D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが

米俵猫太朗

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第二十章

ゴブリンロックロード

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 一晩あけて翌日。試合へ挑む俺達は、馬車に激しく揺られながらフィフティフィフティスタジアムへ向かっていた。
「ショー、ちゃんが、さ。馬車、の中でス、ピーチしろとか、言わなく、てよかった、わ」
 激しい揺れで何度も言葉を切らしながら後ろの席のシャマーさんが言った。
「万、が一、舌を噛ん、で怪我したら労、災、が出ますよ」
 俺も安全用に張り巡らされた梁のようなバーを握りつつ、同じように応える。
「ロウ、サイ?」
「選、手が怪、我した時に、チームか、ら出す見、舞金みたいな、も、の、です」
 そりゃサッカードウ選手は……いやこの世界の知的生命体達は知らないよな。俺は労働衛生とか全く知らなそうな車内を眺め回しながら、そんな事を考えていた。

 俺達がゴブリンサッカードウ協会から移動用にあてがわれたのは、鉱山の鉱石を大量に運ぶ為の大型の馬車を改造したもの、及びそれ用のルートだった。
 馬車は今回の遠征メンバー全員――もちろん、途中離脱したマイラさんを除く。今思えば旅館の温泉が割と良かったので、あのお婆さんマイラさんも連れてくれば良かった――が乗れる巨大さと頑丈さで、馬車と名目上言ったが実際に曳いているのは例の巨大灰色狼たちだ。
 また道もその馬車用の轍が刻まれた専用道路で一般ゴブリンの立ち入りは禁止されているゾーンだ。なぜそんな大事になっているか? と言うとそれは全て熱狂的なゴブリンサポーター対策の為である。
 前も触れたがゴブリンの間でサッカードウの人気は凄まじい。『する』ものとして草サッカードウが盛んだが『みる』ものとしても大人気で、代表チームのリーグ戦ともなるとスタジアムやそこへ連なる道中にお祭り騒ぎのゴブリンが集まる。
 そう、スタジアムへの道に、だ。彼ら彼女らは試合へ向かう我らが代表チームに声援を送り、対戦チームへブーイングを送る為に道の両脇にゴブリン垣人垣を作り大音量で盛り上がるのだ。
 その迫力と言えばまさにカーニバルのよう。その張り裂けんばかりのキイキイ声だけでなく、色とりどりの布、紙、食べ物、石、ゴブリン本体……などが敵味方関係なく飛び交う。
 敵味方関係なく、なのは彼ら彼女らがあまり声援とブーイングの区別がついていないというか、相手チームに対してもそこまで敵意をぶつけてこないというか、ともかく熱くなれれば良い連中だからだ。
 こういった性質はエルフに対して敵愾心むき出しのドワーフとは違うし、同じファンタジーの小物悪役であるオークとも違う。オークなんか性的恐怖すら感じたからね!
 それはともかく。敵意悪意の少ないブーイングとは言え、飛んでくる石やゴブリンが物理的な脅威である事には違いはない。故に試合を行うチームはホームアウェイとも頑丈な防壁のある馬車に乗り馬よりずっとタフな灰色狼にそれを曳かれ、サポーターが近づけないルートを使って会場入りするのだ。
 そういった面から移動が安全重視で、快適さが二の次三の次になってしまうのも致し方ないといった所かもね……。

「ふーん。わ、たしは見舞、金より、怪、我のケ、アをし、て欲しいな」 

 シャマーさんはあまり興味なさそうに言った。
「も、ちろん負傷、の治療はしま、すよ」
 と言うかあまり長く話していると本当に舌を噛んで負傷しそうだ。
「そんなオ、オゴトじゃな、いけどねー。唾、でもつけて、おけ、ば治るか、ら。ね、唾つけて?」
 そう言うと悪戯娘は身を乗り出し
「んべ」
と舌を突き出してきた。
「なっ何、を怪、我して、ないでしょ!」
 この世界でも傷に唾とか言うんだ!? とか口からちょろっと出たピンクの舌がなんだかエッチだ! とか混乱しながら俺は少し身を引いた。
「シャマー!」
 賢明にも、あまり言葉を紡がず一言の叱責とチョップでダリオさんがシャマーさんを席に戻す。
「ダリオ、良かったですね」
 俺の隣に座ったナリンさんも短い言葉で声をかけてくる。たぶん、
「ダリオさんをシャマーさんの隣に座らせておいて良かった」
くらいの意味だろう。全くその通りだ。
「良かったです」
 俺もようやくそれに倣って短く応えた。と、同時にもう一つ良かった事に気づく。
「(アレは気の迷いだったか)」
 先ほどのシャマーさん。可愛いな、とかエッチだな、とは思ったが、あの晩ほどの焦燥感と言うか動物的本能は感じなかった。
 彼女の事を襲いそうになったあの感覚……。状況が違うが、ひょっとしたらもうあんな危機は訪れないかもしれない。
「(強いて言えば……服装?)」
 半脱げ浴衣姿と見慣れたチームジャージ姿。圧倒的に差があるとしたらそこだ。
「(ああ、海外生活が長いと日本食が恋しくなるってやつ!)」
 冷静に考えればそうだ。俺は永い間、日本的なモノと離れている。それでノスタルジアとかそういうのが相まって、あんな気持ちになったのだ。たぶん。
「(今後は日本的な服装とか状況を避ければ良いんだな!)」
 対策が分かれば恐怖は半減する。そうだ、これからはそうしよう! と俺が決意し明るい気持ちになった所で、馬車は専用道を抜けスタジアムへ差し掛かった。
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