D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが

米俵猫太朗

文字の大きさ
497 / 700
第二十八章

耳に重い、痛い

しおりを挟む
『ただいまの得点はハーピィ代表背番号26 トレパー選手』
 低く、ドスの効いた声がスタジアムに響く。ノゾノゾさんのアナウンスだ。言葉は分からないが恐らく、今の得点者の公式発表を行ったのだろう。
「怖っ! 今の声はあのお姉さん?」
 アリスさんはキョロキョロとノゾノゾさんの姿を探しつつ訊ねる。残念ながらあの巨人さんは皆さんの観戦の邪魔にならないよう特設ブースに引っ込んでいて、今は観客席から見つける事はできない。
「はい。アローズの得点の度に聞いているのとは、ちょっと違うでしょ?」
「ええ。別人みたいですね……」
 このジャイアントお姉さんのアナウンス、自チームと相手チームでは得点した時の声色も違う。最初は観客のテンションへの影響を考えて意図的に変えて貰うようにお願いしていたが、今はノゾノゾさんもチームに愛着を持ってくれるようになっていて、自然とアローズゴールの時は楽しそうに、相手ゴールの時は不機嫌にアナウンスするようになっている。
 余談だが彼女のお気に入りの選手はシノメさんだ。こっそり聞いた時、
「アスリートらしくない普通のお嬢さんっぽさ、なのに意外と粘着質な守備をするところ……推せる!」
とそれこそギャップ萌えを含めて語っていた。
 ……分かる。俺にとってもシノメさんは密かな推しだ。普段は非常に優しい事務員さんでお世話になっている上に、キャラの濃い美女が多いアローズにおいて普通のお姉さんっぽさは逆に特徴的だ。そんな彼女としっぽり密着できる存在が羨ましい。
 ただ悲しいかな監督として、女性の集団を率いる統率者として贔屓はできない。ポジション的にも中盤の底で守備をするのがメインだし、どうしても出場停止や負傷選手の穴埋めや守備固めの投入になってしまう。
 故にノゾノゾさんが楽し気にシノメさんの名前を呼ぶ日は遠いだろう。しばらくは密かに推し話を聞いてあげるくらいしかできないか。
「あの、ちょっと難しい事を教えて貰って良いですか……?」
 他にも俺が話しを聞いてあげないといけない存在がいた。アリスさんだ。
「はい! 何でも聞いてください」
「おおう、優しい! あの、何で急に、こんな風になったんですか?」
 俺の返事を褒めた教師は、ピッチの方を指しながら言った。
「こんな風と言うのは具体的に言うと?」
「えと、5-1でまだ勝ってはいますけど、急に流れが悪くなって1点入れられちゃいましたよね?」
「はい」
 俺はその件について説明しようと口を開きかけたが、まだ続きがありそうなので黙った。
「それと、レイちゃんと気の強そうな……」
「リーシャさん?」
「そう、リーシャさん!」
 俺とアリスさんは前半にもあったやりとりを繰り返す。学校の先生って他者の名前を覚えるのが得意ではないのかな? 異世界では違うのかもしれない。
「そのリーシャさんが下がって、交代選手が2名入りましたよね? えっと、ぶりっことボン、キュ、ボン! が」
 ぶりっことボンキュボン? エオンさんとツンカさんか? 交代で入ったのって彼女たちしかいないよな?
「エオンさんとツンカさんですかね?」
 俺は追求は諦めて確認だけ行う。ぶりっことボンキュボンという言葉についてはまた別の機会に教えて貰おう。
「はい! それで確か……交代選手の役割は悪い流れを変える、下がった運動量を取り戻す、相手の反撃の芽を摘む、などと」
 アリスさんはメモを取り出し読み上げる。前半で交代選手の存在意義について軽くレクチャーしたのを書いていたのだ。ふざけている様で勉強熱心なエルフだな。
「ええ、その通りです。良くチェックしてますね!」
「えへへ」
 俺の褒め言葉に普段は褒める側の教師が鼻の下を擦った。いや実際にアリスさんは良い教え子だ。俺の弟子的存在の筆頭としてはナリンさんもいてかなり優秀だが、彼女はコーチなので既にサッカードウについてかなり詳しい存在で、アリスさんはほぼ知識ゼロの生徒。タイプが違うので教えるこちら側にも違った学びがある。
「えへへ、って言ってる場合じゃなかった! あの、今の状況ってどれにも当てはまらない様に見えます!」
 アリスさんは非常にこちらに気を遣いながら、だが勢いをつけて質問してきた。どうしても聞きたかった事を我慢できなかった様だ。
 いや、我慢できなかったというか、耳に痛い事でも時には口にしないといけない『教育者』のサガが出たというべきかもしれない。
「良い着眼点です。ただご自身も自覚されていると思いますが、順序が逆ですよね?」
「……はい」
 俺がそう言うと、アリスさんは唾を飲み込んでから頷いた。何故ならこれを認める事は選手交代をしたから流れが悪くなったと認識したのと同じ事であり、つまりは俺の采配がミスであると指摘するのと同じだからだ。 
 フランクなやりとりをしてきたとは言え初対面に近い相手に、しかもプロの監督に素人がそう告げるには勇気が必要だっただろう。
「選手交代をして相手に勢いを与えてしまった、それで失点してしまった、という面はあります」
 だがアリスさんは勇気を振り絞って言った。それは前述の通り、教師という生物の生き様のせいかもしれない。さっきは名前を覚えていない点で少し疑ったが、彼女はやはりちゃんとした先生だ。俺も俺できちんと答えなければ。
「もちろんこんな結果を期待していた訳ではありません。別の目論見があったんですよ」
 俺はベンチとの連絡用ボードに要点を書き込みならが、説明を始めた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

処理中です...