような事を告げた。
「あ……本当だ」
確かに彼女の言う事は尤もだ。そうでなくても秘密にしておきたい機能を、わざわざエルフが練習している時に動かす筈がない。
「アタシは十分、あり得る話だと思うっすね。今からでもそれの対応をやっとくべきっす」
「アカリもなに言ってんの? そんな悪いこと、ドワーフがすると思う?」
「アンタはゴルルグにしてはピュア過ぎんのよ……」
「はあ!?」
二人というか二つの頭はそこから口論になった。ニャイアーコーチが宥めに入る横で、俺はナリンさんに問う。
「エルフから見たドワーフ、てのもまた難しいとは思いますけど、ナリンさんはどう思いますか?」
「分かりません。ですが『風を操る』というのは我々エルフの得意な術でありましたし、異種族戦争時代にそれに苦しめられたドワーフだからこそ研究を深めてきた……という仮説は十分に成り立ちます」
それはそうだ。俺のオールに封じ込められたシルフをはじめグリフォンの乗りこなし、弓術などエルフは風に纏わる魔術や技術が非常に高い。そしてエルフと戦ってきたドワーフこそが、ある意味ではそれを最も知る種族である、と言っても過言ではない。
そして相手を良く知り相手の思考や戦術を利用しようとするのは、俺の好む戦い方でもある。
「ワシもナリンと同意見じゃ。その時の力量や順位がどうであれ、我々ドワーフはエルフの研究だけは欠かした事がない」
ジノリコーチもついに観念したように呟いた。
「ならばやはり仮説ではなく実証にしたいですね。何か方法はないかな」
「ふっふっふ。みなさんお困りのようだな!」
悩むコーチ陣の横で、何かが跳ね起き高らかに笑う音がした。
「ドワーフ代表が上手いと言うより相手が下手過ぎる。具体的に言えば、落下地点の判断が」
ニャイアーコーチはGKコーチらしい視点でそう言った。GKは一つの判断ミスが失点に繋がる。それだけに落下地点の予想に関してはFP以上にシビアだ。
「風の影響かもしれんということか……」
ジノリコーチが暗い口調でそう言う。ボールの軌道や選手達の動きから察するに、ドワーフ代表陣から相手陣方向へ風が吹いているようだった
「普通の場所で試合していれば風の影響なんて普通に受けますし選手も予測して動きます。しかしここは地下でドームだし、たぶん風も特定のエリアでしか吹いてませんから、分からない選手には最後まで分からないでしょう。しかも人工的なのであれば、前半後半エンドが変わっても常に追い風を背に戦える」
追い風は相手のクロスを押し戻し、自分たちのクリアを遠くへ飛ばせる。また逆に自分達のシュートは伸びるし、相手のクリアを拾って勢いよく攻める事もできる。
とは言えサッカーは前半後半で陣を入れ替える競技なので、その恩恵は両チーム受ける。そう言う意味ではある程度、公平だ。
『ある程度』と言うのは所詮、自然の事だからね。前半で風が止むとか後半だけ大雨とか全然ありえるし。
だが自分たちで風を起こしているとなれば話は別だ。
「と言ってもこれは状況と短い映像を見ての仮説にしか過ぎないんですけどね」
設備はありそうだ、ポビッチ監督が妙に自信満々で秘策があるとインタビューに応えている、映像ではそれっぽい動きをしている……どれも証拠としては弱い。
「じゃあどうするって言うのさ?」
サオリさんが二股に分かれた蛇の舌を出し入れしながら言う。
「せめて仮説の立証だけでもできないかな? と思うのですが。すみませんニャイアーさんサオリさん。お二方って風を感じたり熱を感じたりする能力ってあったりしませんか?」
猫はヒゲで微妙な気流を感じたりするし、蛇の中にはピット器官という熱を感知する――人工的な風なら温度差があるかもしれないし――器官があってそれで暗闇でも狩りをしたりするらしい。
猫のようなフェリダエ族、そして蛇人間であるゴルルグ族なら似たような能力を持ってないかな?
「はてニャ? 風……風かあ」
「なに言ってんの? ないよ」
しかし二名の反応は芳しくないものだった。
「駄目か。それがあればそういう風があるか、あればどの高さかを絞り込めたのになあ」
「ですがショーキチ殿、もし試合で有利に立つ為の送風装置があったとしても、それこそ試合中や自分たちの練習中しか起動してないのではありませんか?」
ニャイアーコーチとサオリさんの返事に天を仰いだ俺に、ナリンさんが追い討ちをかけるような事を告げた。
「あ……本当だ」
確かに彼女の言う事は尤もだ。そうでなくても秘密にしておきたい機能を、わざわざエルフが練習している時に動かす筈がない。
「アタシは十分、あり得る話だと思うっすね。今からでもそれの対応をやっとくべきっす」
「アカリもなに言ってんの? そんな悪いこと、ドワーフがすると思う?」
「アンタはゴルルグにしてはピュア過ぎんのよ……」
「はあ!?」
二人というか二つの頭はそこから口論になった。ニャイアーコーチが宥めに入る横で、俺はナリンさんに問う。
「エルフから見たドワーフ、てのもまた難しいとは思いますけど、ナリンさんはどう思いますか?」
「分かりません。ですが『風を操る』というのは我々エルフの得意な術でありましたし、異種族戦争時代にそれに苦しめられたドワーフだからこそ研究を深めてきた……という仮説は十分に成り立ちます」
それはそうだ。俺のオールに封じ込められたシルフをはじめグリフォンの乗りこなし、弓術などエルフは風に纏わる魔術や技術が非常に高い。そしてエルフと戦ってきたドワーフこそが、ある意味ではそれを最も知る種族である、と言っても過言ではない。
そして相手を良く知り相手の思考や戦術を利用しようとするのは、俺の好む戦い方でもある。
「ワシもナリンと同意見じゃ。その時の力量や順位がどうであれ、我々ドワーフはエルフの研究だけは欠かした事がない」
ジノリコーチもついに観念したように呟いた。
「ならばやはり仮説ではなく実証にしたいですね。何か方法はないかな」
「ふっふっふ。みなさんお困りのようだな!」
悩むコーチ陣の横で、何かが跳ね起き高らかに笑う音がした。
0
あなたにおすすめの小説
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる