D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが

米俵猫太朗

文字の大きさ
224 / 700
第十三章

親に叱られるやつ

しおりを挟む
「きやがった!」
 俺とディードが折り返し地点が見える位置まで来ると、ティアさんが大声で叫んでクルーの注意を促した。
「誰が住之江競艇のとこの隣駅やねん!」
 俺は一人そう呟いた。当然だが
「それは『きやがった』じゃなくて『北加賀屋きたかがや)』駅」
と突っ込んでくれる人はいなかった。
「ムルト、ポリン、頼むぜ!」
「分かってますわ!」
「うん! 頑張るよティアさん!」
 ティアさんがそう言うとネットの上のムルトさんと操舵輪を握るポリンさんが力強く頷いた。なるほど、細かい動きが出来るティア号で俺を止め、スピード重視のリーシャ号に追い抜かす作戦。しかもティア号においては位置計算の早いムルトさんを目と頭脳とし、細かいコントロールが得意なポリンさんを手としたのか。ティアさんやるな。
「だがそっちが大船なら俺は戸塚ヨットスクールだぞ?」
 ティア号は大きな船で確かに幅はあるが、こちらのディードリット号は小型船で俊敏性がある。機動力でブロックを掻い潜ってリーシャ号に追い抜かれる前に、先へ行ける筈だ。
 なお「大船」と「戸塚」も電車で言えば隣で、船に関係する隣駅ボケを続けて言っているのである。「おおぶね」ではなく「おおふな」であるが。
 当然の如く、これにも突っ込んでくれる人もエルフもいなかった。俺は鋼の心で舵を細かく動かしフェイントをかけた。
 基本的にティア号はインコース、ブイの付近を塞ぐように位置している。当然、俺は仕方なくアウトコースにティア号を避け大回りする進路をとろうとするのだが、より遠回りさせようと俺が外に膨らんだぶん彼女たちも寄せてくる。
 そうすると今度はティア号とブイの間に隙間ができインが空く。俺の選択としては更に大回りしてティア号を回避するか、できたその空間に急反転で飛び込むか……だ。むろん、その目論見は向こうも知る所で俺が内側へ行くそぶりを見せればすぐにまたそこを塞ぐよう動く。
 ただしその巨体は俺の船ほど俊敏ではない。後手の対応では決して間に合わないので俺の行動を先読みしてゲームで言う所の先行入力をして対応する事になる。
 となると勝負は技術と言うよりも心理戦だ。俺とティアさん、船長同士による読み合い。または縦を切るか中を切るかというサイドでの守備か。そういう意味ではSBで代表選手にまで上り詰めているティアさんに一日、いや何百日の長がある。
 俺はもちろん、そんな不利な勝負に乗るつもりは無かった。

「カットインしましたわ! ブイまでおよそ10秒!」
「反転だポリン!」
「ラジャーだよ!」
 俺はインが十分に開くのを待ち舵と帆の角度を一気に変えて内側へ舳先を向けた。それを見たティア号が大急ぎでインコースを塞ぐ転進に入る。
「どうだ!?」
「塞げます! 1秒ほど余裕がありますわ!」
 彼女達の操船技術は見事だった。ムルトさんの言う通り、ディード号が到達する少し前に封鎖ができてしまうだろう。
「塞げます! ……が、監督の船のスピードが落ちません!」
「はぁ!?」
 俺はその風景を目撃してなお、ディード号の速度を下げてアウトへ転進したりはしなかった。むしろ魔法のオールのスイッチを捻り、圧縮空気を水中へ送って加速する。
「このままだと……衝突しますわ!」
「畜生! 度胸勝負か!」
 ティアさんの叫び声が聞こえた。そう、その通り。これはどちらが先にブレーキを踏むかのチキンレースである。
 俺はティアさんのように、百戦錬磨のウインガーと対峙してデュエル1対1を行った事はない。だが自転車に乗って「下り坂でどこまでブレーキをかけずに走れるか」レースなら――怖いモノ知らずな小学生時代に――何度も行った経験がある。
 正直、めちゃくちゃ強かった訳でもない。勝ったり負けたり、怪我をしたりもした。だが単純にその試行回数では明らかに勝っている。更に言うとどのような形であれ、衝突した時によりダメージを負うのは俺とディードリット号の方だ。その時の罪悪感を想像して、それでも彼女たちはチキンレースを続けられるだろうか?
「ごめん、ティアさん!」
「あ、ポリン! 仕方ねえ! 転進だ! 衝撃に備えろ!」
 船長による判断が下される半瞬先に、ポリンさんが勝手に舵を切った。ティアさんは半ば追従するように指示を出す。
「ごめんね、ポリンちゃん……」
 ティア号は強引に向きを変え、減速しながら明後日の方向へ進む。結果、俺の前には大きなスペースが広がっていた。
「実はぶつかりそうだったら、ブイの向こうへ逃げるだけだったんだけど……」
 俺はそう呟きながら、ブイのすぐ脇をすり抜けターンした。なんと言うか、最年少エルフ少女の優しさにつけ込む形になってしまったな……。
「謝っておこうか」
 俺は帆の位置を変え軽くロープをかけて固定すると、立ち上がりティア号の方へ声をかける。
「あこぎなやり方でごめんよー! お詫びに練習、軽目にするからさー!」
「うるせえ卑怯もの!」
「監督! 後ろ!」
 ティアさんが罵声を浴びせムルトさんが俺の後方を指さした。
「後ろ? あ、リーシャ号か」
 見ると、後方からリーシャ号が追いつきつつあった。今のゴタゴタでまあまあ距離を詰められた訳だな。
「違います! そっち……」
 再びムルトさんの声が聞こえる。なんだ? 違う方向か?
「「危ない!」」
 ティア号とリーシャ号の両方からそんな声と悲鳴が聞こえた。振り向いた俺の顔に固定の甘かった帆の下の部分、フットがぶち当たり、俺は意識を失いながらシソッ湖に落ちていった……。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

処理中です...