D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが

米俵猫太朗

文字の大きさ
241 / 700
第十四章

眠り姫

しおりを挟む

『くらっぷ・ゆあ・はんど! えぶばでい!』

 DJブースのノゾノゾさんが観客を煽り、手拍子と声援が巻き起こる中、アローズの高身長DFのルーナさんムルトさんクエンさん達がオークのゴール前へ入って行く。

『あー! ウルサいブヒ!』

『落ち着け! マーク再確認よ!』

 選手の配置が変わる為、守備の再構築が必要だが、騒音の中とあってオーク代表も苦労している様子だった。

 もっとも、騒音というのは両チームに等しく降りかかるモノであり、CKのキッカー候補2名――コーナーにはダリオさんとアイラさんが立っている。ダリオさんならインスイングというゴールへ向かうボール、アイラさんならアウトスイングというGKから逃げるようなコースを蹴る筈だ――もピタリと身を寄せ耳打ちしないと相談もできない状態だ。

「ダリオさーん!」

 どうやらアイラさんがキッカーを務める事が決まり、ダリオさんが手前のペナルティエリア角あたりまで歩く。

「ダリオさーん!」

 審判さんが笛を吹き試合再開を促す中、俺は執拗に背番号10を呼び続けた。ようやく、彼女がこちらに気づきゴールに背を向けベンチの方を見て耳に手を当てる。

「スリープ、いけそうっすね!」

 俺がそう叫ぶ途中でアイラさんが助走に入り、ボールを蹴った。

『ブヒ!?』

 そのボールはオークDFが誰も予想していなかった選手、ダリオさんの足下へまっすぐ転がって行く。

『誰か行って!』

 CKに合わせようとしていたアローズの選手たちは全員がファーサイド、キッカーから遠い方へ集まっている。自ずと彼女たちをマークするオーク代表の選手達もその付近だ。まして、ベンチの指示を聞こうとしているニア側のダリオさんを気にかけているDFなど誰一人いなかった。

『遅い!』

 また当のダリオさんはまるでそのタイミングでその位置にボールが来るのが分かっていたかの様に――と言うのもわざとらしいな。俺の背後に立つナリンさんの合図で振り向いてアイラさんのパスを受け取るよう設計されていた――そのパスに歩幅を合わせ、ダイレクトでシュートを放った!

「よっしゃああああ!」

 俺は思わず両手を上げて絶叫する。ダリオさんのシュートは見事にオークGKの手の届かない、ゴール左上に突き刺さった。


「ショーキチ殿! やりましたであります!」

『なんと! 本当に決まるとわ……』

『スリープ、お主の言っていた通りじゃな!』

 俺は側にいたナリンさんとベンチから飛び出してきたザックコーチとジノリコーチに掴まれ激しく身体を揺さぶられる。

「いやあ、良いパスを出したアイラさんとシュートを決めたダリオさんが偉い……」

 ナリンさん以外の言葉は分からないが、おおよそ予想はつく。俺は彼らに答えようと口を開いたが、予想できていないのは選手達の行動の方だった。

『ショウキチ監督! やりました!』

 コーチ陣の方を向いて説明をしかけていた俺に、ゴールを決めて駆け寄ってきたダリオさんが勢いよく抱きついた。幸いにもオークに負けないミノタウロスの豪腕が支えていたので倒れはしなかったが、完全に身体をホールドされ無抵抗な状態になる。

『やったな! ってダリオ、おい!』

 そして追いついてきたティアさんたちも祝福の輪に加わろうとする眼前で、ダリオさんはその柔らかい唇を俺の唇に押しつけた。

「(ちょ! 重いですって!)」

 選手の頑張りに感極まった監督が贈る軽いキスなら俺も何度か見たことがあった。まあ殆どの場合、男同士だし頬にだけれど。しかしダリオさんのそれは唇同士だし何がとは言わないが入ってくるような接吻だった。

 しかも状況を分からない他の選手達がティアさんの後から飛びつき飛び乗り押しくら饅頭のようになって物理的にも重い。

「(へっ、ヘルプミー!)」

 助けを乞おうにも、もみくちゃの中から誰にどう伝えれば良いのか分からない。そもそも口も塞がれている。むろんその反面、選手達の身体で視線が遮られて俺とダリオさんのキスシーンは他者にはあまり見えてないと思うが……。

「ピピーッ!」

 笛が鳴った。やはり濃厚な口吸いが見られて教育的指導が入った!? と思ったがそうではない。過度なゴールセレブレーションを戒め、試合再開を促す審判さんの警告であった。

『みんな戻って下さい! まだ1点ですわ!』

 少し離れた所からムルトさんの声がして、ダリオさんが接続(何のやねん!)と抱擁を解き選手達も離れていく。会長にして会長――会計の長にして風紀委員会の会長……の様な存在――なムルトさんの声はやはり効くな。

『ではショウキチ監督、また』

 ダリオさんがウインクを一つ残して去る。それも含めて、ムルトさんには詳しくは見られていないようだった。良かった、彼女が目にしたら絶対に『破廉恥ですわ!』と大騒ぎだったろうしな。

「先制したけど気を抜かないで! 足を止めないで!」

『まだ油断しては駄目! 細かくステップを踏む事を忘れないで!』

 俺が戻っていく選手達に声をかけるとナリンさんが素早く通訳する。アイラさんがレイさんポリンさんと恐らくFKの球筋について話しながらポジションに戻り、ボナザさんがサポーターを煽る。

 ……良いチームになって、最高のスタートを切れたな。俺は目頭が熱くなるのを感じながら、改めてコーチ陣の一人一人と無言でグータッチを交わした。

 勝ちたい。このチームで絶対に勝ちたい。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

処理中です...