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第十三章
ビッグな出会い
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その現場も、俺がドワーフ戦後に考案し発注をかけてモノだった。運河沿いの一等地に設けられた仮設スタンドで、スタジアム入りするアローズの船を間近で観覧し声をかけられる特等席だ。
大人数が何時間も座っている場所ではない。しかしこのスペース付のシーズンチケットはプレシーズンマッチの勝利もあり思った以上に売れており、途中で計画を変更追加しながらも急ピッチで足場から組み立てられていた。
大がかりな建設工事だ。関わる作業員も多い。地球ならば重機なども活躍していただろう。しかしこの世界にクレーンやショベルカーは無い。
代わりにその役割を果たしているのは……巨人族だった。
「おおいおおい、あぶないよさがって!」
「あ、すみません!」
建築現場の中へ入りかけた俺を現場監督のノームさんが慌てて叱る。俺は思ってたよりも近寄りすぎていたみたいだ。
「おまえらも! もっとまわりをみろ!」
「へいへい、すみませーん」
小柄で気の短そうなノームのオジサンに頭を下げる巨人たち。傍目で見ればユーモラスな風景でもあるが、背後のスタジアムを含め遠近感が狂いまくって少し気持ち悪くもある。
「いや、俺がぼーっとしてたんで……」
「ほんとだよ。きをつけてくれよまったく!」
遠く辿ればこの工事の発注主は俺である。もっと偉そうにしても許されるかもしれないが、俺はノームさんと巨人たちに頭を下げて距離を取った。
「それはそうと親方、そろそろお昼ご飯じゃ……」
「なんだと! まったく、くうことばかりいちにんまえにこのうすらぼうたちが!」
ノームの親方は早口でそう毒つくと、しぶしぶといった様子でお昼休みを宣言した。
「いぇーい!」
「やっほう! 飯だ飯だ!」
巨人たちは嬉しそうに歓声を上げると、工具をその場に放り投げそれぞれの弁当箱へ向かう。
「おおう! すげえ迫力……!」
巨人達の大声、地面に落ちた道具が起こした衝撃、食事へ向かうスキップの足音、その全てが大型サイズだった。
「うわ、マジでそれを喰うのか!?」
そして当たり前だが取り出されたお弁当が空前絶後の大きさで俺は思わず吹き出してしまった。
「うふふ。良いでしょ?」
俺の笑い声を勘違いしたか、巨人にしては妙に顔の整った可愛らしい女巨人がそう言ってウインクを送り、取り出したダチョウのような鳥をそのまま丸かじりする。
「スワッグが見たら卒倒するな……」
今のはマジでグリフォン並の大きさだった。流石に生きているのを踊り喰い、というのでは無かったが生ではあった。
「君も食べる?」
「いや、結構っす!」
その巨人の女の子は屈託ない表情で大きな鳥を差し出す。既に齧られた後なので断面はかなりセンシティブだ。モザイクが必要だろう。
「見てるだけで十分っす!」
「そうなんだ? 遠慮しなくても良いのに」
その子はそう言って食事を再開したが、じっと俺に見られているのを感じて流石に少し顔を赤らめそっぽを向いた。
……可愛い。髪は短いめだが睫が長く目鼻もすっとしているので、明らかに女性、しかも美少女と分かる。今は口元を隠しながら上品に咀嚼を繰り返し、たまに指でぷっくらした桜色の唇付近を拭っている。
でもまあサイズがめっちゃデカいし、口元についたのはケチャップとかじゃなくて血なんだよなあ……。
「みんな凄いな」
あまり彼女ばかり見るのもアレなので、俺は失礼にならないように注意しつつ別の巨人たちを盗み見た。
岩のような肌、霜のような髭、炎が舞い踊る髪……巨人と一言で言っても種類は様々な者がいるようだ。大きさも見た目も、あと知性の感じもかなり差異がありそうだ。すぐに昼休みに入ったのでそこまで詳しくは分析できていないが、例えば氷の巨人が型を作り炎の巨人が溶接し石の巨人が加工する……といった作業分担までしているようだった。
「エルヴィレッジにはいなかったもんなあ」
建築と言えば俺たちアローズのクラブハウスも最近、建てられたモノではあるが作業員に巨人の姿はなかった筈だ。
森の中だし、そこまで大きな工事ではないし、何よりエルフの住居という繊細な創造物に巨人は不向きというのがあったのかもしれない。
あとこれは失礼な話、巨人たちはサッカードウをしない。なので俺は最初からこの種族の事が眼中になかった。彼女たちはサイズの違い故にまともな相手が――最少の巨人でさえトロールよりも大きいのだ――おらず、自分たちだけで行うにはチーム数や組織力の面で手が回らず……といった感じで流行るまでには至らなかったらしい。まあ仕方ないよね。
しかしながらいざ見てみるとこれは実に興味深い種族だ。あと実際にこうして工事でお世話にもなっている。社会見学の一環として分析する価値があるかもしれない。
とは言え食事の風景はもう十分だなあ。そして俺も腹が減っている。確か近くにカフェの様な店があったよな? 俺はそこでさっさと昼食を済ませて帰ってきてから改めて見学する事にした。
大人数が何時間も座っている場所ではない。しかしこのスペース付のシーズンチケットはプレシーズンマッチの勝利もあり思った以上に売れており、途中で計画を変更追加しながらも急ピッチで足場から組み立てられていた。
大がかりな建設工事だ。関わる作業員も多い。地球ならば重機なども活躍していただろう。しかしこの世界にクレーンやショベルカーは無い。
代わりにその役割を果たしているのは……巨人族だった。
「おおいおおい、あぶないよさがって!」
「あ、すみません!」
建築現場の中へ入りかけた俺を現場監督のノームさんが慌てて叱る。俺は思ってたよりも近寄りすぎていたみたいだ。
「おまえらも! もっとまわりをみろ!」
「へいへい、すみませーん」
小柄で気の短そうなノームのオジサンに頭を下げる巨人たち。傍目で見ればユーモラスな風景でもあるが、背後のスタジアムを含め遠近感が狂いまくって少し気持ち悪くもある。
「いや、俺がぼーっとしてたんで……」
「ほんとだよ。きをつけてくれよまったく!」
遠く辿ればこの工事の発注主は俺である。もっと偉そうにしても許されるかもしれないが、俺はノームさんと巨人たちに頭を下げて距離を取った。
「それはそうと親方、そろそろお昼ご飯じゃ……」
「なんだと! まったく、くうことばかりいちにんまえにこのうすらぼうたちが!」
ノームの親方は早口でそう毒つくと、しぶしぶといった様子でお昼休みを宣言した。
「いぇーい!」
「やっほう! 飯だ飯だ!」
巨人たちは嬉しそうに歓声を上げると、工具をその場に放り投げそれぞれの弁当箱へ向かう。
「おおう! すげえ迫力……!」
巨人達の大声、地面に落ちた道具が起こした衝撃、食事へ向かうスキップの足音、その全てが大型サイズだった。
「うわ、マジでそれを喰うのか!?」
そして当たり前だが取り出されたお弁当が空前絶後の大きさで俺は思わず吹き出してしまった。
「うふふ。良いでしょ?」
俺の笑い声を勘違いしたか、巨人にしては妙に顔の整った可愛らしい女巨人がそう言ってウインクを送り、取り出したダチョウのような鳥をそのまま丸かじりする。
「スワッグが見たら卒倒するな……」
今のはマジでグリフォン並の大きさだった。流石に生きているのを踊り喰い、というのでは無かったが生ではあった。
「君も食べる?」
「いや、結構っす!」
その巨人の女の子は屈託ない表情で大きな鳥を差し出す。既に齧られた後なので断面はかなりセンシティブだ。モザイクが必要だろう。
「見てるだけで十分っす!」
「そうなんだ? 遠慮しなくても良いのに」
その子はそう言って食事を再開したが、じっと俺に見られているのを感じて流石に少し顔を赤らめそっぽを向いた。
……可愛い。髪は短いめだが睫が長く目鼻もすっとしているので、明らかに女性、しかも美少女と分かる。今は口元を隠しながら上品に咀嚼を繰り返し、たまに指でぷっくらした桜色の唇付近を拭っている。
でもまあサイズがめっちゃデカいし、口元についたのはケチャップとかじゃなくて血なんだよなあ……。
「みんな凄いな」
あまり彼女ばかり見るのもアレなので、俺は失礼にならないように注意しつつ別の巨人たちを盗み見た。
岩のような肌、霜のような髭、炎が舞い踊る髪……巨人と一言で言っても種類は様々な者がいるようだ。大きさも見た目も、あと知性の感じもかなり差異がありそうだ。すぐに昼休みに入ったのでそこまで詳しくは分析できていないが、例えば氷の巨人が型を作り炎の巨人が溶接し石の巨人が加工する……といった作業分担までしているようだった。
「エルヴィレッジにはいなかったもんなあ」
建築と言えば俺たちアローズのクラブハウスも最近、建てられたモノではあるが作業員に巨人の姿はなかった筈だ。
森の中だし、そこまで大きな工事ではないし、何よりエルフの住居という繊細な創造物に巨人は不向きというのがあったのかもしれない。
あとこれは失礼な話、巨人たちはサッカードウをしない。なので俺は最初からこの種族の事が眼中になかった。彼女たちはサイズの違い故にまともな相手が――最少の巨人でさえトロールよりも大きいのだ――おらず、自分たちだけで行うにはチーム数や組織力の面で手が回らず……といった感じで流行るまでには至らなかったらしい。まあ仕方ないよね。
しかしながらいざ見てみるとこれは実に興味深い種族だ。あと実際にこうして工事でお世話にもなっている。社会見学の一環として分析する価値があるかもしれない。
とは言え食事の風景はもう十分だなあ。そして俺も腹が減っている。確か近くにカフェの様な店があったよな? 俺はそこでさっさと昼食を済ませて帰ってきてから改めて見学する事にした。
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