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第十一章
血が冷えるって言うか……
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「ぶーぶー!」
『きたぞ、あの野郎だ!』
何度か感じた例の気配が俺を包み、大半の言葉が俺の理解不可能なモノへ変わった。と同時に意味は理解できないが、激しい罵声も俺に飛んでくる。
「うわー。なんか、懐かしい感じですね」
「そうでありますね! 自分も興奮してきたであります!」
試合前だがピッチ内は既に魔法無効のフィールドが張られており、翻訳アミュレットはただの首飾りと化している。ナリンさんもここからは通訳としての仕事がメインになる。
『何を気取ってやがんだ! こっち見ろ!』
『なんだ!? あのエルフの変な仮面は!?』
割と近くの席に座ったドワーフがこちらを指さし何か言っている。
「ナリンさん、ドワーフ語もいけるんでしたっけ? やっぱ汚い言葉を投げつけて来てる感じですか?」
「ええ。でもまあ可愛いものであります。あとこの仮面に、やはり恐れおののいているようであります!」
ナリンさんは仮面の効果もあって壮絶な笑みを浮かべた。
「あとショーキチ殿についても……格好良いと」
「いやそこは盛ってるでしょ?」
俺は苦笑を浮かべながらそう突っ込んだ。因みに今の格好は例の、モウリーニョとお揃いのスーツである。良くても
「気障だ、お高くとまってる」
といった言われ方だろう。
「ちょっと歩きましょうか?」
俺はそう言って自陣ベンチ前を離れ、ゴール裏へ向けて歩き始めた。
観客席の7割くらいはドワーフの男性達だ。ACL(アジアチャンピオンズリーグ)で某外国へ行けば某宗教の戒律で女性のスタジアム観戦が禁じられている兼ね合いもあり、会場殆どが髭の男ばかり……という事もあるそうだが、それに近い感じかもしれない。
それでもそこそこ女性や子供もおり、俺はなるべく無害そうなお客さんに手を振りつつ歩みを進めた。
「カントク! ガンバッテ!」
ゴール裏には100名いかないかくらいのエルフが固まっており、俺が近づくと片言の声援が飛んできた。
「あれ? 日本語分かるの?」
「ハイ、スコシ……」
俺が話しかけたエルフの男性はそこで言葉が詰まり、ナリンさんに助けを求めた。
「学校にそういう講座があるそうであります。受講生も増えつつあるとか。ショーキチ殿の影響ですね!」
「いやまだ何もしてないのに早すぎるでしょ! でもありがたいなあ。『お互い頑張りましょう!』て伝えて貰えますか?」
「はい!」
俺がそう言うとナリンさんは嬉しそうにその男性に話しかけた。それが終わるのを待って、再び周回を続ける。
『まあ! 貴方はカラムって言うのね! 素敵な名前』
『いえ、こちらこそ……』
進んだ先にはウォーミングアップ中のダリオさんと、ドワーフの少年がいた。
「あれ? どうしたんですかダリオさん?」
『姫、その方は?』
俺の問いをナリンさんが素早く通訳する。
『ああ、ショウキチさん、ナリン! このボールパーソンの少年、投げるのがとっても上手なんですよ』
そう言ってダリオさんはそのドワーフの肩を抱いた。まだ髭も生えていないドワーフの少年は色っぽい大人のお姉さんに鼻の下を伸ばしてデレデレだ。まだ返事の翻訳を聞いていないが、たぶん何か良い事を言われているんだろう。
「この少年はボールパーソンなんですが、良い肩をしているそうであります」
キャッチボールでもしたのか!? と思ったがアレか。ウォーミングアップ中に外に出たボールを投げ返してくれたとかか。しかし……。
「ダリオさん、ドワーフも誑し……ドワーフさんともコミュニケーションをとれるんですね」
『姫はドワーフとの交渉に慣れてらっしゃるんですね、と』
『ええ。外交上の必要もあります』
「外交という重要な任務の為であるそうです」
なるほど、ライバル種族をも誑し込むとはさすが王族、外交の達人……! 試合前に何故? とも思うけど。
『またね』
『はい……頑張ってください』
頭を撫でられぼーっとしている少年を残し、俺たちは一緒に歩いた。
「いよいよですね。普段から王族として忙しくて、今も外交活動されてて頭が下がる想いですが……。試合では深く考え過ぎず、ダリオさんの思うがままに動いて下さい。そうすればチームメイトも結果も、勝手についてきますから。貴女はそれくらいの選手です」
俺はそう言ってダリオさんに向けて親指を立てる。
『姫の勤労されるお姿には本当に感服しています。ですが試合では自由に動いて欲しいと。それで民も結果もついてきます。姫はそういう運命をお持ちです、と』
『まあ、随分と買い被って下さっているのね。嬉しいわ! 自由に動いて良いと言うことは……得点を決めたら抱きついても良いって事よね?』
『姫っ!?』
会話の途中でナリンさんが何やら慌てふためいたが、ダリオさんはにこっと笑って俺の拳にグータッチして去っていった。
「ダリオさんは何て?」
「えっと……。得点を決めるそうであります……」
例の仮面で顔の殆どが見えないが、ナリンさんは明らかに赤面狼狽していた。何か別のことを言われたようだが?
『ウォーミングアップ終了の時間です』
場内アナウンスが流れた。意味は分からないが、このタイミング的にはロッカールームに帰ることを促すヤツだろう。
「じゃあ一旦、帰りますか!」
「あ、はい……であります」
ちょっと気になるけど今は試合の方が大事だ。俺は駆け足で選手達の方へ向かった。
『きたぞ、あの野郎だ!』
何度か感じた例の気配が俺を包み、大半の言葉が俺の理解不可能なモノへ変わった。と同時に意味は理解できないが、激しい罵声も俺に飛んでくる。
「うわー。なんか、懐かしい感じですね」
「そうでありますね! 自分も興奮してきたであります!」
試合前だがピッチ内は既に魔法無効のフィールドが張られており、翻訳アミュレットはただの首飾りと化している。ナリンさんもここからは通訳としての仕事がメインになる。
『何を気取ってやがんだ! こっち見ろ!』
『なんだ!? あのエルフの変な仮面は!?』
割と近くの席に座ったドワーフがこちらを指さし何か言っている。
「ナリンさん、ドワーフ語もいけるんでしたっけ? やっぱ汚い言葉を投げつけて来てる感じですか?」
「ええ。でもまあ可愛いものであります。あとこの仮面に、やはり恐れおののいているようであります!」
ナリンさんは仮面の効果もあって壮絶な笑みを浮かべた。
「あとショーキチ殿についても……格好良いと」
「いやそこは盛ってるでしょ?」
俺は苦笑を浮かべながらそう突っ込んだ。因みに今の格好は例の、モウリーニョとお揃いのスーツである。良くても
「気障だ、お高くとまってる」
といった言われ方だろう。
「ちょっと歩きましょうか?」
俺はそう言って自陣ベンチ前を離れ、ゴール裏へ向けて歩き始めた。
観客席の7割くらいはドワーフの男性達だ。ACL(アジアチャンピオンズリーグ)で某外国へ行けば某宗教の戒律で女性のスタジアム観戦が禁じられている兼ね合いもあり、会場殆どが髭の男ばかり……という事もあるそうだが、それに近い感じかもしれない。
それでもそこそこ女性や子供もおり、俺はなるべく無害そうなお客さんに手を振りつつ歩みを進めた。
「カントク! ガンバッテ!」
ゴール裏には100名いかないかくらいのエルフが固まっており、俺が近づくと片言の声援が飛んできた。
「あれ? 日本語分かるの?」
「ハイ、スコシ……」
俺が話しかけたエルフの男性はそこで言葉が詰まり、ナリンさんに助けを求めた。
「学校にそういう講座があるそうであります。受講生も増えつつあるとか。ショーキチ殿の影響ですね!」
「いやまだ何もしてないのに早すぎるでしょ! でもありがたいなあ。『お互い頑張りましょう!』て伝えて貰えますか?」
「はい!」
俺がそう言うとナリンさんは嬉しそうにその男性に話しかけた。それが終わるのを待って、再び周回を続ける。
『まあ! 貴方はカラムって言うのね! 素敵な名前』
『いえ、こちらこそ……』
進んだ先にはウォーミングアップ中のダリオさんと、ドワーフの少年がいた。
「あれ? どうしたんですかダリオさん?」
『姫、その方は?』
俺の問いをナリンさんが素早く通訳する。
『ああ、ショウキチさん、ナリン! このボールパーソンの少年、投げるのがとっても上手なんですよ』
そう言ってダリオさんはそのドワーフの肩を抱いた。まだ髭も生えていないドワーフの少年は色っぽい大人のお姉さんに鼻の下を伸ばしてデレデレだ。まだ返事の翻訳を聞いていないが、たぶん何か良い事を言われているんだろう。
「この少年はボールパーソンなんですが、良い肩をしているそうであります」
キャッチボールでもしたのか!? と思ったがアレか。ウォーミングアップ中に外に出たボールを投げ返してくれたとかか。しかし……。
「ダリオさん、ドワーフも誑し……ドワーフさんともコミュニケーションをとれるんですね」
『姫はドワーフとの交渉に慣れてらっしゃるんですね、と』
『ええ。外交上の必要もあります』
「外交という重要な任務の為であるそうです」
なるほど、ライバル種族をも誑し込むとはさすが王族、外交の達人……! 試合前に何故? とも思うけど。
『またね』
『はい……頑張ってください』
頭を撫でられぼーっとしている少年を残し、俺たちは一緒に歩いた。
「いよいよですね。普段から王族として忙しくて、今も外交活動されてて頭が下がる想いですが……。試合では深く考え過ぎず、ダリオさんの思うがままに動いて下さい。そうすればチームメイトも結果も、勝手についてきますから。貴女はそれくらいの選手です」
俺はそう言ってダリオさんに向けて親指を立てる。
『姫の勤労されるお姿には本当に感服しています。ですが試合では自由に動いて欲しいと。それで民も結果もついてきます。姫はそういう運命をお持ちです、と』
『まあ、随分と買い被って下さっているのね。嬉しいわ! 自由に動いて良いと言うことは……得点を決めたら抱きついても良いって事よね?』
『姫っ!?』
会話の途中でナリンさんが何やら慌てふためいたが、ダリオさんはにこっと笑って俺の拳にグータッチして去っていった。
「ダリオさんは何て?」
「えっと……。得点を決めるそうであります……」
例の仮面で顔の殆どが見えないが、ナリンさんは明らかに赤面狼狽していた。何か別のことを言われたようだが?
『ウォーミングアップ終了の時間です』
場内アナウンスが流れた。意味は分からないが、このタイミング的にはロッカールームに帰ることを促すヤツだろう。
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ちょっと気になるけど今は試合の方が大事だ。俺は駆け足で選手達の方へ向かった。
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