D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが

米俵猫太朗

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第二十四章

使用許可と使用感

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 控えとして登録しスタジアムまで来てくれた選手の中で、最も話しかけ易いのはエルエルだった。意外にも弟妹が多数いる彼女は――チームでは妹ポジション、実家では長女。まあたまにある話だ――オムツにまつわる事情技術転用のあれこれを素早く理解し、俺が戻るまでに試着しておくことを約束してくれた。
 実際、装着できる事と出してしまっても漏らさない事と着けた状態で動けることは全部、別の話だ。
 俺はある小話を思い出していた。
「僕は幼い頃、誕生日プレゼントに生理用ナプキンをお願いした事があります。だってCMでは『これをつければ乗馬だって水泳だってできます』って言ってたもんで。僕はそれらが一つもできませんでしたからね」
というヤツ。
 何も知らない少年ではないので、着けても運動能力が上がったりしないのは分かる。むしろ不自由な動きになる筈だ。ファウルカップ――股間を守る防具だ――なら高校の少林寺拳法部の友人に試させて貰った事がある。非常に動き難かった。アレに近いモノだとしたら、その他の部分をクリアしても使用に耐えるものではない。
 そしてできると言えばもう一つ。これを使う事ができるかどうか? 繰り返すが運動能力を上げる器具ではない。使ったから有利になる道具でもないので、使用許可が降りる可能性はある。
 問題はそれが試合直前、と言うかピッチ方面の歓声からするに試合開始以降に申請して許されるかどうかだ。
「その辺りも緩かったら良いんだけどなー」
 俺はそう呟きながら、マッチコミッショナーが待機する部屋のドアをノックした。

「はあ。オタクも本当に、いろいろな事をやってきますねー」
 俺からブツを受け取ったリザードマンさんはしみじみとそう呟いた。
「どうもすみません……あ、あぶね!」
 場所はスタジアムメインスタンド上部、マッチコミッショナーさんの待機室だ。実況解説の担当者や機材が並ぶのと同じような位置で大きく解放された窓があり、かなり良いポジションで試合を眺める事ができる。今もその恩恵を得て、ゴルルグ族のファーストシュートをボナザさんが弾くのを見たところだった。
「パンツの中にクッションを当てているようなものですか……」
 コンリーという名のリザードマンさんはそれをイジりながら、感情の見えない目で眺め回していた。マッチコミッショナーさんは審判と運営を足して2で割ったような存在で主にプレイ外の事象――スタジアム設備や各種器具が問題ないか、つつがなく試合が運営できるかなど――を管理する。そもそも今回、試合が開催できるかを最終判断するのも彼だった。
「ええ。負傷した選手が包帯を巻いて試合を続けるようなものです」
 審判がドラゴンで副審やコミッショナーがリザードマン、そして対戦相手が蛇のゴルルグ族。爬虫類オールスターズだ。温血動物哺乳類の俺としては疎外感というかオマエラ贔屓してんじゃねえか? 感を覚えそうになるがサッカードウの歴史において不正は存在しておらず、それは被害妄想に過ぎない。
 そもそも同じ爬虫類的見た目をしていても巨大で空を飛び圧倒的な魔法能力も持つドラゴン、牙や尾や鉤爪を持つリザードマン、多頭と独特の文化技術を持つゴルルグ族は全く違う生態系だし、特に前者2種族の冷血さは良い意味でサッカードウの中立性を守っている。
「まあ寒い時期に重ね着するようなもんですかね。今回は特別に許可しましょう」
「よし! い、いや、ありがとうございます!」
 コンリーさんの言葉を聞いて俺はガッツポーズをし、すぐさま礼を言った。
「はいはい、礼はいいから。ベンチへ行かなくて良いんですか?」
 リザードマンはそう言いながらピッチの方を指さす。彼はカメレオンの用に左右の目を全く違う方向にやれるようで――いや人間にもたまにできる人いるけどさ。歌舞伎役者さんとか――俺の顔と試合の様子を同時に見ていたようだ。
「あ、本当だ! 失礼します!」
 彼の指すピッチ上では、アローズはかなりの劣勢の様だった。俺はここへ来てからたまにしか目をやっていないが、いつ見ても攻められているシーンだ。DAZNで見逃した試合のハイライトを見て
「ちょいちょい! ウチのチームの攻撃のシーン殆ど無いやんけ!」
ってキレたくなるヤツみたいだ。
「ありがとうございましたー!」
 最後に舞台から捌ける芸人さんみたいな声を出して俺はマッチコミュッショナー室を後にした。

 控え選手の待機部屋は当然スタジアム下部の方で、俺は登ったり下ったりで息も絶え絶えだった。
「はぁ……はぁ……。みんな、入っても大丈夫?」
「え……ヤダ。怖い」
 なので待機部屋の外から中へ声をかけた時、返ってきた返事は色よいモノではなかった。
「何言ってんのエルエル? アイツが帰ってきたんでしょ? 入れなさいよ」
「はーい、お姉さま」
 強気な先輩と従順な後輩の会話が聞こえてドアが開いた。いやリーシャさん、ありがたいけどアイツじゃなくて監督、ね?
「こっちは……許可はとれた……。そっちは……どう? 使えそう?」
 監督に就任して以来、環境を利用して俺は割と運動をする様になった。オーク代表戦の件からは筋トレもそれに加わったくらいだ。しかしこの上下動はなかなかにキツく、息はまだ整わない。
「うん、意外と動ける」
「でもまあまあ違和感あるねー。ルーナさん、これをつけて練習している時もあるんだっけ? そんけー」
 その場でステップを踏みながらリーシャさんが、床でストレッチをしながらユイノさんがそれぞれ答える。その背後ではエルエルが短いダッシュを繰り返して感触を確かめている。
 この三名。たった三名が控え選手としてスタジアムへ来れたエルフだった。他のエオンさん、ツンカさん、ヨンさんは総合的に判断してホテルに残って貰ったのだ。
「えっと……その……濡らしてみた?」
 どう頑張っても気持ち悪くなるので諦めてそのまま聞く。
「うん。水を吸わせてから履いてもみた。気持ち良いものではないけど、漏れない」
「スライディングしてズレても大丈夫! 凄いですよね、姉様!」
 リーシャさんが真面目な顔で答え、エルエルもそれに追従する。なんか申し訳なさと頼もしさで泣きそうだ。
「ありがとう。できれば頼る事にならなければ良いけど」
「残念だけどそれはどうかな?」
 悩みを抱えた声で礼を言う俺をリーシャさんがすぐに制した。遅れて、スタジアム中に響く歓声が聞こえた。
「えっ!? やられた?」
「うん。行ってきなよー」
 俺より遙かに耳が良いエルフ達は歓声より先に何かを察していた様だ。俺はユイノさんの助言に従い、彼女たちに別れを告げコンコースの方へ走った。
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