D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが

米俵猫太朗

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第二十八章

アイドルズ

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 カアアアン! 高い音がスタジアムに響く。
「くっそぉぉぉ!」
 大多数のアローズサポーターと同じ様にアリスさんも頭を抱えた。エオンさんが美しいフォームから放った弾丸シュートは、ハーピィ代表チームGKペティ選手のディフレクティング――手の平でボールをゴールマウスの外へ逸らす事だ。もっともハーピィに手の平はないので正確に言えば爪や羽だが――によってシュートコースを変えられ、クロスバーを叩いた後、ハーピィ代表サポーターのひしめくゴール裏へ飛び込んだ。
「あんなの止めるなんて反則ですよあいつめ!」
「だからシュートは低く、って言ったんですけどね……あ、エオンさんには伝わってなかったか?」
 アリスさんお淑やかな演技はもう諦めたんだな? と思いつつ今日の出来事も思い出すという器用な真似をしながら俺は応えた。『あんなの』と言うのは至近距離からゴール右上めがけて飛んだ全力シュートであり、普通のGKであればまず止められないモノだった。
 だが相手はハーピィとオークのハーフという出自を持つGK、ペティ選手なんだよなあ。
『やーんもうっ!』
『嘆いている暇はありません。立って!』
 絶好の得点機会を外し地面を叩いているエオンさんに何か囁き、ダリオさんが立たせる。芸能界のアイドルを国民のアイドルが助け起こすという風景だな。
「あ、アイドルと言えばあの子もだったな……そうだ!」
 俺はCKを蹴る為にある選手が歩いていく姿を見て座席を立ち上がった。
「どうしたんですか? ショーキチ先生?」
「みなさん、ここで今日一番の声を出してください。クラスのアイドルの見せ場ですよ!」

 それってうちのこと? とレイさんが手を挙げる幻影が脳裏の片隅に浮かんだがそれは打ち消し、俺は手前コーナーに立つ小柄な選手を指さした。
「あ! ポリンちゃんだ! またギューンって蹴るんですか!?」
「ええ、そうです! クラスメイトの皆にも声援を送るように言って貰えますか? きっと力になるんで!」
 アリスさんが言っているのは前半冒頭のパスの事で、俺がお願いしているのはCKの事である。微妙に違うが訂正する程の事でもないのでそのまま通訳をお願いする。
『みんな! ポリンがシュババーっ! ってボールを蹴るよ! クラスの力でそれをズババーっ! に変えよう!』
『分かりました、先生!』
『ポリン、頑張れ~!』
 先生の号令にすぐさま応える生徒たち。言葉の中身は分からないが、身を乗り出し声を張り上げる姿で彼ら彼女らの真摯な気持ちは伝わってきた。アリスさんの統率力あるいはポリンさんの人柄もといエルフ柄のなせる技だろうか? たぶん、両方だな。
「あざっす! こっちはこれでよし……と。あっちは……」
 生徒さんたちの応援が伝播しハーピィゴール裏以外の観客席全体が盛り上がっていく中、俺はピッチの方を見た。ちょうどダリオさんがスリープ――密集から少し離れた位置に選手を置きCKをゴール前へ入れるとみせかけてその選手にパスし、シュートを撃たせるセットプレイの作戦名だ。開幕戦のオーク代表戦で決めたやつだよ!――のポジションにつき、こちたを見るのと目が会う。
「(ダリオさん、献身的なプレーにエオンさんへの心配りにと……今日もナイスです!)」
『(ショウキチさん、また別のエルフ相手にデレデレして……少し釘を刺した方が良いかもしれません。あと私の事もどう思っているのでしょう?)』
 俺が親指を立ててウインクをすると、ダリオさんは首を横に振って腕組みをした。俺にはエルフほどの視力が無いので細かい所までは分からないが、やや厳しい表情に見える。スリープの為の演技にしては過剰だ。
 試合の展開を楽観視している俺にまだ油断できないぞ? と伝えたいのかもしれない。だとしたら流石だ。俺はすぐさま表情を引き締め、彼女の顔を見て頷いた。
「(そうですね、ダリオさんの思ってらっしゃる通りです。まだゲームは終わってない!)
『(あら? 想いが通じたのかしら?)』
 腕組みを解き頬に手を当てるダリオさんから視線を外し、俺は次にポリンさんの方を見た。クラスのアイドルと言ったが正確には委員長な彼女は、ボールをセットしサイドライン側に立ち中の様子を伺っている。その位置から右足だとアウトスイング、ゴール及びGKから遠ざかる軌道を描くパスを放つ筈だ。
 ……筈なんだが。
「あれ? ちょっとおかしいのに誰も注意しないな……」
 中で、そのパスに飛び込むべく待機している長身選手たち、ガニアさんムルトさんクエンさんの位置が少し遠い。ダリオさんのスリープの為かな? と思ったが、ハーピィDFも姫様に気づきマークをつけてしまった。それもそうだ、眠り姫の作戦は1シーズンにそう何度も成功するものではない。
 そういう状況なのに、コーチ陣は誰もターゲットの選手に声かけをしていなかった。むしろカウンター対策でセンターに残る選手に呼びかける、シャマーさんの姿の方が目立つくらいだ。
「これはもしや……アレをするのか!?」
 俺はある事を思い出し、思わず身を乗り出した。その視界の端で、審判さんの笛を聞いたポリンさんがCKの為の助走を始めた……。
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