D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが

米俵猫太朗

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第十七章

癒着のプロセス

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 俺たちはテレポートの魔法で移動したので実感は無いがインセクターの首都『チャプター』はそこそこマニアックな地理にあるらしく、報道陣も少なく練習後の囲みの取材などはかなりあっさりと済んだ。
 それは宿舎へ帰っても同じで余計な儀式や妨害なども一切、無い。地球のタフな国容赦ないなら表で車のクラクションを鳴らして大騒ぎするとか、ホテルの隣の部屋を借りて一晩中、エッチの声を聞かせて寝られなくするとかサポーターも色々やってくるらしいのだが……。
 いや、遭遇したい訳じゃないよ? ただ、そうなったら選手が大変だったろうな~と。こういった部分、ドワーフ戦の時も思ったが変な所がフェアで変な所がアンフェアなんだよな。
 まあ何にせよトラブルが無いのは良い事だ。俺たちは万全の状態で、試合を迎える事となった。

「カントク! コーチモケンコウソデ!」
 時間は試合開始1時間前まで飛ぶ。昨日と同じく俺たちは専用通路でスタジアム入りし、スタッフ陣は運営、選手はウォーミングアップとそれぞれ試合へ向けて準備をしていた。
 例によって手慣れた協会のみなさん――今日は主催がインセクターなのでエルフやドワーフよりも更に事務的かつ効率重視だった――の邪魔をしないように立ち回っていた俺は、早々にナリンさんを連れてピッチのチェックに入った。
 観客席は既にまあまあ埋まっていて、その主な構成員はもちろんインセクターだ。色も形状も様々な人間大の昆虫の群れ、となるとかなりセンシティブな気持ち悪い光景ではあるが、一部だけ心安らぐスペースがある。アローズサポーターが陣取るアウェイゴール裏である。そこで俺は彼の声を聞いたのだ。
「こんにちは、ジャックスさん!」
「カントク! キョウハダイジナサンガ、カカッテマスネ!」
 ジャックスさん――例の熱烈なサポーターでありエルフの国民的名優さん……の息子さん――はそのゴール裏から、猛勉強中の日本語で必死に話しかけてきた。
「はい! はい? 『ダイジナサンガ』? って何だろう?」
 勢いに飲まれて返事したものの、途中に意味不明の単語が入ってきた。大事なサンガ……京都サンガの事ではないよな?
「ワカラナイ? サン、サンレン……」
「3連単? 勝馬投票券でも買ってるんすか!?」
 この世界に競馬あったっけ? それともtotoか? いずれにせよ本格的なギャンブラーさんだ。他人事ならぬ他エルフ事だが、アローズの応援に入れ込んで報道陣すら少ないアウェイまで来てる上にギャンブル……親の心労は如何ほどのものか……。
「3連勝ではないでありますか?」
「ソウ、ソウレ! サンレンショウネ!」
 コミュニケーションに悩む俺たちにナリンさんが助け船を出し、ジャックスさんが勢いよく頷いた。
「ああ、3連勝っすか! いやあ……」
 連勝だどうだではなく目の前の試合に集中し勝ち点3を積み上げていくだけですよ、みたいな模範解答を言いかけて今さっきの俺たちを思い出した。駄目だ、通じなくて混乱するだけだ。
「頑張ります! 応援よろしくお願いします!」
「ハイ、マカセテネー!」
 俺たちはそう言って笑顔でハイタッチを交わして別れた。どう見ても『癒着しているサポーターに威勢の良い事を言う監督』ですありがとうございます、と心の中でネットミームを呟く間にも場内にアナウンスが流れ、選手が入ってきた。
 これからピッチでのウォーミングアップだ。俺はナリンさんに背後を任せいつもの仕事を果たしに行った。

 選手入場に際してブーイング等は一切、無かった。そもそも俺とナリンさんがピッチを確認しながら周回している時だって反応は無かったのだ。いやあのセンシティブな光景からブーイングが放たれたらかなり怖いけどさ。
「さてさて……」
 俺はまたセンターサークルのこちら側に仁王立ちになり、あちら側で体を動かすインセクターさん達を睨みつける。
 そもそも人間やエルフの様な恒温生物と違う昆虫人間に、筋肉や心肺機能を上げるアップって必要なんだっけ? と思いながら眺めるが、インセクターさんは地球のサッカーでもやるような柔軟や準備体操、簡単なボール回しを行っている。
 これはこれで彼女らにも意味があるのか、或いはクラマさんから持ち込まれたサッカードウのアレコレを盲目的に行っているだけなのか、俺には分からない。
 まあもっと分からないのはインセクターさんの表情や調子だけどね! オークさんたちは明らかに動揺してたしガンス族さんたちは見るからにテンションが低いのが見て取れた。しかしどう頑張っても昆虫の繊細な機微を感じ取る事は出来ない。
「こりゃ意味無かったか。今回はウチの方を見ようかな……うっ!?」
 そう呟き踵を返しかけた俺の背に、悪寒の様なモノが走った。
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