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第十七章
エルフの準備とインセクターの用意
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「前半、苦しい展開だけどよく同点に追いついてくれた。特にティアさんとユイノさん、ミスがあってもそれを引きずらず奮闘してくれたね。皆も彼女たちを見習って、リバウンドメンタリティで!」
着替えが終わって入った所でまず俺は前半を総括した。
「ミス? なんだっけ?」
「そんなのあったかなー」
ティアさんとユイノさんは頭上にはてなマークを浮かべてそう応える。前言撤回、彼女たちの真似は無理です。
「はい、それはそれで! 相手は表情に出ないし何をしてくるか分からないけど、こちらがやる事は変わらないから。冷静にフォローし合える距離を考えて、熱い気持ちでボールに全てをぶつけて! 技術もサッカードウに賭けるパッションも絶対に君たちの方が上だから! やれるね?」
「「はい!」」
呼びかけに、選手達は熱い声で応えた。別に闘争心が全てではないが、インセクターの様にまったく感情が読めない相手と試合をしているとどうにも調子が出にくい場合がある。俺は戦術よりハートに訴えかけるスピーチをして、キャプテンに場を譲った。
「えー前半、私もミスしたけどショーちゃん庇ってくれませんでしたー」
「なっ!?」
円陣を組んで早々に、シャマーさんが恨みがましそうに言った。恐らく失点シーンの事だろう。
「あ、本当なのだ!」
「冷たい男だにゃん!」
アイラさんマイラさんもそれに追従する。
「いや、アレはユイノさんとまとめて言ったつもりというか……」
「キャプテン、寂しくて泣きそうですー」
嘘付けそんなエルフか! と思ったが言及しなかったのは事実だ。
「それはその、ごめ……」
「私はこの寂しさをプレーでインセクターへぶつけます! みんなも、自分の中の気持ちを、どんな種類のモノでも良いから沸き立たせて出そう! 3、2、1、『気持ち』で行くよ? 3、2、1……」
「「気持ち!」」
俺が謝る間も無くシャマーさんが言葉を続け、俺以外の全員が声を合わせた。
「ベンチも声を出すので! あとインセクターのシステム変更に併せて指示を出すのでベンチの声も聞いて!」
ナリンさんがそう声を張り上げつつ、出て行く選手の背中をバンバンと叩いて送る。
「あーシャマーさん……。あの、その……」
「大丈夫! ただの冗談じゃよ」
ジノリコーチは一時、ロッカールームへ持ち帰っていた台の上から降りながら呟く。
「だと良いのですが」
俺はため息を吐きながら呟く。女性の集団を率いる上で『公平感』というのは非常に重要で、今の『庇う』だけではなく『注意する』というのですら配分を考えないと、
「あの子ばかり指導されてズルい」
という声が上がったりするくらいなのだ。
その辺り、十分に気を使っていた筈なんだけどなあ。相手がシャマーさんだと、つい抜けてしまうな……。
「それよりもそいつ、頼むぞ?」
ジノリコーチは台を指さし部屋を出て行く。
「え? また俺!?」
と周りを見渡すも、中にはもう俺しかいない。
「ってグズグズしている時間は無かった!」
ベンチへ戻ってする仕事もあるし、いつまでもエルフのいない更衣室に残っていると何を言われたものか知ったもんじゃない!
「これもうちょっと軽いのに交換できないかな」
俺はジノリコーチ乗り台、通称ジノリ台――いま名付けた――を抱えながらコンコースへ向かって行った……。
「来たか……」
後半開始早々、インセクターはフォーメーションを変えてきた。スタートの1433から3TOPの両WGが中盤に降りIHと並ぶ14141の形だ。
「来ました。堅そうでありますね……」
ナリンさんが同意して呟く。一般的にサッカーである横幅を守るには4人必要とされており、その人数が揃ったラインが2本。そしてその隙間を埋めるボランチと最前線に残るFWがそれぞれ1名。攻撃面では苦しいが、ゾーンDFにおいては最も守備が安定すると考えられているシステムで正直、俺たちも練習している並び方だ。
だがそれを、先に相手に披露されるとは思ってもみなかった。
『まだ同点の状態でアレをしてくるとはのう! ま、それだけワシらのオーバーロードを恐れているということじゃな!』
ジノリコーチは何やら嬉しげに話しながら作戦ボードをあれこれと動かしている。
「ジノリコーチはインセクターの弱気の現れ、と推測されているでありますが」
ナリンさんはジノリコーチの言葉を伝えてくれたが、完全に同意しているという訳ではなさそうだった。
「弱気は別にして、中盤の数を同数にして数的不利を解消して、かつエリアを効率的にカバーして守備の安定を図る、というのは理に適っています」
そう返答しつつ、俺自身もやや腑に落ちない感覚を覚えていた。インセクターの有利な点はメンタルに左右されない所、意思伝達が完璧で試合中でも柔軟に立ち位置を変更しシステムの噛み合わせで優位に立つ所である。
だが今回は精神的に受け身な変更であるし、しかも後半開始からという極めて分かり易いタイミングでの変化だ。全く彼女等らしくない。
『決めにかかるなら、これでどうじゃ!』
ジノリコーチは遂に手を止めて作戦ボードを俺たちに見せた。
着替えが終わって入った所でまず俺は前半を総括した。
「ミス? なんだっけ?」
「そんなのあったかなー」
ティアさんとユイノさんは頭上にはてなマークを浮かべてそう応える。前言撤回、彼女たちの真似は無理です。
「はい、それはそれで! 相手は表情に出ないし何をしてくるか分からないけど、こちらがやる事は変わらないから。冷静にフォローし合える距離を考えて、熱い気持ちでボールに全てをぶつけて! 技術もサッカードウに賭けるパッションも絶対に君たちの方が上だから! やれるね?」
「「はい!」」
呼びかけに、選手達は熱い声で応えた。別に闘争心が全てではないが、インセクターの様にまったく感情が読めない相手と試合をしているとどうにも調子が出にくい場合がある。俺は戦術よりハートに訴えかけるスピーチをして、キャプテンに場を譲った。
「えー前半、私もミスしたけどショーちゃん庇ってくれませんでしたー」
「なっ!?」
円陣を組んで早々に、シャマーさんが恨みがましそうに言った。恐らく失点シーンの事だろう。
「あ、本当なのだ!」
「冷たい男だにゃん!」
アイラさんマイラさんもそれに追従する。
「いや、アレはユイノさんとまとめて言ったつもりというか……」
「キャプテン、寂しくて泣きそうですー」
嘘付けそんなエルフか! と思ったが言及しなかったのは事実だ。
「それはその、ごめ……」
「私はこの寂しさをプレーでインセクターへぶつけます! みんなも、自分の中の気持ちを、どんな種類のモノでも良いから沸き立たせて出そう! 3、2、1、『気持ち』で行くよ? 3、2、1……」
「「気持ち!」」
俺が謝る間も無くシャマーさんが言葉を続け、俺以外の全員が声を合わせた。
「ベンチも声を出すので! あとインセクターのシステム変更に併せて指示を出すのでベンチの声も聞いて!」
ナリンさんがそう声を張り上げつつ、出て行く選手の背中をバンバンと叩いて送る。
「あーシャマーさん……。あの、その……」
「大丈夫! ただの冗談じゃよ」
ジノリコーチは一時、ロッカールームへ持ち帰っていた台の上から降りながら呟く。
「だと良いのですが」
俺はため息を吐きながら呟く。女性の集団を率いる上で『公平感』というのは非常に重要で、今の『庇う』だけではなく『注意する』というのですら配分を考えないと、
「あの子ばかり指導されてズルい」
という声が上がったりするくらいなのだ。
その辺り、十分に気を使っていた筈なんだけどなあ。相手がシャマーさんだと、つい抜けてしまうな……。
「それよりもそいつ、頼むぞ?」
ジノリコーチは台を指さし部屋を出て行く。
「え? また俺!?」
と周りを見渡すも、中にはもう俺しかいない。
「ってグズグズしている時間は無かった!」
ベンチへ戻ってする仕事もあるし、いつまでもエルフのいない更衣室に残っていると何を言われたものか知ったもんじゃない!
「これもうちょっと軽いのに交換できないかな」
俺はジノリコーチ乗り台、通称ジノリ台――いま名付けた――を抱えながらコンコースへ向かって行った……。
「来たか……」
後半開始早々、インセクターはフォーメーションを変えてきた。スタートの1433から3TOPの両WGが中盤に降りIHと並ぶ14141の形だ。
「来ました。堅そうでありますね……」
ナリンさんが同意して呟く。一般的にサッカーである横幅を守るには4人必要とされており、その人数が揃ったラインが2本。そしてその隙間を埋めるボランチと最前線に残るFWがそれぞれ1名。攻撃面では苦しいが、ゾーンDFにおいては最も守備が安定すると考えられているシステムで正直、俺たちも練習している並び方だ。
だがそれを、先に相手に披露されるとは思ってもみなかった。
『まだ同点の状態でアレをしてくるとはのう! ま、それだけワシらのオーバーロードを恐れているということじゃな!』
ジノリコーチは何やら嬉しげに話しながら作戦ボードをあれこれと動かしている。
「ジノリコーチはインセクターの弱気の現れ、と推測されているでありますが」
ナリンさんはジノリコーチの言葉を伝えてくれたが、完全に同意しているという訳ではなさそうだった。
「弱気は別にして、中盤の数を同数にして数的不利を解消して、かつエリアを効率的にカバーして守備の安定を図る、というのは理に適っています」
そう返答しつつ、俺自身もやや腑に落ちない感覚を覚えていた。インセクターの有利な点はメンタルに左右されない所、意思伝達が完璧で試合中でも柔軟に立ち位置を変更しシステムの噛み合わせで優位に立つ所である。
だが今回は精神的に受け身な変更であるし、しかも後半開始からという極めて分かり易いタイミングでの変化だ。全く彼女等らしくない。
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