D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが

米俵猫太朗

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第十八章

いたちごっことコピーキャット

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 状況はキックオフ直後なので分かり易かった。と言うか観戦においてもこの時間帯は非常に大事である。両者がまだ入り乱れておらずスタートポジションにいるから配置や意図を読みとり易いからだ。
 まずアローズ側。ムルトさんの負傷は大した事がなく、弾け飛ぶ際にベルトの端が瞼を強打しただけらしかった。今はシノメさんに借りた彼女のスポーツ眼鏡をつけてプレイを続行し――眼鏡の度や頭の形的なモノは大丈夫だったのだろうか――5バックの真ん中へ入っている。
 その5バックは左からマイラ、ガニア、ムルト、シャマー、ティアという並び。左SBは突破力よりもボール保持を優先してアイラさんよりマイラさん、中央は得点を上げたCFと噛み合うのでシャマーさんではなくガニアさん、というのがコーチ陣の判断らしい。
 あと前方はアイラ、ダリオ、クエン、リストの4枚がフラットに並び、1TOPはリーシャさん。DFとMFで5-4のブロックを形成ししっかり守り、カウンターは若武者リーシャさんのスピードにかける……という目論見だろう。
「まあこれなら崩れはしないな……」
 俺はそう呟きながら、今度はインセクター側を見る。こちらのキックオフを見て1325を貫くほどボクシー女王は馬鹿ではない。今は再び14141に戻って守備の構えだ。
 つまりどちらも守備の構え。硬直状態だ。問題は1点リードしたインセクターにとって硬直状態は望む所である点。では強引にでも事態を変えよう……とアローズが動いたなら、また1325に変形して攻めてくるであろう点だった。
「いやらしい虫だな……」
 別に女王の姿形のことではない。いやエッチだけど。今の硬直状態を受け入れて時間を減らすか、攻撃に出てまた4バック殺しを喰らうか、という2択を突きつけてくるやり方を言っているのである。
「ショーキチ殿、お帰りなさいであります! ムルトの眼鏡ですが……」 
 俺に気づいたナリンさんが吹き飛ばされたムルトさんの眼鏡を持ってきた。割れてはいないが、ピッチの外まで飛ばされた際にレンズ部分にかなりの擦り傷ができている。これではバンドを直しても再利用は不可能だろう。
「うわ、ひでえ」
 普段、眼鏡に指紋がついただけでもかなりテンションが下がるものだ。それなのにこれにはびっしり傷が入っている。もう最悪だ。
「今つけているのはシノメさんのモノですか?」
「はい、そうであります! シノメが素早く調整したであります」
「度とかサイズ感って……」
「それが彼女たちの頭部は瓜二つと言っても良いほどでありまして……」 
ほうほう。やっぱ同じ会計事務していると似るものなんかな? いやそんな訳ないか。
「瓜二つ、かー」
 俺は頭をかきながらピッチを眺めた。現状のアローズは安全重視で5バックを継続し、全く攻めれないでいる。ベンチから何らかの助けが必要だ。
「やるしかない、よな」
 ある作戦が思い浮かんではいる。だがプライドとか悔しさとかで少し踏ん切りがつかないでいた。しかし『瓜二つ』というキーワードをナリンさんから聞いてしまった。これも何かの天啓だろう。
「ナリンさん。システムを変更して、とりあえず1点返しますよ!」
「は、はいであります!」
「ルーナさんとエルエルとタッキを呼んで下さい。あとジノリコーチも!」

『つまり……相手と全く同じにするのじゃな?』
「インセクターのコピーをするのかと?」
「ええ。ミラーゲームって言うんですけどね」
 俺が作戦ボードを使って説明すると、ジノリコーチは低く唸ってから聞いてきた。
「可変1325の弱点は二つ。一つは変形する時のタイムラグや移動距離ですが、これはインセクターにはあまりない」
 何故なら彼女たちはおそらく、フェロモンやらなんやら特殊な手段で意思統一を行っておりそこに遅延やミスが無いからだ。
「もう一つは個人の能力、です。もし同じ並びで完全に個人が1vs1に負けたら、なまじそれぞれに担当が決まっているだけにカバーがしにくい」
 1325の守備は基本、フルコートのマンツーマンに近い。だから誰かのカバーをするということは、自分がマークする相手を捨てることになる。
「特にサイド、です」
 なんだかんだ言っても中央はケンドール選手が締めている。彼女なら自分のマークを捨てる時の判断も正確だろうし、守備に成功し攻撃に転じたなら1発のロングパスがある。だから大事なのはサイドなのだ。
『それでこいつらか!』
「来たであります!」
 ジノリコーチとナリンさんの声で交代選手達がウォーミングアップを終えてベンチ前へ来た事に気づく。
「ルーナさん、エルエル、君たちの仕事は一つ。とにかく対面のSBとの勝負。攻めて攻めて攻めまくれ!」
『エルエル、私たちは火矢だよ。相手を焼き尽くす為のね。その為に呼ばれた』
『奴らは顔には出ておらぬが、前半からリーシャとティアを相手にしておったんじゃ。疲れはある!』
 言葉をルーナさんが通訳しジノリコーチも何か言い添えている間に、ナリンさんと俺は独特のストレッチをしている最後の1名に近づいた。
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