D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが

米俵猫太朗

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第十五章

話しづらいこと

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 ルーナさんの体調は思っていたより良くなっており、ベッドの上ではあるが身を起こして話せるまでに回復していた。
「外、うるさくなかった? ごめんね」
「大丈夫、馴れてる」
 否定しないという事はうるさかったという事だ。ルーナさんらしい回答に苦笑しつつ室内とドアの方を見る。
「ナリン、外で良いの? 言葉分からないし平気じゃない?」
 俺の視線に気づいてルーナさんが問う。
「一応、念の為にね」
 俺とルーナさんは機密保持内緒ばなしの目的で日本語で話していた。しかもナリンさんにお願いして外に立っていて貰うという念の入りようだ。
「まあ、ナリンまで入ったら手狭だけど」
 ルーナさんはそう言ったが、意外な事にファンシーで可愛い部屋の中はかなり整頓されており、もう何名か入っても平気そうだった。
「それで話なんだけど……」
 もっともこれから話す内容はあまり平気なものではないのだが。
「体調不良ってやっぱり生理痛? 重い方?」
「うん」
 ルーナさんはあっさりと頷いた。

 女子スポーツと生理。これは非常に大きな問題でありながらあまり大っぴらに語られないテーマだ。と言うか少なくとも男の耳にはあまり入ってこない話題だ。
 ここで俺が月経の仕組みや苦しさを語っても仕方ないし本当の意味で理解できる訳もない。だがとりあえず毎月、体の一部を負傷し肉体精神両方にダメージを負いながら競技スポーツをする――いや実際は普通に生活することも――ことの大変さは受け止めなくてはいけない。
 男性であれば試合に向けて技術を高め、精神と肉体のコンディションを整えていけば良い。だが女性はそれに加えて「生理がどのようなタイミングで始まるか」を考えねばならないのだ。
 昔の、根性論と男性的マッチョ感が横行していた時代のスポーツであれば、「気合いで時期をずらせる」とか「いっそ機能しないまでに練習して体を追い込む」などの手段もあったらしい。あるいはその状態が急に始まったまま競技を行い、血をにじませながら走る……というショッキングな映像がお茶の間に流れた事もある。
 もちろん、現代でそのような仕打ちができる筈もないし俺だって絶対にしたくない。と言うか万が一しようと思っても不可能なのだ。
 何故なら……エルフの生理は人間とは異なっているから。彼女らは確かに肉体を持ち人間と同じような行為を経て生殖するものの、精神的な繋がりと意志を持たない限りその状態にならない。
 つまり人間の様に肉体がある程度成長したら自動的にスタンバイになり使用されなければ――痛みを持った――廃棄を行う……という訳ではないらしいのだ。ちなみにその状態になるのを「愛の季節になる」とか言うらしい。えらいロマンチックやな。さすがファンタジー世界の住人。
 ところでさっきから「らしいらしい」と続けているが、それはこの周辺の話がほぼ聞き齧りであるからだ。スワッグやステフの茶飲み話のついでに、である。
 さて。そんな事情であるから、俺は女子チームの監督でありながらそういう事象と無縁でいられた。が、何事にも例外というもののがあるものである。それが目の前にいるルーナさん。半分エルフ、半分人間の女の子であった。

「そっか。答え難い事を幾つか聞くから、言いたくなかったらそっぽを向いたり手を振ったりしてね? 良い?」
「いいよ」
 俺は事情を察した時から考えてきた幾つかの質問を彼女に投げかける事にした。
「始まったのは今日の練習中?」
「うん。予感あったけど練習くらいはいけると思った。ごめん」
「いや謝らなくて良いから!」
 俺は慌ててルーナさんの謝罪を止めた。予感か……。もしかしたら昨日『マンデー・ナイト・フットボール』を観る時に彼女が言った
「始まりそう」
ってそっちの意味だったのかな?
「痛みを軽減する処置はできてる?」
「一応、治療士に術をお願いしたけど……」
 あまり有効でない、とその顔は物語っていた。それを見て俺は質問の順番を変える事にする。
「生理のこと、誰に言ってどれくらい理解されてる? その、ご両親も含めて、てのと何時から、てのを含めて」
「ママ、パパ、シャマーと治療士の何人か……。初めての時、ママは分からなくてパニックになって、パパが教えてくれたけどパパもあまり分かってなくて……」
 ルーナさんはそう言いつつ顔を伏せ前髪で目を隠した。隠したが、その双眸に涙が浮かんでいるのが見えて、俺は身を乗り出して彼女の頭を抱きかかえた。
「あーごめんごめん、イヤな事を聞いてごめんね。パパも分かってあげられなくてごめんね。責めたいけど責められなくて、責めてもどうしようもなくて辛かったよね……」
 合っているかどうなのか、自分でも分からない言葉を呟きながらルーナさんの肩と頭をポンポンと叩く。彼女の返事は俺の肩に口を押しつけても漏れる嗚咽の叫びと大粒の涙だった。
 俺は俺で、俺よりかなり年上の男性っぽいクラマさんに理解を求めるのは酷であろう、という気持ちとやはり子供を作ってその子の体質が人間に近いのであれば自分がもっと責任持って面倒みなきゃ駄目でしょ? って気持ちの両方が脳裏でぐるぐると回っていた。
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