D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが

米俵猫太朗

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第二十章

垂涎の標的

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「今度からこういう仕事の時はさ。アタシもショーキチみたいに黒いスーツ着た方が良いな!?」
 時間は一気に飛ぶ。試合後の挨拶や記者会見を済ませて廊下へ出て、身内――俺、ナリンさん、エオンさん、そしてステフ――だけになったところで、ステフが自分の芸人衣装コスチュームを摘み上げながら言った。
「はあ。何のために?」
「その方がSPっぽいじゃん!」
 続いてステフは銃を構えるようなポーズを取る。
「ふーん。でもお嬢ちゃん、コスプレごっこなら近所の公園ででもやってくれるかな?」
 俺がそう言うとステフは架空の銃を放り投げ抗議の声を上げた。
「ごっこちゃうわ! 本物のSPやってたわ!」
「マジで? いつ?」
 わざとらしく、俺は眼をまん丸にして驚く。
「試合中ずっと!」
「そうか? 静かだったから眠っているのかと思ったよ」
「なっ!? ナリンちゃん、ちょっと言ってやってくれよ!」
「ええ。ステフさんはちゃんと警備をして下さっていました。お陰様で何の心配もなく試合に集中できましたよ!」
 ステフの懇願にナリンさんが素早く応えた。このデイエルフは子供みたいなダスクエルフに随分と甘いなあ。
「SPだったらエオンの事も守って欲しいのです! 国に帰ったらきっと人気殺到でファンが押し寄せて来ますからっ!」
「おうよ! 任せとけ!」
 そこまでやりとりを見ていたエオンさんが急に入ってきた。まあ彼女の言うことはあながち間違いではないが、頭がお花畑のエルフ二名エオンさんとステフが揃うとなかなかキツいものがあるな。
「薄情な前の雇用主とはもうお別れだな、ショーキチ!」
「おう。せいぜい付き人と間違われて写真を撮らされ……」
「あの、すみません!」
 言い合う俺たちに誰かが話しかけてきた。さっそくエオンさんのファンがきたのか!?
「あら、パリス?」
 違った。そこにいたのはアローズのチームメイト、頼りになる中堅プレイヤー、パリスさんだった。
「どうしましたパリスさん?」
「実は父がたまたまここに観戦に来ていまして……どうしても監督にご挨拶したいと」
 今日は出番が無かった守備のユーティリティプレイヤーは気まずそうに手を組み、祈るようなポーズをしながら俺に言った。おお、ウォルスにまでご家族が来て下さっているのか。これはありがたいな。むしろこちらがお祈りしたいくらいだ。
「それはこちらこそ願ってもない事ですよ! ナリンさん、すみませんがエオンさんとあと一名を連れて整理運動の方へ言って貰えますか?」
「誰があと一名だ!」
「ええ、大丈夫ですよ。パリス、お疲れ様。出場が無かったとは言え貴女も少しで良いから身体を動かすのにくるのよ? さ、ステフさんも」
 ナリンさんがステフを宥めつつそう言うとパリスさんは小刻みに頷いた。
「じゃあね、パリスさんイェーイ!」
「あ、はい」
 記者会見でも絶好調だったエオンさんがハイタッチをして別れを告げようとするが、パリスさんは小さく手を挙げるに留まった。分かる、エオンさんて対処に困るよな。
「気苦労かけますね」
「えっ!? 何がですか!?」
「出たり出なかったり……若手とベテランの仲介だったり」
 意表を突かれた感じのパリスさんに俺は労いの言葉を続ける。その間にナリンさん達は――何度か振り返りあっかんべーをするステフを連れて――廊下の先へ消えた。
「パリスさんは便利なんでこっちもどうしても良いように使ってしまいますけど、それで精神的に疲弊させてたら申し訳ないな、と。あ、そっちですか?」
 その言葉を聞いて困った顔をしつつ歩き出したパリスさんに続いて、俺は逆方向の廊下を出る。そこは関係者向けのラウンジではなく倉庫のようだ。ゴブリンの建物にそんな洒落たモノを期待するのも間違っているが……なんか暗い所だな。
「『お父様』、監督をお連れしました」
 パリスさんがそう言う先には皮鎧に身を包んだイケメン高身長のエルフ男性が数名、並んでいた。みな一様に若く精悍な顔立ちだ。
「どうも、ショーキチです。えっと……」
 懇親会の記憶を必死に呼び起こして誰が父親だったか探る。お父様と言う割にめっちゃ若いやんけ! といちいち驚いていてはエルフとは付き合えない。
「パリスが世話になっております。美しい勝利、おめでとうございます」 
 悩む俺を救うように真ん中の一番イケメンなエルフ男性がそう口を開き、後ろに隠していた花束を差し出した。
「うわ、綺麗だ! ありがとうございます!」
 これには驚いた。男性から花を贈られた事なんて無いからだ。
「嬉しいなあ! でも花なんてよく準備できましたね?」
 俺はプレゼントを受け取りマジマジと見ながらお礼を言う。あ、嘘ですごめんなさい。女性からも贈られた事はありません。だからどんなタイミングで準備してたか分からないのよ。
 だって……試合に負けてたら花とか贈り難いじゃん? どっかで勝利を確信してから買いに行ったのかな?
「今日の為にー、かーなーり、前ーかーらでーすよー」
 そう言う男性の声はなんだか妙にノビノビだ。そんなに前からなのか!? と驚いて視線を上げて、俺は気がついた。


 男性の声だけではない。周囲の風景も、パリスさんもグラグラ揺れながら伸びている。


「あれ? おかしいな……」
 良く考えれば眼や耳だけでなく鼻までおかしい。妙な匂いを捉えている。
 その発生源は……花束だ。
「カトブレバスの唾液が染み込んだ花です。喜んで頂けて幸いだ。お休みなさい」
 その声を聞きながら、俺の意識は暗闇へと飲み込まれた。

第20章:完
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