388 / 700
第二十二章
救出の代償は
しおりを挟む
中には予想通りリストさんがおり、上を向きながら静かに首の後ろを叩いていた。
「なに……してはるんですか?」
「いや~、拙者が出て行かなくてもなかなかのいやらしー雰囲気で、刺激が強くて鼻血が出たでござる!」
嘘付け出てないぞ!
「そういうのはいいから! お手洗いの帰り、道に迷って間違えてリストさん達の部屋に行って、仕方なく朝まで話していた、という設定にしますので、貴女たちの部屋へ連れて行って下さい!」
「そこは『朝までゲーム』じゃなくて良いのでござるか?」
それは熱愛報道が出たアイドルの言い訳だろ!
「何でも良いから早く!」
俺がそう急かすとリストさんは中から出て、例によって凄い力でロッカーを担ぎ上げしぶしぶ歩き出した。
「なぜ据え膳を喰わぬのでござる? ここにはナリス殿はおらぬでござるよ?」
「ナリスじゃなくてナリンさんね!」
リストさんが言っているのはナリンさんが男装をした時のキャラだ。リストさんを隊長とする『尊み略奪隊』をおびき出す際、俺と男に化けたナリンさんとで『男性同士の密かな愛』という設定で演技をしたのだが、彼女はまだその時のキャラにご執心なのだ。
「ナリンさんとはそういう関係じゃないしチームの誰ともそうじゃありませんが、バートさんともそういう関係になるつもりはありません!」
そんな話をする間にもリストさんは軽快に足を進める。夜中に高所を歩いているとはとても思えない歩調だ。
「何故!? 拙者は口が堅いでござるよ? それに選手には恋愛を進めるのに自分はやらないとはダビスタでござる!」
「それを言うならダブスタ! ダビスタは競馬のゲームでしょ! 血統とか繁殖とかは考えてませ……わざとか!」
ツッコミを入れている間にやらしー考えになりかけて、俺はリストさんの意図を読みとりツッコミ方を変えた。
「くっくっく! しかし真剣な話、ショー殿も恋愛をされた方が『大人としての幅』が出るのではござらんか?」
図星だったらしいリストさんは楽しそうに笑い、しかしそれ以上の追及を避けるかのように話を戻した。
「それはまあ、そうなんですけど」
俺は選手の恋愛を禁止するのではなく、むしろ推奨していた。むろん、それに頭がいっぱいでプレーに支障が出たら注意はするが俺は選手を個エルフとして尊重したいし変に抑制したくないし、愛する対象がいるという事は選手をトータルで成長させると期待しているからだ。
「俺は別です。そんな事にかまけてる時間はないし、関係性が変にギクシャクするのも嫌だし」
「しかしバート殿は関係者ではないでござるが?」
リストさんはぱっと振り向いてそう指摘した。彼女の動きにあわせてロッカーが回り、俺は瞬時の判断で身を屈めてそれを避けた。危ない。アレに当たったら本当に鼻血が出るぞ!
「そうなんですけど、バートさんとの関係はただのトモダチと言うか……これでくっつくのはストックホルムシンドロームとかリマなんですよ」
「ストックホモォ……何でござる?」
自分の好きそうな話題を期待してリストさんが目を輝かせた。
「ストックホルムとリマ!」
しかし俺は冷静に訂正し、話を続けた。
「人質事件等で長期に渡る密接な接触の結果、人質が犯人に親近感や愛情を抱いてしまう事です。人質が脱出や抵抗をするどころか、犯人に協力してしまったりするんです。ストックホルムの銀行強盗事件で有名になりました」
ストックホルムシンドロームは映画にもなっているし、オタクにとっての必修事項に近い。名前の格好良さもあってちょっと違う事例でも言ってしまう事があるくらいだ。
あ、因みに俺の場合はそれほど『長期に渡る密接な接触』ではない。外的には1週間とちょっとだが、絶情木で時間が飛んだので実質は数日だ。
「リマは逆に、犯人側が人質に愛着を抱いてしまう事です。ペルーのリマにある大使館立てこもり事件で注目を浴びました」
リマの日本大使館に立てこもったテロリストは、人質と仲良くなり過ぎ気が緩みまくっている所を利用されて制圧されてしまった。一説によると撃ち殺す予定の人質を撃てなかったとか、人質たちをサッカーをしている時に、治安部隊に突入されてしまったと言う。
おっと! 意外な所からサッカーの話に戻ったな。
「回りくどい話でござるが、つまりバート殿とは恋愛関係ではなく状況に流されて……と言いたいのでござるか?」
「そう、それです!」
リストさんはプレーや性格もだが、考え方の癖が独特だ。それでもなんとか俺の言いたい事を察してくれたようで嬉しい。
「状況に流されて関係を結んだら、意外と身体の相性が良くて……というのも萌えるでござるな!」
前言撤回。察してくれてなかった。
「萌える萌えないや好き嫌いは個々の自由ですけど、俺はやりませんから!」
俺の強い否定の声はリストさんに届いてないようだった。ナイトエルフの妄想家はその脳内で、なにやらけしからぬ想像の翼を羽ばたかせて楽しんでいるようだ。
「ところでまだ着かないんですか?」
「おっと! そろそろ……そう、そこでござる! 早速クエンに拙者の構想を語るとするでござる!」
「えっ……」
リストさんはそう言うと目の前に現れた巨木の中へ入っていった。そこは彼女とクエンさんに提供された部屋で、俺は朝までお菓子を食べつつ彼女らの萌え語りを聞かされる事となるのであった……。
「なに……してはるんですか?」
「いや~、拙者が出て行かなくてもなかなかのいやらしー雰囲気で、刺激が強くて鼻血が出たでござる!」
嘘付け出てないぞ!
「そういうのはいいから! お手洗いの帰り、道に迷って間違えてリストさん達の部屋に行って、仕方なく朝まで話していた、という設定にしますので、貴女たちの部屋へ連れて行って下さい!」
「そこは『朝までゲーム』じゃなくて良いのでござるか?」
それは熱愛報道が出たアイドルの言い訳だろ!
「何でも良いから早く!」
俺がそう急かすとリストさんは中から出て、例によって凄い力でロッカーを担ぎ上げしぶしぶ歩き出した。
「なぜ据え膳を喰わぬのでござる? ここにはナリス殿はおらぬでござるよ?」
「ナリスじゃなくてナリンさんね!」
リストさんが言っているのはナリンさんが男装をした時のキャラだ。リストさんを隊長とする『尊み略奪隊』をおびき出す際、俺と男に化けたナリンさんとで『男性同士の密かな愛』という設定で演技をしたのだが、彼女はまだその時のキャラにご執心なのだ。
「ナリンさんとはそういう関係じゃないしチームの誰ともそうじゃありませんが、バートさんともそういう関係になるつもりはありません!」
そんな話をする間にもリストさんは軽快に足を進める。夜中に高所を歩いているとはとても思えない歩調だ。
「何故!? 拙者は口が堅いでござるよ? それに選手には恋愛を進めるのに自分はやらないとはダビスタでござる!」
「それを言うならダブスタ! ダビスタは競馬のゲームでしょ! 血統とか繁殖とかは考えてませ……わざとか!」
ツッコミを入れている間にやらしー考えになりかけて、俺はリストさんの意図を読みとりツッコミ方を変えた。
「くっくっく! しかし真剣な話、ショー殿も恋愛をされた方が『大人としての幅』が出るのではござらんか?」
図星だったらしいリストさんは楽しそうに笑い、しかしそれ以上の追及を避けるかのように話を戻した。
「それはまあ、そうなんですけど」
俺は選手の恋愛を禁止するのではなく、むしろ推奨していた。むろん、それに頭がいっぱいでプレーに支障が出たら注意はするが俺は選手を個エルフとして尊重したいし変に抑制したくないし、愛する対象がいるという事は選手をトータルで成長させると期待しているからだ。
「俺は別です。そんな事にかまけてる時間はないし、関係性が変にギクシャクするのも嫌だし」
「しかしバート殿は関係者ではないでござるが?」
リストさんはぱっと振り向いてそう指摘した。彼女の動きにあわせてロッカーが回り、俺は瞬時の判断で身を屈めてそれを避けた。危ない。アレに当たったら本当に鼻血が出るぞ!
「そうなんですけど、バートさんとの関係はただのトモダチと言うか……これでくっつくのはストックホルムシンドロームとかリマなんですよ」
「ストックホモォ……何でござる?」
自分の好きそうな話題を期待してリストさんが目を輝かせた。
「ストックホルムとリマ!」
しかし俺は冷静に訂正し、話を続けた。
「人質事件等で長期に渡る密接な接触の結果、人質が犯人に親近感や愛情を抱いてしまう事です。人質が脱出や抵抗をするどころか、犯人に協力してしまったりするんです。ストックホルムの銀行強盗事件で有名になりました」
ストックホルムシンドロームは映画にもなっているし、オタクにとっての必修事項に近い。名前の格好良さもあってちょっと違う事例でも言ってしまう事があるくらいだ。
あ、因みに俺の場合はそれほど『長期に渡る密接な接触』ではない。外的には1週間とちょっとだが、絶情木で時間が飛んだので実質は数日だ。
「リマは逆に、犯人側が人質に愛着を抱いてしまう事です。ペルーのリマにある大使館立てこもり事件で注目を浴びました」
リマの日本大使館に立てこもったテロリストは、人質と仲良くなり過ぎ気が緩みまくっている所を利用されて制圧されてしまった。一説によると撃ち殺す予定の人質を撃てなかったとか、人質たちをサッカーをしている時に、治安部隊に突入されてしまったと言う。
おっと! 意外な所からサッカーの話に戻ったな。
「回りくどい話でござるが、つまりバート殿とは恋愛関係ではなく状況に流されて……と言いたいのでござるか?」
「そう、それです!」
リストさんはプレーや性格もだが、考え方の癖が独特だ。それでもなんとか俺の言いたい事を察してくれたようで嬉しい。
「状況に流されて関係を結んだら、意外と身体の相性が良くて……というのも萌えるでござるな!」
前言撤回。察してくれてなかった。
「萌える萌えないや好き嫌いは個々の自由ですけど、俺はやりませんから!」
俺の強い否定の声はリストさんに届いてないようだった。ナイトエルフの妄想家はその脳内で、なにやらけしからぬ想像の翼を羽ばたかせて楽しんでいるようだ。
「ところでまだ着かないんですか?」
「おっと! そろそろ……そう、そこでござる! 早速クエンに拙者の構想を語るとするでござる!」
「えっ……」
リストさんはそう言うと目の前に現れた巨木の中へ入っていった。そこは彼女とクエンさんに提供された部屋で、俺は朝までお菓子を食べつつ彼女らの萌え語りを聞かされる事となるのであった……。
0
あなたにおすすめの小説
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる