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第二十八章
お姉さんの戦いその1
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後半から入ったツンカさんは、同じく後半から入ったカペラ選手とずっとバトルをしていた。その割にほぼ名前が出ていなかったがそれは彼女たちの闘いがそういう質のものだからである。
そもそも試合をTVやネット配信で観る時はボール中心になるものだ。カメラがそれを追うからが理由ではあるがボールが無ければドリブルもシュートもできないので、当たり前の話しでもある。
また自由に視点を選べるスタジアム観戦であればDFラインやGKを中心に観る事もあるだろう。決定的なパスが出る前にDFラインとFWがどんな駆け引きをしているか? GKがどんなポジション修正をしているか? を観るのは生観戦者の特権と言っても良い。
あと余談ではあるがGKはあまり走り回らないのでゆっくり見れるし、最後の関門である所からボディガード的な格好良さもあるし、長身イケメンも多いのでサッカーを見始めたばかりの女性が最初に好きになり易い対象だったりもする。羨ましいぜGK!
……色々と脱線したが、ツンカさんとカペラ選手の見所はまたそれらとは違った質のモノだった。一言で言えばコースを巡る争い。カペラ選手がパスを受けようとすればツンカさんがパスコースを遮る。浅黒い肌のハーピィがセンタリングへ飛び込もうと走り出せば、均整の取れた身体のエルフがその進路に割り込む。彼女たちはボールの無い所で頭脳を駆使して相手の裏をかこうと模索し、身体能力を総動員して少しでも優位なポジションを取ろうと走り続けていた。
「……とまあこんな感じで分かり難いですけど、ツンカさんは非常に重要で過酷な勝負を、ボールが絡まない所でしているんですよ」
俺はかいつまんで他のお姉さんの闘いその1をアリスさんに説明した。
「ほえ~。あんなにグラマラスばでぃで派手な見た目のお姉さんがそんな地味な仕事を!」
ツンカさんに負けず劣らずグラマラスなアリスさんが感心したように呟く。
「ええ、地味ですが大事な仕事をやってくれてます。カペラ選手はボールを持たせると非常にやっかいな選手なので、そうなる前の段階で止める為に、ね」
グラマラスなアリスさん、って韻を踏んでて面白いな! と思いつつも俺は口では真面目な事を言う。いやこういう縁の下の力持ち的な選手の良さをアピールすることも大事だ。
「なるほど! 『水面に 蹴脚隠す アルビ鳥』ですか……」
一方のアリスさんはまた軽く目頭を熱くしながらそう呟き……
「どうです? 良い感じじゃないですか? 彼女たちをアルビ鳥に例えたのが白眉なんですよ! そもそもアルビ鳥というのが白い派手な鳥なんですが水の下で足を……」
いつもの様に句を披露した後でドヤ顔になって解説までしてきた。
「そうなんですかー」
俺は試合の動向を見守りつつ適当に流す。アリスさんがここまで観戦者として長足の成長を続けているのに負けず劣らず、俺も彼女の扱いに慣れてきたぞ。
「んーまずいぞ!」
いやいやそんな事を言っている場合ではなかった。
「何がですか……あっ!」
俺の言葉を聞いてアリスさんも試合へ注意を戻す。今ちょうど、ガニアさんのクリアボールが偶然、カペラ選手へ拾われてしまったのだ。ここまでカペラ選手に入るパスを上手く防いできたツンカさんだが、仲間のボールまでは対応できなかった様だ。
「ぼ、ボール来ちゃいましたよショーキチ先生!」
「大丈夫です。ここからもあります」
俺の腕を抱き込んで揺らすアリスさんに安心させる言葉をかける。実は口調ほどに自信が無かった俺の見守る中、カペラ選手が恐らくこの試合で初めてボールを綺麗にキープしドリブルを始めた。
「うわ、はやい!」
アリスさんも思わず感嘆の声をあげる。それほどにカペラ選手のドリブルはスピードがあった。体勢の崩れていたツンカさんを置き去りにし、カバーに来たティアさんもワンフェイク入れて抜き去る。
「いえ、ここからです」
しかし派手さ――特に髪色の――ではひけをとらない右SBのカバーには意味があった。カペラ選手がティアさんを抜く間にツンカさんが追いつき、完全に対面する状態となったのだ。いよいよ勝負。しかもカペラ選手万全の状況で、だ。ツンカさん圧倒的不利だ。
「さん、にい、よし!」
しかし、である。俺の呟くタイミングとカペラ選手のボールタッチはシンクロしていた。それで俺は確信した。
ツンカさんの勝利を。
『スリー、ツー、ここ!』
『なっ!?』
カペラ選手はボールを爪で二度前へ突き、急に90度曲がって斜めボールを蹴り出した。彼女の中では、重心を向かって左に傾けたツンカさんの背中を通り抜けるイメージだったのだろう
だがエルフMFの身体はカペラさんの思った所には無かった。ツンカさんはまたしても鳥乙女ルーキーの進路上に身をさらし、カペラさんが加速する前に止めてしまったのだ。
『アウチ!』
『痛っ!』
ツンカさんの出る所が出て引っ込む所が引っ込んだ柔らかいボディ――もしかしてアリスさんの言う『ぼんきゅぼん』とはその事か!?――とカペラさんの見た目にしては軽い身体がぶつかり共に倒れる。それ単体で言えばツンカさんの進路妨害のファウルを取られても仕方のない状況である。
『ピー! アローズボール!』
だが笛が鳴った後、ドラゴンの審判さんは手をハーピィチームのゴール方面へ向けて振った。むしろカペラ選手のファウルだ。
『なんで……!?』
『ツンカ、よくやった!』
困惑し副審のリザードマンさんへ駆け寄るカペラ選手の横をティアさんが走り抜け、ツンカさんを助け起こす。その彼女の足下には、カペラさんが蹴り出したボールが転がっていた。
なんとツンカさんはコースに身体を入れると同時にボールにも足を伸ばして触れていたのだ。故に結果として
『ボールをクリアした後のツンカさんへ、カペラさんがぶつかりに行った』
という形になったのだ。
これは非常に大きなプレーだぞ……。
そもそも試合をTVやネット配信で観る時はボール中心になるものだ。カメラがそれを追うからが理由ではあるがボールが無ければドリブルもシュートもできないので、当たり前の話しでもある。
また自由に視点を選べるスタジアム観戦であればDFラインやGKを中心に観る事もあるだろう。決定的なパスが出る前にDFラインとFWがどんな駆け引きをしているか? GKがどんなポジション修正をしているか? を観るのは生観戦者の特権と言っても良い。
あと余談ではあるがGKはあまり走り回らないのでゆっくり見れるし、最後の関門である所からボディガード的な格好良さもあるし、長身イケメンも多いのでサッカーを見始めたばかりの女性が最初に好きになり易い対象だったりもする。羨ましいぜGK!
……色々と脱線したが、ツンカさんとカペラ選手の見所はまたそれらとは違った質のモノだった。一言で言えばコースを巡る争い。カペラ選手がパスを受けようとすればツンカさんがパスコースを遮る。浅黒い肌のハーピィがセンタリングへ飛び込もうと走り出せば、均整の取れた身体のエルフがその進路に割り込む。彼女たちはボールの無い所で頭脳を駆使して相手の裏をかこうと模索し、身体能力を総動員して少しでも優位なポジションを取ろうと走り続けていた。
「……とまあこんな感じで分かり難いですけど、ツンカさんは非常に重要で過酷な勝負を、ボールが絡まない所でしているんですよ」
俺はかいつまんで他のお姉さんの闘いその1をアリスさんに説明した。
「ほえ~。あんなにグラマラスばでぃで派手な見た目のお姉さんがそんな地味な仕事を!」
ツンカさんに負けず劣らずグラマラスなアリスさんが感心したように呟く。
「ええ、地味ですが大事な仕事をやってくれてます。カペラ選手はボールを持たせると非常にやっかいな選手なので、そうなる前の段階で止める為に、ね」
グラマラスなアリスさん、って韻を踏んでて面白いな! と思いつつも俺は口では真面目な事を言う。いやこういう縁の下の力持ち的な選手の良さをアピールすることも大事だ。
「なるほど! 『水面に 蹴脚隠す アルビ鳥』ですか……」
一方のアリスさんはまた軽く目頭を熱くしながらそう呟き……
「どうです? 良い感じじゃないですか? 彼女たちをアルビ鳥に例えたのが白眉なんですよ! そもそもアルビ鳥というのが白い派手な鳥なんですが水の下で足を……」
いつもの様に句を披露した後でドヤ顔になって解説までしてきた。
「そうなんですかー」
俺は試合の動向を見守りつつ適当に流す。アリスさんがここまで観戦者として長足の成長を続けているのに負けず劣らず、俺も彼女の扱いに慣れてきたぞ。
「んーまずいぞ!」
いやいやそんな事を言っている場合ではなかった。
「何がですか……あっ!」
俺の言葉を聞いてアリスさんも試合へ注意を戻す。今ちょうど、ガニアさんのクリアボールが偶然、カペラ選手へ拾われてしまったのだ。ここまでカペラ選手に入るパスを上手く防いできたツンカさんだが、仲間のボールまでは対応できなかった様だ。
「ぼ、ボール来ちゃいましたよショーキチ先生!」
「大丈夫です。ここからもあります」
俺の腕を抱き込んで揺らすアリスさんに安心させる言葉をかける。実は口調ほどに自信が無かった俺の見守る中、カペラ選手が恐らくこの試合で初めてボールを綺麗にキープしドリブルを始めた。
「うわ、はやい!」
アリスさんも思わず感嘆の声をあげる。それほどにカペラ選手のドリブルはスピードがあった。体勢の崩れていたツンカさんを置き去りにし、カバーに来たティアさんもワンフェイク入れて抜き去る。
「いえ、ここからです」
しかし派手さ――特に髪色の――ではひけをとらない右SBのカバーには意味があった。カペラ選手がティアさんを抜く間にツンカさんが追いつき、完全に対面する状態となったのだ。いよいよ勝負。しかもカペラ選手万全の状況で、だ。ツンカさん圧倒的不利だ。
「さん、にい、よし!」
しかし、である。俺の呟くタイミングとカペラ選手のボールタッチはシンクロしていた。それで俺は確信した。
ツンカさんの勝利を。
『スリー、ツー、ここ!』
『なっ!?』
カペラ選手はボールを爪で二度前へ突き、急に90度曲がって斜めボールを蹴り出した。彼女の中では、重心を向かって左に傾けたツンカさんの背中を通り抜けるイメージだったのだろう
だがエルフMFの身体はカペラさんの思った所には無かった。ツンカさんはまたしても鳥乙女ルーキーの進路上に身をさらし、カペラさんが加速する前に止めてしまったのだ。
『アウチ!』
『痛っ!』
ツンカさんの出る所が出て引っ込む所が引っ込んだ柔らかいボディ――もしかしてアリスさんの言う『ぼんきゅぼん』とはその事か!?――とカペラさんの見た目にしては軽い身体がぶつかり共に倒れる。それ単体で言えばツンカさんの進路妨害のファウルを取られても仕方のない状況である。
『ピー! アローズボール!』
だが笛が鳴った後、ドラゴンの審判さんは手をハーピィチームのゴール方面へ向けて振った。むしろカペラ選手のファウルだ。
『なんで……!?』
『ツンカ、よくやった!』
困惑し副審のリザードマンさんへ駆け寄るカペラ選手の横をティアさんが走り抜け、ツンカさんを助け起こす。その彼女の足下には、カペラさんが蹴り出したボールが転がっていた。
なんとツンカさんはコースに身体を入れると同時にボールにも足を伸ばして触れていたのだ。故に結果として
『ボールをクリアした後のツンカさんへ、カペラさんがぶつかりに行った』
という形になったのだ。
これは非常に大きなプレーだぞ……。
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