D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが

米俵猫太朗

文字の大きさ
354 / 700
第二十章

愚かな指揮官と忠実な部下

しおりを挟む
『もうお前には騙されないからナ!』
「何もそんなに警戒しなくても……」
 俺は未だかつて、こんなに警戒心アリアリの監督同士の握手を見たことがなかった。
「どうせ試合ではボコボコにされるのに……」
『ああン! 何か言ったカ!』
 ロッカーを出て数分後。俺とカー監督はコンコース真ん中付近で少々、険悪な雰囲気を出しにらみ合っていたのだ。
『トケイ、アッテマスカ?』
『テーピング忘れてないー!』
 だが周囲はあまり気にしていないようだ。何せ今は試合直前。選手審判スタッフは慌ただしく動き回っている。馬鹿二名俺たちに構うよりは試合に集中したい気分なんだろう。
「カー監督みたいなベテランにとってはルーチンワークかもしれませんけど、俺にとっては初めての事ばかりなんです。少なくとも対戦チームが一巡する間くらいはじっくり楽しませて下さいよ」
『くソ! なんか馬鹿にされた感じはするゾ! 負けないからナ!』
 ゴブリン代表監督は俺の手を握ったまま、足をドシンドシンと踏みならした。
「まあ何にせよ良い勝負を!」
『ほえづらかくなヨ!』
 これはこっちは引かないと収拾がつかないだろう。俺は自分の方から握手を解いて敬意を表すると、自軍ベンチの方へ戻った。
「珍しく長く話し込んでおられましたね? 何を言っていたのでありますか?」
 俺が帰って来たのを見て、椅子に作戦ボードを設置していたナリンさんが問う。
「いやそれがさっぱり。やっぱゴブリン語ってチンプンカンプンですわ」
「じゃあ雰囲気だけで喋っていたのかよ!」
 唐突にステフが現れて突っ込んできた。てかお前、いたのかよ!
「雰囲気だけで悪いか? というかすみません、関係者以外一般の方は困るんですよねー」
 俺はそう言いながら彼女の背を押しコンコース方面から帰らせようとする。
「あ、すみません……って待て待て! 関係者! ちゃんとパスもある!」
 俺に押されて一瞬、流されそうになった小柄なダスクエルフは慌てて首から下げた札を見せた。
「それ、本物?」
「お前が出したヤツだろ! 『セキュリティ面で不安だ』って!」
 そうだった。それほど悪意や敵意が無いとは言えゴブリンサポーターは熱狂的、そしてフィフティフィフティスタジアムは老朽化の激しい建物だ。暴動だったり崩落だったりの危険性は否定できない。それで、念のためにステフをセキュリティスタッフとしてベンチ入りさせたのだ。
「ステフ殿がベンチにおられるのは初めてですね! 心強いです!」
「そうか? おう、任せておけ!」
 俺と違って人間が……エルフができているナリンさんが素早くフォローを行いステフが秒で機嫌を治した。
「さて……と。やることはやったか?」
 俺はエルフたちに心配をかけないよう、少し離れた所で独り言を吐いた。試合へ向けての準備は万全だ。それ以外の事も考慮に入れた。それでも何か説明のしようが無い不安が残っていた。
「体調不良でも引きずってるだけか! 気にしない!」
 ダメダメ! 勝負の前に縁起が悪い! 今日の相手は残留争いのライバルだ。徹底的に叩かねば。
 そうやって自分に言い聞かせながら、俺は試合開始の笛を聞いた。

 俺の不安と裏腹に選手は開始直後からタフに、そしてプランに忠実に戦ってくれた。
 今日のフォーメーションはいつも通り1442、スタメンはGKボナザさんにDFラインは左からルーナ、シャマー、ムルト、ティアという盤石の面子。 
 中盤は左からリスト、シノメ、クエン、エオン。並びとしてはフラットだが両サイドのリストさんとエオンさんは攻撃的なので中盤の底にボランチを2名置いた逆台形型とも言えるかもしれない。
 そしてFWはダリオさんとリーシャさん。この2名はどちらも動き回る方で前線でDFを背負いボールをガッチリキープする、というタイプではないが――因みに背負えるタイプを最近では『前線で基準点となる』と言ったりする。ダリオさんなら数試合はできるかもしれないが、それ以上は彼女には負担が大きいだろう――サイドや中盤に流れたり落ちたりしてボールを受ける事はできる。どのみち、ゴブリンDFの中央にはカーリー選手が鎮座しているので、そんな所で勝負するのは分が悪い。なので別の場所を納めどころにする方がアリなのだ。
 一方のゴブリン代表もフォーメーションは1442。エルフ代表と同じだが、大きく違うのは中盤だ。彼女らの並びは所謂ダイヤモンド型で、中盤の底、守備的MFは1名のみ。左右のMFは積極的に前に出るし、トップ下のクレイ選手もセットプレイに限らず優れたシューターで頻繁にシュートを撃ってくる。かなりの攻撃型と言っても良い。
 そんな両チーム、噛み合わせで言うとやはりエルフ代表がサイドでは守勢に回る。ゴブリン代表のキーウーマン、カーリー選手もクレイ選手も中央がスタートポジションなので、こちらは真ん中に守備の数を集めている。またサイドのエオンさんもリストさんも――リストさん、CBとして出場するとしっかり守るのに、FWや中盤として出るとサボるんだよなあ――守備が得意ではない。サイドライン際では不利な状況になるのは必然であった。
 しかし、だ。アローズはそれでも決して崩れる事無く相手に殆どチャンスを与えていなかった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

処理中です...