D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが

米俵猫太朗

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第十七章

瞬きしないで

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 改めて。前半33分1-0で試合は再開された。アローズ、インセクターと立て続けに二つのゴールが審判によって取り消され普通はブーイングものであるが、例によって観衆の大半を占める虫さんたちは静かに試合を見守っている。
「うん、なるほど」
 一方、俺の方も静かに状況を分析していた。見ているのは先程ナリンさんとダリオさんから聞いたバックドアの部分だ。配置としてはオーバーロード作戦は引き続き行われている。故に選手は殆どが右サイドに集合し、ただ一名ダリオさんだけが左サイドに孤立して右SBの隙を伺っていた。
「やっぱり無いわ」
 しかし、である。インセクターの右SBにはその『隙』が無かった。一般的にDFはマークする選手とボールをしっかり注視し、相手と自陣ゴールを結んだ線の間に立つものである。とは言え決定的なパスやシュートが行われたりする瞬間はどうしてもボールに目が行き――しばしば『ボールウォッチャーになる』と言われる状態だ。変な言い方だよね。普通選手は殆どの時間、ボールも見てるんだから――マーク対象を見失ってしまう。
 だがインセクターの右SBにはボールウォッチャーになってしまう瞬間が無かった。どれだけ逆サイドでボールが動こうとも、ダリオさんが細かくステップを刻み急な方向転換をしようとも、インセクターの右SBは彼女を決して見失うようなそぶりをみせない。
「ダリオの言う通りでありますね……」
 ナリンさんも同意して呟く。オバロ作戦が発動してからずっとダリオさんは静かな駆け引きを続けてきたが、一度も裏を取れなかったらしい。
「結果としてはパスが廻って来ませんでしたが、恐らく来たとしても全くイケませんでしたわ」
との事だ。
 あんな美しい女性にイケませんでしたわ、と言われるとは男として全く面目ない情けない。ついで言うと試合中に心の中でそんな下ネタを考えてるという部分も面目ない。
「まあ仕方ないっすよ。あの選手相手じゃ」
 一方、あの右SBの面には目がありまくるのだ。
「だって複眼がついてますもん」
 俺は蜻蛉の様な見た目をした右SBを睨みながらナリンさんに解説を始めた。

 複眼とは空を飛ぶ昆虫等でよく見られるあの、無数の小さな目が集合して一つの大きな目になっているアレの事である。その小さな目の数は1万個以上でマルチカメラとして機能し後方の一部以外の全てをカバーするという。それを使って獲物となる小さな虫を探すそうだ。
 それが、恐らくあのSBにはついてる。たぶん左SBにも。遠目に見れば大きな目がついてるだけでプリとかショート動画アプリで目を加工し過ぎたギャルにも見えるが――嘘です見えません――近くでしっかり確認すれば小さな目の集合体が見える筈だ。
 兎も角、そんな複眼を持つSBに対して裏を取るとか隙をつくとかは至難の技だ。

「なるほど。ミノタウロスと我々では目の位置が違う、という話とも似ているでありますね」
「ええ。アレを更に極端にしたと言うか、或いは上位互換と言えるかもしれません」
 俺たちは懐かしのミノタウロス戦、昨シーズン最終節の試合の事を話題にした。エルフがサイドから送るクロスが悉く跳ね返される原因の一つはミノタウロスの目が横にあるから……という例の話だ。
 じゃあ上位互換ならインセクターもあの蜻蛉SBをCBに置いてはどうか? と言うとそう単純な話でもない。残念ながらあの細い体では屈強なFWを押さえ込むのは到底不可能だし、ヘディングもあの頭部ではかなり困難だ。また上下運動を苦にしない運動量と走力を無駄にする事にもなる。恐らくそういった事を考慮してあの蜻蛉型インセクターをSBに置いているのであろう。
 余談だがそれは他のポジションとインセクターにも言える。体が強く捉えた相手を離さないクワガタをCBに、蜻蛉と同じく周囲が見れて運動量豊富な蜂をIHに、線は細いが瞬発力のあるバッタをWGに。多様な個性を把握し適材適所に配置。どうやらあのチームの長は相当、頭が切れる。
「ま、それくらいの方が相手としてやりがいがあるかな」
 俺はジノリコーチから聞いた『インセクター戦は選手を駒にしたボードゲームの様だ』というポビッチ監督の言葉を思い出しながら呟いた。
「じゃあ俺の次の一手を披露しましょう。ナリンさん……」
 俺は作戦ボードを取り出し、用意していたある手を指示した。
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