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第十三章
ショービジネス
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スタジアム演出部。開幕戦を前にアローズの組織に新しく加わった部署がそれであった。
事の発端はドワーフ代表とのプレシーズンマッチまで遡る。あの試合で彼女たちは――かなりのグレーゾーンではあるが――スタジアム施設を存分に使いホームの利点を最大限に利用しようとした。送風装置を操りホームチームに有利なように風を送り、それで得点まで上げたのである。
あれを見て俺は思った。アローズのホームスタジアムでも何か出来るのではないだろうか? と。もちろん、普通の野外型であるリーブススタジアムで同じ事はできないし、風を送るような卑怯な真似はエルフも好まないだろう。だが別の手段、例えば――京都人的言い回しで言うと――他の種族に比べてかなり上品で大人しいエルフサポーターの応援を、もう少し迫力のあるものに昇華させる手助けくらいは可能だ。
そう考えた俺はスタジアムの音響設備の工事を開始させると同時に、演出部を立ち上げた。選手とサポーターをイベントや音楽で盛り上げ声で煽り、試合会場を更に熱く楽しい場所へ変える為の部署として、である。
試合前から楽しいイベントが行われ気持ちの良い音楽が流れれば、単純にお客様も嬉しい。お客様が喜び声援を盛り上げる事が出来れば、応援は更に力を増す。応援に迫力があれば、選手もテンションが上がり相手チームへのプレッシャーにもなる。一石何鳥も狙った施策だ。
で、ステフはその部の部長となった。ちなみにスワッグは部長補佐である。その長はエンターティメント方面の多岐に渡る知識経験が必要で、彼女たちが就任したのは当然の流れではあった。
ただ問題なのは既にスワッグステップがナイトエルフ、リストさん、クエンさん、レイさんのガイドや学生、ポリンさん、再びレイさんの護衛も兼任しており、更にミスラル・ボウルの様な案件があればまたスパイ的な作戦を行って貰うかもしれない……という事だ。
はっきり言って働き過ぎだ。労基案件である。いやこっちの世界にロウキないけど。だからステフにはなるべく自分達の次の役職者を見つけて採用し、仕事を分担するように言ってあった
その代表的なのがスタジアムDJ――スタジアム内のアナウンスを担当し、選手の紹介や応援の呼びかけ、選曲なども行う――であった。
「やっぱアタシ自身がやったらダメかなあ?」
「それは駄目。ステフはもっと他人に任せる事を覚えなさい」
こいつやはり未練があったな? そう言えばナイトエルフのスタジアムで似たような事をやった時も随分と楽しそうだったしな。俺は軽く探りを入れてきたステフに、しかしきっぱりとした声で言った。
「長って存在は一歩引いた所から全体を見なきゃ」
半ば自戒も込めて、だ。
「こんな風になるよ?」
俺は自分の鼻――を覆う仮面――を指さした。流石にステフは少し笑った。確かに彼女は優秀だ。俺たちとの旅を通して、剣技魔法知識機転度胸と非凡なモノを見せつけてくれた。だがだからこそ切り札、ジョーカーとして残しておきたいのだ。
「それだけステフさんに期待しているという事ですよ?」
再びナリンさんがフォローを入れ、ステフの笑顔は更に大きいものになった。良かった。
「DJは分かったけどコルリの方は?」
話を変えるべく、俺はコルリ――正式名称はコールリーダー。サポーターの中にあって選手への応援歌や手拍子、タオル回しを主導してくれる存在だ――について訊ねた。
「ああ、それな……」
そこまで言うとステフは急に椅子の上で姿勢を正した。
「ジャックスさんの伝手で手配できるらしい。と言うかお父さんが芸能界の大物、ニコルさんだったんだな!」
ステフの上げた名前の後者は分からないが、前者については俺も心当たりがあった。ミスラル・ボウルにもかけつけ最前線で声援を送っていた日本語も勉強中の熱烈サポーター、彼がジャックスさんだ。
「まあ! 彼の父上が……あの!」
ナリンさんが驚きの声を上げつつ手で口を覆った。え? そんなに驚きなの?
「ナリンさんもご存じなんですか?」
「はい。ニコルさんは王立歌劇団所属の国民的名優で同時にサッカードウの大ファンでもあります。流石にお歳ゆえアウェイには来られませんが、ホームゲームには必ず駆けつけ特徴的なダミ声でエールを送って下さるんですよ!」
ナリンさんはやや頬を朱に染めながら一気に言った。この様子ではナリンさんもその俳優さんのファンだな? ちょっと嫉妬してまうわ。
「ふうん。じゃあそのジャックスさんのお父さんのニコルさんが芸能界に手を回して、歌手とか俳優をコルリとして潜ませてくれるって事?」
「おいおい潜ませるなんてエルフ聞きの悪い! れっきとしたアローズサポーターだけを選んでくれるんだぞ?」
ちょっと言い方が意地悪だった俺をステフが嗜めた。その指摘にグサッっときつつ、そもそも俺が考えたプランだったよな……と俺は策に思いを馳せた。
事の発端はドワーフ代表とのプレシーズンマッチまで遡る。あの試合で彼女たちは――かなりのグレーゾーンではあるが――スタジアム施設を存分に使いホームの利点を最大限に利用しようとした。送風装置を操りホームチームに有利なように風を送り、それで得点まで上げたのである。
あれを見て俺は思った。アローズのホームスタジアムでも何か出来るのではないだろうか? と。もちろん、普通の野外型であるリーブススタジアムで同じ事はできないし、風を送るような卑怯な真似はエルフも好まないだろう。だが別の手段、例えば――京都人的言い回しで言うと――他の種族に比べてかなり上品で大人しいエルフサポーターの応援を、もう少し迫力のあるものに昇華させる手助けくらいは可能だ。
そう考えた俺はスタジアムの音響設備の工事を開始させると同時に、演出部を立ち上げた。選手とサポーターをイベントや音楽で盛り上げ声で煽り、試合会場を更に熱く楽しい場所へ変える為の部署として、である。
試合前から楽しいイベントが行われ気持ちの良い音楽が流れれば、単純にお客様も嬉しい。お客様が喜び声援を盛り上げる事が出来れば、応援は更に力を増す。応援に迫力があれば、選手もテンションが上がり相手チームへのプレッシャーにもなる。一石何鳥も狙った施策だ。
で、ステフはその部の部長となった。ちなみにスワッグは部長補佐である。その長はエンターティメント方面の多岐に渡る知識経験が必要で、彼女たちが就任したのは当然の流れではあった。
ただ問題なのは既にスワッグステップがナイトエルフ、リストさん、クエンさん、レイさんのガイドや学生、ポリンさん、再びレイさんの護衛も兼任しており、更にミスラル・ボウルの様な案件があればまたスパイ的な作戦を行って貰うかもしれない……という事だ。
はっきり言って働き過ぎだ。労基案件である。いやこっちの世界にロウキないけど。だからステフにはなるべく自分達の次の役職者を見つけて採用し、仕事を分担するように言ってあった
その代表的なのがスタジアムDJ――スタジアム内のアナウンスを担当し、選手の紹介や応援の呼びかけ、選曲なども行う――であった。
「やっぱアタシ自身がやったらダメかなあ?」
「それは駄目。ステフはもっと他人に任せる事を覚えなさい」
こいつやはり未練があったな? そう言えばナイトエルフのスタジアムで似たような事をやった時も随分と楽しそうだったしな。俺は軽く探りを入れてきたステフに、しかしきっぱりとした声で言った。
「長って存在は一歩引いた所から全体を見なきゃ」
半ば自戒も込めて、だ。
「こんな風になるよ?」
俺は自分の鼻――を覆う仮面――を指さした。流石にステフは少し笑った。確かに彼女は優秀だ。俺たちとの旅を通して、剣技魔法知識機転度胸と非凡なモノを見せつけてくれた。だがだからこそ切り札、ジョーカーとして残しておきたいのだ。
「それだけステフさんに期待しているという事ですよ?」
再びナリンさんがフォローを入れ、ステフの笑顔は更に大きいものになった。良かった。
「DJは分かったけどコルリの方は?」
話を変えるべく、俺はコルリ――正式名称はコールリーダー。サポーターの中にあって選手への応援歌や手拍子、タオル回しを主導してくれる存在だ――について訊ねた。
「ああ、それな……」
そこまで言うとステフは急に椅子の上で姿勢を正した。
「ジャックスさんの伝手で手配できるらしい。と言うかお父さんが芸能界の大物、ニコルさんだったんだな!」
ステフの上げた名前の後者は分からないが、前者については俺も心当たりがあった。ミスラル・ボウルにもかけつけ最前線で声援を送っていた日本語も勉強中の熱烈サポーター、彼がジャックスさんだ。
「まあ! 彼の父上が……あの!」
ナリンさんが驚きの声を上げつつ手で口を覆った。え? そんなに驚きなの?
「ナリンさんもご存じなんですか?」
「はい。ニコルさんは王立歌劇団所属の国民的名優で同時にサッカードウの大ファンでもあります。流石にお歳ゆえアウェイには来られませんが、ホームゲームには必ず駆けつけ特徴的なダミ声でエールを送って下さるんですよ!」
ナリンさんはやや頬を朱に染めながら一気に言った。この様子ではナリンさんもその俳優さんのファンだな? ちょっと嫉妬してまうわ。
「ふうん。じゃあそのジャックスさんのお父さんのニコルさんが芸能界に手を回して、歌手とか俳優をコルリとして潜ませてくれるって事?」
「おいおい潜ませるなんてエルフ聞きの悪い! れっきとしたアローズサポーターだけを選んでくれるんだぞ?」
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