D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが

米俵猫太朗

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第二十章

ゴブリロン

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 それが天啓だった。その言葉にはっとして俺とジノリコーチが映像を見直すと、ゴブリン代表はまさに『それ』だった。
 いや正確には逆だ。ゴブリン代表はだた突っ立てる者は使わない。つまり立ち止まっている者にはパスを出さず、動いている、特に走っている選手へパスを出すのだ。そんな選手がボールホルダー保持者の目に入ったら、ほぼ確実に。
 その二つのゴブリロンが合わさるとこうだ。攻撃のスイッチとなるパスが最前線のCFへ入る。しかしそのボールはすぐに後ろに、ゴール方面へ向かえる選手へ戻される。その選手の周囲に他の選手が群がる。DFがつく、走っている選手へパスが出る。DFが追いかける、選手が止まる。またその周辺を走る次の選手へパスが出る……。
 目まぐるしく動く選手とボール、対するDFにとっては『奪い所』が絞り込めない攻め、ボール保持者に次々と選択を迫るようなせわしない展開。ノエル・ギャラガーがベンゲル時代のアーセナルについて『社会主義的サッカー』と評した――必ずしもサッカーの中身ではなく、当時急速に投入され始めたオイルマネーについて、ベンゲルが苦言を漏らしていた事への反論らしいが――通り、王も奴隷もおらず全員の全員による全員の為のサッカードウ。
 そんなゴブリンサッカードウに対して俺たちは……。
「監督、ザックコーチ、どうぞ」
 中から声がかかった。俺とミノタウロスのフィジコは話を中断し、更衣室の中へ向かった。

 選手たちの表情は非常に明るいものだった。それもそうだ、以前は苦手にした相手、そして今は残留争いのライバルに対してこのタフなアウェイの地で前半終えて0-3。そのうえ結果だけでなく内容でも大きく上回っている。
「前半は良い内容だった。でも、忘れよう! 後半は頭から0-0のつもりで行こう!」
 俺は作戦ボードに選手交代とシステムの変更を書き込みながら続ける。
「余裕とか変な色気は出さないように! 特にエオンさん? ハットトリックを狙って真ん中に張るのはなしですよ?」
「ぎくりっ! ですぅ……」
 俺がそう釘を刺すとエオンさんは飲んでいたドリンクのボトルを落としそうにビクッ、と背筋を伸ばした。ぎくり、って実際に口にする奴おるんや……。
「その様子じゃアンタも考えてたみたいね」
 リーシャさんが呆れたように鼻で笑う。
「『アンタも』って、リーシャちゃんも?」
「当然でしょ? ゴブリンの守備なんてアンタの脳味噌と同じくらいユルユルザルだし」
「なっ! プロデューサーさん、リーシャちゃんがあんなこと言ってますぅ!」
 リーシャさんのガキ大将めいた言い方にエオンさんが涙を浮かべて抗議をする。だが実のところウチのエースの言葉は非常に頼もしい。WGからFWへ意識が代わったことを実感できるし、得点を狙うからと言って前線真ん中で置き石みたいになってしまう選手でもないからだ。
 あ、あとエオンさん、プロデューサーじゃなくて監督、ね?
「リーシャさん、その言い方は良くないです。でも追加点が必要なのは事実。後半も果敢に攻撃して下さい。エオンさんも。中に張るなって言うのは意地悪じゃなくて、外にいてくれた方が貴女にも得点チャンスが増えるからです。良いですね?」
「うう……。はいですぅ」
 エオンさんは非常に悲しそうな顔をしながら引き下がる。だが恐らくあれは演技だ。内心ではまだ虎視眈々と目立つチャンスを探しているだろう。
「おっと、時間が無くなった。じゃあ、キャプテン?」
 そろそろロッカーアウトだ。俺は別の演技派に声をかけた。
「じゃあみんな。ショーちゃんはまだ楽しみたいから、中はダメだって。外で、って」
 チームに円陣を組ませたシャマーさんは囁くように言った。アカンアカン! その言い方、いやらし過ぎるって!
「シャマーさん! いくら未成年がいないからって……」
「3、2、1、『中はダメ! 外で!』で行くよ? 3、2、1……」
「「中はダメ! 外で!」」
 例によって俺の静止は間に合わず、選手スタッフは声を揃えて唱和し更衣室から駆け出していく。
「いくらなんでもド直球の下ネタ過ぎんのよマジで!」
 一人、取り残された俺は変な口調になって呟く。毎回、無茶苦茶なかけ声を提案するシャマーさんもシャマーさんだが、それに応じる選手たちも選手たちだよ!
「まあまあ。男性がいない所では、我々もそんなものですよ?」
「え!?」
 うわっ、びっくりしたぁ! その声に振り向くとナリンさんが柔らかく微笑みながらボードを手に立っていた。まだ残っていたのか!
「そんなものですか」
 エルフの、特にデイエルフの皆さんは森のハンター狩人だけあって足音や気配を消すのが上手い。俺は存在に気づけなかった驚きや独り言を聞かれた恥ずかしさで鸚鵡返しになる。
「まあレイさんやポリンがいる時は自分も口にしないよう注意しますが」
「そっ、そりゃそうですよね」
 ナリンさんは王国に残してきた二名の選手の名を口にする。彼女たちはまだ学生にして未成年だ。母親がBL漫画家で自身も耳年増なレイさん――ごめん!――は別にして、ポリンさんにそんなもの聞かせたらご両親や従姉さんに合わせる顔がない。
「あれ? 『自分も口にしないよう』って言いました? ナリンさんも下ネタなんか、かます口にするんすか!?」
 注意する、って『誰かが話題にしてたら諫める』という意味だと思って一瞬スルーしてた! 俺は驚きのあまり再び変な口調になり問う。
「ええ。割とウケますよ?」
「ちなみに……どんなタイプの?」
「それは秘密です!」
 ナリンさんは吊り上がる口角を手にしたボードで隠しながら言った。顔がやや赤くなり目尻も下がっている
「うわ、エッチそう……」
「さあ、ショーキチ殿、行きますよ!」
 そう言うと、普段は『超』がつくほど真面目なコーチは駆け足で俺の先を行く。
「知りたいような知りたくないような……」
 今度こそ一人になった俺は呆然と呟いた。まだまだ世界には未知なるものが潜んでいるな! 俺は顔をぱん! と叩いて未知なる未来、後半戦のピッチへ向かった。
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