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第十五章
犬とナリンさんの躾
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気高き狼人間ガンス族はこの摩訶不思議なファンタジー世界においては比較的、理解し易い方の種族だ。彼ら彼女らは俺のいた世界でもファンタジーと言うよりはホラー映画の住人と認識されているかもしれず、それだけ馴染みがあるとも言える。
但し怪奇映画で活躍する親戚と違い、ガンス族は満月を見て強制的に変身したりはしないし、狼そのものの姿に変異したりはしない。オールウエイズ犬面人身、直立歩行するモフモフさんである。
ちなみにさっきから狼か犬かはっきりしないが、実の所はかなり犬寄りである。それも多種に渡る。ノトジアで出会った軍人さんはシェパードっぽい外見だったし、クラブハウス警備のロビーさんは柴犬だ。
そして性格は真面目で仲間想い。この『仲間』は同族に限らず職や使命を共にする相手も含むので、しばしば兵士や警備員として重宝される。
そんな彼女ら、サッカードウにおいては期待に違わず組織的かつアグレッシブだ。攻守において兎に角全員で走りまくる。
まあ組織的と評したもののそれはこの世界の基準では、で未熟だし付け入る隙はあるのだが。ただ彼女らには人間を遙かに越える身体能力がある。特に走行距離、スプリント回数は圧倒的だ。もしカタパルト――この世界だとつい城にある投石器を思い浮かべるがそれではない。選手が身につける事によって位置や速度を計測できるGPSウェアラブルセンサーのことだ――があって正確な数字が出せても、機器の誤作動を疑うレベルだ。チーム前田大然かよ。
何にせよそういうチームなのでやり方も今までと変えなければならない。何だかんだ言ってもここまではミノタウロスやオークと言った脳味噌まで筋肉みたいな脳筋タイプな――悪口失礼!――チームとの対戦が多かった。ドワーフは……まだ策を弄する、と言うか策に溺れたタイプだが、根本はパワータイプだ。
だが次のガンス族は運動量とスピードが武器だ。イメージで語るとあちらの攻勢をこちらが軽やかに回避しても、すぐに立て直して食らいついてくるだろう。なのでアローズとしてはただ避けるだけでなく、相手の勢いを逆手にとって……。
「ショーキチ殿、良いですか?」
そんな声が廊下から聞こえた。見るとナリンさん以下、コーチ陣が揃っている。考え込む間に気づけばもう、そんな時間になっていたらしい。
「ええ、行きましょう」
俺は資料をまとめて立ち上がり、ナリンさん達と一緒に作戦会議室へ向かった。
ミーティングルームは選手全員も入られる面積があるが、コーチ全員がそれぞれの資料を広げるとそれなりにいっぱいになった。既に次の次の対戦相手、インセクターの視察へ向かっているアカサオの二人がいないとは言え、ザックコーチやニャイアーコーチがデカいのだ。
「じゃあ日程の順番通りで行きますか。ナリンさんからお願いします」
繰り返しになるが練習スケジュールは前節の振り返り、戦術練習、対戦相手対策……の順だ。俺達はオーク戦の総括から始める事にした。
「はい」
ナリンさんが最初に議題として取り上げたのは後半、ペイトーン選手が退場した後の攻撃についてだ。失点シーン――厳密に言うとPKに繋がった反則の場面――ではない。人によっては意外に思うかもしれないが、個人のミス絡みの失点の場合はコーチとしてあまり大きく扱う事はない。何故ならミスした事は選手本人が誰よりも良く分かっているし、コーチ側としても
「今度はミスしないでね」
とお願いまたはお祈りする以外に出来ることもないのだ。強いて言えばチームとしてそのミスをカバー出来る可能性はあったか? そういうシステムを作れたか? などは考えるかもしれない。
それはそうとして。ナリンさんは選手が二名も退場してしまったオーク代表に対して、組織的な攻撃ができなかった事にやや不満そうであった。
「数的有利になっているのですから、もっとボールを大きく動かして守備が疎かになった地点から攻めるべきです。何より後半開始直後はそれができていました。ですが人数が減って却ってそれができないとは問題ではありませんか?」
そう言いながら彼女は魔法端末を操作し、ドリブルで密集へ飛び込み、レイさんとのワンツーのワンのパスを出そうとしてミスしたリストさんのプレーを表示させた。
「確かにな。しかしこういうプレーはリスト君の個性でもあるし」
「後ろの人数は足りておるんじゃから、多少の冒険は良いのではないか?」
サックコーチとジノリコーチが賛同しつつもリストさん側の発言をする。個を生かすタイプのミノタウロスはともかく、責任感の強いドワーフが変ナイトエルフを弁護するなんて随分と仲良くなったんだなあ。
「チャレンジはチャレンジとして認めます。しかしここは安易な道を選んだように見えるのです。ショーキチ殿はどう思いますか?」
ナリンさんはそう言うと俺の方を見た。なるほど、このストイックさがデイエルフだな。俺は3名の意見を良く吟味してから口を開いた。
但し怪奇映画で活躍する親戚と違い、ガンス族は満月を見て強制的に変身したりはしないし、狼そのものの姿に変異したりはしない。オールウエイズ犬面人身、直立歩行するモフモフさんである。
ちなみにさっきから狼か犬かはっきりしないが、実の所はかなり犬寄りである。それも多種に渡る。ノトジアで出会った軍人さんはシェパードっぽい外見だったし、クラブハウス警備のロビーさんは柴犬だ。
そして性格は真面目で仲間想い。この『仲間』は同族に限らず職や使命を共にする相手も含むので、しばしば兵士や警備員として重宝される。
そんな彼女ら、サッカードウにおいては期待に違わず組織的かつアグレッシブだ。攻守において兎に角全員で走りまくる。
まあ組織的と評したもののそれはこの世界の基準では、で未熟だし付け入る隙はあるのだが。ただ彼女らには人間を遙かに越える身体能力がある。特に走行距離、スプリント回数は圧倒的だ。もしカタパルト――この世界だとつい城にある投石器を思い浮かべるがそれではない。選手が身につける事によって位置や速度を計測できるGPSウェアラブルセンサーのことだ――があって正確な数字が出せても、機器の誤作動を疑うレベルだ。チーム前田大然かよ。
何にせよそういうチームなのでやり方も今までと変えなければならない。何だかんだ言ってもここまではミノタウロスやオークと言った脳味噌まで筋肉みたいな脳筋タイプな――悪口失礼!――チームとの対戦が多かった。ドワーフは……まだ策を弄する、と言うか策に溺れたタイプだが、根本はパワータイプだ。
だが次のガンス族は運動量とスピードが武器だ。イメージで語るとあちらの攻勢をこちらが軽やかに回避しても、すぐに立て直して食らいついてくるだろう。なのでアローズとしてはただ避けるだけでなく、相手の勢いを逆手にとって……。
「ショーキチ殿、良いですか?」
そんな声が廊下から聞こえた。見るとナリンさん以下、コーチ陣が揃っている。考え込む間に気づけばもう、そんな時間になっていたらしい。
「ええ、行きましょう」
俺は資料をまとめて立ち上がり、ナリンさん達と一緒に作戦会議室へ向かった。
ミーティングルームは選手全員も入られる面積があるが、コーチ全員がそれぞれの資料を広げるとそれなりにいっぱいになった。既に次の次の対戦相手、インセクターの視察へ向かっているアカサオの二人がいないとは言え、ザックコーチやニャイアーコーチがデカいのだ。
「じゃあ日程の順番通りで行きますか。ナリンさんからお願いします」
繰り返しになるが練習スケジュールは前節の振り返り、戦術練習、対戦相手対策……の順だ。俺達はオーク戦の総括から始める事にした。
「はい」
ナリンさんが最初に議題として取り上げたのは後半、ペイトーン選手が退場した後の攻撃についてだ。失点シーン――厳密に言うとPKに繋がった反則の場面――ではない。人によっては意外に思うかもしれないが、個人のミス絡みの失点の場合はコーチとしてあまり大きく扱う事はない。何故ならミスした事は選手本人が誰よりも良く分かっているし、コーチ側としても
「今度はミスしないでね」
とお願いまたはお祈りする以外に出来ることもないのだ。強いて言えばチームとしてそのミスをカバー出来る可能性はあったか? そういうシステムを作れたか? などは考えるかもしれない。
それはそうとして。ナリンさんは選手が二名も退場してしまったオーク代表に対して、組織的な攻撃ができなかった事にやや不満そうであった。
「数的有利になっているのですから、もっとボールを大きく動かして守備が疎かになった地点から攻めるべきです。何より後半開始直後はそれができていました。ですが人数が減って却ってそれができないとは問題ではありませんか?」
そう言いながら彼女は魔法端末を操作し、ドリブルで密集へ飛び込み、レイさんとのワンツーのワンのパスを出そうとしてミスしたリストさんのプレーを表示させた。
「確かにな。しかしこういうプレーはリスト君の個性でもあるし」
「後ろの人数は足りておるんじゃから、多少の冒険は良いのではないか?」
サックコーチとジノリコーチが賛同しつつもリストさん側の発言をする。個を生かすタイプのミノタウロスはともかく、責任感の強いドワーフが変ナイトエルフを弁護するなんて随分と仲良くなったんだなあ。
「チャレンジはチャレンジとして認めます。しかしここは安易な道を選んだように見えるのです。ショーキチ殿はどう思いますか?」
ナリンさんはそう言うと俺の方を見た。なるほど、このストイックさがデイエルフだな。俺は3名の意見を良く吟味してから口を開いた。
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