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第二十章
可愛くないJK
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「「ゴーブゴーブゴーブ!」」
ゴブリンサポーターの大音声がフィフティフィフティスタジアム内を木霊し、彼ら彼女らの頭上で色とりどりの布が回される。
「うわっ、すっげ」
揺れ動く色彩はまるでうねる巨大な竜の様だ。俺達の目は動くモノに気を取られ易く、それに集中すると数を誤認する。そんな理屈を分かっていても、今の俺にはゴブリンサポーターの数が実際よりも多く見えているだろう。
「はは。また俺なにかやっちゃいましたかー、だな」
2部でのゴブリン代表の試合映像は他チームと比べて多目に観ている。しかしその中で、このタオルマフラー回しはやっていなかった筈だ。いや観客席を中心に録画はされてはいないが、やってれば目に付くし。
つまりは……視察旅行で訪れた際に俺があの屋台で教えてしまったという事だ。それがここまで立派に育って、先生は嬉しいよ。
「いや嬉しいとか言ってる場合ちゃうし!」
敵に送った塩の味を鑑定している場合ではない。俺にはアカサオに貰ったデータを生で、本番ギリギリの時間まで検証する仕事がある。
俺は早速、文字通り相手陣ギリギリの位置に立ってゴブリンチームのアップを見る事にした。
『オ? にらめっこカ!? やるゾ!』
その動きに最も反応をしたのは選手でもサポーターでもなくカー監督だった。先程までベンチ前で選手を叱咤激励していた指揮官がダッシュで近寄り、ゴブリンチームをジロジロと見る俺の視線を遮るように肩をイカらせながら目の前に立つ。
『おイ、こっち見ろヨ! 勝負が成立しないだロ!』
ゴブリン代表監督は俺の前で背を伸ばしジャンプして視界に入ろうとした。だが残念ながら彼女の身長、身体能力では俺の障害にはならない。カー監督は選手でもあるのだがリーグでプレイするレベルにはやや足らず、最近選手登録はしたものの――クリン島での監督会議時にこっそり申請して通ったらしい。2部はともかく1部リーグだと昨シーズンのダリオさんみたいに選手兼監督の例もあるからね――ここまで出場はゼロだ。まあ目の前の動きを見ててもなんとなく分かる。
分かるが……ふと思い立って俺は数歩、後ろへ下がる。
『待テ、逃げんナ! 闘エ!』
その行為が更にゴブリンプレイングマネージャーの気に障ったようだ。彼女はピョンピョンと跳ねながら何かを叫んでいる。
「これはアレになるのかなあ」
俺は薄ら笑いを浮かべながら主な視線は何名かの選手を、周辺視野は別の動きを捉えていた。
「ピーッ! カー監督、下がりなさい!」
突如、大きな風と巨体から発せられる声が俺達監督2名を包む。
『はアッ!?』
驚く小鬼の視線の先には審判であるドラゴン――今日の担当はオスターダグと言う名のホワイトドラゴンさんだ――の姿があった。
「アップ時に相手チーム陣内へ理由無く入る事は禁止されています。イエローカードです」
『ノオオオ!』
どういう魔法か知らないが、ドラゴンの言葉は俺とカー監督の両方が理解できるモノで、俺は心の中で静かにガッツポーズを取り――因みにこういう時に見える形でそういうアクションを取ると巻き込まれイエローカードを貰う事もある。昔で言う非紳士的行為、今は非スポーツ的行為にあたるらしい――哀れなゴブリンは頭を抱え足下を見た。
間違いなくこっちの中へ入っている。ボールが入っちゃったので取りに、とか走った勢いで少しはみ出して、みたいな不可抗力ではなく。つまりドラゴンさん言うところの理由なく、で入っている。
ま、俺が誘導したんだけどね!
「貴方も褒められたモノではありませんからね! くれぐれも節度を失わないように!」
審判さんは俺にそう言い残して定位置であるスタジアム上部の台の所へ飛んでいった。次いでカー監督もトボトボと自陣ベンチ方面へ戻る。
ちょっと申し訳ないけど俺が狙った最高の、そして彼女にとっては最悪の結果ではないので許してくれ。
俺の目論見はジャッジキル、対戦型カードゲーム――昨日の『ゴブリン爆弾』というリストさんの単語が連想させた――で行われる所の
「相手に反則を犯させて審判の権限で失格させる戦法」
だったのだ。退場ではなくイエローカード一枚で済んだのでマシな方だと思って欲しい。
「選手登録もしてなきゃ仕掛けなかったんですけどねー」
監督が退場あるいはカードを貰うのも大事だが、選手が試合前にカードを貰うのも大変な損失だ。それがあまり出場する可能性のない控え選手だとしても。
正直、あまり例はないけどね。試合前なんて。ハーフタイムや試合後に選手が抗議したり暴れたりして、ならあるけど。
「なんて、どっちも勝手な言い分だな。あとは正々堂々とやるか」
あまりにもあくどいやり方だと他ならぬアローズの面々からの支持を受けられない。と言うかそろそろ中へ戻って指示を出す時間だ。俺は小さな勝利の余韻と自戒を胸に抱えながらロッカールームへ向かう事とした。
ゴブリンサポーターの大音声がフィフティフィフティスタジアム内を木霊し、彼ら彼女らの頭上で色とりどりの布が回される。
「うわっ、すっげ」
揺れ動く色彩はまるでうねる巨大な竜の様だ。俺達の目は動くモノに気を取られ易く、それに集中すると数を誤認する。そんな理屈を分かっていても、今の俺にはゴブリンサポーターの数が実際よりも多く見えているだろう。
「はは。また俺なにかやっちゃいましたかー、だな」
2部でのゴブリン代表の試合映像は他チームと比べて多目に観ている。しかしその中で、このタオルマフラー回しはやっていなかった筈だ。いや観客席を中心に録画はされてはいないが、やってれば目に付くし。
つまりは……視察旅行で訪れた際に俺があの屋台で教えてしまったという事だ。それがここまで立派に育って、先生は嬉しいよ。
「いや嬉しいとか言ってる場合ちゃうし!」
敵に送った塩の味を鑑定している場合ではない。俺にはアカサオに貰ったデータを生で、本番ギリギリの時間まで検証する仕事がある。
俺は早速、文字通り相手陣ギリギリの位置に立ってゴブリンチームのアップを見る事にした。
『オ? にらめっこカ!? やるゾ!』
その動きに最も反応をしたのは選手でもサポーターでもなくカー監督だった。先程までベンチ前で選手を叱咤激励していた指揮官がダッシュで近寄り、ゴブリンチームをジロジロと見る俺の視線を遮るように肩をイカらせながら目の前に立つ。
『おイ、こっち見ろヨ! 勝負が成立しないだロ!』
ゴブリン代表監督は俺の前で背を伸ばしジャンプして視界に入ろうとした。だが残念ながら彼女の身長、身体能力では俺の障害にはならない。カー監督は選手でもあるのだがリーグでプレイするレベルにはやや足らず、最近選手登録はしたものの――クリン島での監督会議時にこっそり申請して通ったらしい。2部はともかく1部リーグだと昨シーズンのダリオさんみたいに選手兼監督の例もあるからね――ここまで出場はゼロだ。まあ目の前の動きを見ててもなんとなく分かる。
分かるが……ふと思い立って俺は数歩、後ろへ下がる。
『待テ、逃げんナ! 闘エ!』
その行為が更にゴブリンプレイングマネージャーの気に障ったようだ。彼女はピョンピョンと跳ねながら何かを叫んでいる。
「これはアレになるのかなあ」
俺は薄ら笑いを浮かべながら主な視線は何名かの選手を、周辺視野は別の動きを捉えていた。
「ピーッ! カー監督、下がりなさい!」
突如、大きな風と巨体から発せられる声が俺達監督2名を包む。
『はアッ!?』
驚く小鬼の視線の先には審判であるドラゴン――今日の担当はオスターダグと言う名のホワイトドラゴンさんだ――の姿があった。
「アップ時に相手チーム陣内へ理由無く入る事は禁止されています。イエローカードです」
『ノオオオ!』
どういう魔法か知らないが、ドラゴンの言葉は俺とカー監督の両方が理解できるモノで、俺は心の中で静かにガッツポーズを取り――因みにこういう時に見える形でそういうアクションを取ると巻き込まれイエローカードを貰う事もある。昔で言う非紳士的行為、今は非スポーツ的行為にあたるらしい――哀れなゴブリンは頭を抱え足下を見た。
間違いなくこっちの中へ入っている。ボールが入っちゃったので取りに、とか走った勢いで少しはみ出して、みたいな不可抗力ではなく。つまりドラゴンさん言うところの理由なく、で入っている。
ま、俺が誘導したんだけどね!
「貴方も褒められたモノではありませんからね! くれぐれも節度を失わないように!」
審判さんは俺にそう言い残して定位置であるスタジアム上部の台の所へ飛んでいった。次いでカー監督もトボトボと自陣ベンチ方面へ戻る。
ちょっと申し訳ないけど俺が狙った最高の、そして彼女にとっては最悪の結果ではないので許してくれ。
俺の目論見はジャッジキル、対戦型カードゲーム――昨日の『ゴブリン爆弾』というリストさんの単語が連想させた――で行われる所の
「相手に反則を犯させて審判の権限で失格させる戦法」
だったのだ。退場ではなくイエローカード一枚で済んだのでマシな方だと思って欲しい。
「選手登録もしてなきゃ仕掛けなかったんですけどねー」
監督が退場あるいはカードを貰うのも大事だが、選手が試合前にカードを貰うのも大変な損失だ。それがあまり出場する可能性のない控え選手だとしても。
正直、あまり例はないけどね。試合前なんて。ハーフタイムや試合後に選手が抗議したり暴れたりして、ならあるけど。
「なんて、どっちも勝手な言い分だな。あとは正々堂々とやるか」
あまりにもあくどいやり方だと他ならぬアローズの面々からの支持を受けられない。と言うかそろそろ中へ戻って指示を出す時間だ。俺は小さな勝利の余韻と自戒を胸に抱えながらロッカールームへ向かう事とした。
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