514 / 700
第二十九章
オフの朝
しおりを挟む
翌日。俺は早朝からクラブハウスのジムで汗を流しながら、これから2週間の事を考えていた。昨日は試合後のあれこれ――記者会見からミーティングから整理運動まで――で俺がやる事はあまりなく疲れてもいないので、そのぶん早起きして働く事にしたのだ。
働くと言えばハーピィ代表チームも今日のセンシャの為にもう動き出しているだろう。例によって俺たちからは免除を伝えているが、アイドルチームとして集客が見込めるイベントを彼女たちが見逃す筈もない。オーク代表の様に自主的にスタジアムを借り上げ、実施するらしい。
「確かに見たい見たくないで言えば、凄く見たいもんな……」
煩悩を捨て去るように、俺は持ち上げていたウエイトを床に降ろす。水着姿で相手チームが保有する馬車を洗うセンシャ……。罰ゲーム的なお色気イベントかつ元をただせばガルパン好きのクラマさんがダジャレ的にサッカードウに付け足した慣習だが、可愛い女の子が泡まみれになって何かをゴシゴシする光景と言うのはショーとして人気がある。グラビアアイドルさんのイメージビデオでも高い確率で存在するくらいだ。
「あれ? ショーいたんだ!」
車とお風呂、どっちを洗う方がメジャーなんだろう? と考える俺にそんな声がかかった。
「ああ、ツンカさん! 早いっすね!」
ジムの入り口に立ちこちらを見ていたのはツンカさんだった。ちなみに俺の事をショーと呼ぶのは今のところ彼女かリストさんで、もちろん見せ物のショーではなく俺の名前をアメリカンなあだ名っぽく縮めたものだ。
「遊びに行く前に一通りやりたくって……。DFを背負えるようにならないとね!」
筋トレをやる格好――上はジャージに下は短いトレーニングパンツだ。普通のサッカー用ユニフォームにタンカースジャケットにと、地球の文化を伝える際のクラマさんの情熱は主に服装方面に集中しているな!――でいてもアメリカンギャルのテイストを残すデイエルフは、ウインクして部屋の中央へ向かう。
「ああ、WGの時とは身体の使い方が違いますもんね」
彼女のトレーニングの補助をすべく、俺も同じ方向へ向かいながら言った。
「イエス! ザックコーチとワイフがメニューを考えてくれて!」
ツンカさんはそう言いながら横たわり、まず柔軟体操から始めた。ちなみにワイフとはザックコーチの奥様、ハーフミノタウロスのラビンさんだ。彼女はクラブハウスの食堂のコック長であり、主に食事や栄養補給の面でチームを支えてくれている。
のみならず最近はヨガ教室の先生としても活躍していて、そちらは選手だけでなくその家族や一般客にも大人気だ。ヨガと言えば美容体操のイメージが強く確かに選手以外はそれ狙いだが、インナーマッスルを鍛え体幹を強くする効果もある。
ツンカさんはこれまでWGとして活躍してきたが今後はIH、つまりインサイドハーフとして戦って貰う予定だ。ウインガーとして使ってきたのは素早く走り相手をドリブルで抜き去る能力だが、中央のMFは運動量と細かくターンする動きが必要とされる。よって必要な筋肉も違うのだ。
しかも彼女はMFでありながら相手を背負いボールをキープし、一人でカウンターのシチュエーションを作る役割も期待されている。そりゃかなりのトレーニングが必要だ。
って他人事みたいに言ったけどコンバートを打診したのは俺だけどな!
「朝は、パーソナルトレーニングで、午……後は、遊びに出るって! 普通の、練習日よりハード、じゃないですか!? しかも昨日は試合だったのに!」
俺は彼女の足を持って身体の方へ押し込みながら訊ねる。柔軟体操は身体の稼働域を広げるだけでなく、全身を暖める目的がある。それこそIHヒーターみたいにムラがあってはならない。
「あぁん! うん……ツンカは……若いから、大丈夫! ショー、こっち、もっと強くして?」
ツンカさんは悩ましい、ちょっとムラムラしちゃいそうなあえぎ声を漏らしながら答えた。だがこれはあくまでも施術なので大丈夫です!
あと若い選手はついついオフで羽目を外しがちだけど、今週末もホームで試合だしさっきも口にした様に普通の練習日は以外と暇で負荷も低いし彼女はしっかりしてるしそっちも大丈夫でです!
……たぶん。
「ショー? このままツンカにのしかかってきて?」
「ええっ!?」
大丈夫じゃないかもしれない!
「そしたら足で押し上げるから」
「あ、そういう筋トレですね」
俺は彼女の言葉ですぐ誤解に気づき、指示の通りに動く。地球のジムだと重りを足でぐーっと押して太股を鍛えるマシンがあるが、それを人力でやるようなモノだろう。
「ショーは、今日も……仕事……なの!?」
ツンカさんは足を限界まで折り畳み、その後は全開の直前まで伸ばして俺を上げたり下げたりする。真面目だ。
「あ、はい。これも……じゃなくて今日も仕事です!」
真面目なのは素晴らしい事だが、ウエイトである俺を目一杯したまで引きつけることで自ずと俺の顔と彼女の顔が近づき気不味い。力を入れる度に漏れる吐息と動きがシンクロして、何かそういう体位のように思えてしまう。
「ショー、働き、過ぎ……だよ?」
「いや、そう……でも! 俺は……この身を、これに捧げてますから!」
一方、俺も彼女に鳩尾を蹴られる様な形になっているので非常に発声し難い。だが本当に辛いのは負荷がかかっているツンカさんの方だ。俺が弱音なんか吐けない。
「あ、もう……限界かも……」
「いや、ツンカさんまだいけますって! あと一押し!」
「ちょっと何やってんすか!?」
その時、トレーニングルームの入り口から何やら慌てたような声が聞こえた。
働くと言えばハーピィ代表チームも今日のセンシャの為にもう動き出しているだろう。例によって俺たちからは免除を伝えているが、アイドルチームとして集客が見込めるイベントを彼女たちが見逃す筈もない。オーク代表の様に自主的にスタジアムを借り上げ、実施するらしい。
「確かに見たい見たくないで言えば、凄く見たいもんな……」
煩悩を捨て去るように、俺は持ち上げていたウエイトを床に降ろす。水着姿で相手チームが保有する馬車を洗うセンシャ……。罰ゲーム的なお色気イベントかつ元をただせばガルパン好きのクラマさんがダジャレ的にサッカードウに付け足した慣習だが、可愛い女の子が泡まみれになって何かをゴシゴシする光景と言うのはショーとして人気がある。グラビアアイドルさんのイメージビデオでも高い確率で存在するくらいだ。
「あれ? ショーいたんだ!」
車とお風呂、どっちを洗う方がメジャーなんだろう? と考える俺にそんな声がかかった。
「ああ、ツンカさん! 早いっすね!」
ジムの入り口に立ちこちらを見ていたのはツンカさんだった。ちなみに俺の事をショーと呼ぶのは今のところ彼女かリストさんで、もちろん見せ物のショーではなく俺の名前をアメリカンなあだ名っぽく縮めたものだ。
「遊びに行く前に一通りやりたくって……。DFを背負えるようにならないとね!」
筋トレをやる格好――上はジャージに下は短いトレーニングパンツだ。普通のサッカー用ユニフォームにタンカースジャケットにと、地球の文化を伝える際のクラマさんの情熱は主に服装方面に集中しているな!――でいてもアメリカンギャルのテイストを残すデイエルフは、ウインクして部屋の中央へ向かう。
「ああ、WGの時とは身体の使い方が違いますもんね」
彼女のトレーニングの補助をすべく、俺も同じ方向へ向かいながら言った。
「イエス! ザックコーチとワイフがメニューを考えてくれて!」
ツンカさんはそう言いながら横たわり、まず柔軟体操から始めた。ちなみにワイフとはザックコーチの奥様、ハーフミノタウロスのラビンさんだ。彼女はクラブハウスの食堂のコック長であり、主に食事や栄養補給の面でチームを支えてくれている。
のみならず最近はヨガ教室の先生としても活躍していて、そちらは選手だけでなくその家族や一般客にも大人気だ。ヨガと言えば美容体操のイメージが強く確かに選手以外はそれ狙いだが、インナーマッスルを鍛え体幹を強くする効果もある。
ツンカさんはこれまでWGとして活躍してきたが今後はIH、つまりインサイドハーフとして戦って貰う予定だ。ウインガーとして使ってきたのは素早く走り相手をドリブルで抜き去る能力だが、中央のMFは運動量と細かくターンする動きが必要とされる。よって必要な筋肉も違うのだ。
しかも彼女はMFでありながら相手を背負いボールをキープし、一人でカウンターのシチュエーションを作る役割も期待されている。そりゃかなりのトレーニングが必要だ。
って他人事みたいに言ったけどコンバートを打診したのは俺だけどな!
「朝は、パーソナルトレーニングで、午……後は、遊びに出るって! 普通の、練習日よりハード、じゃないですか!? しかも昨日は試合だったのに!」
俺は彼女の足を持って身体の方へ押し込みながら訊ねる。柔軟体操は身体の稼働域を広げるだけでなく、全身を暖める目的がある。それこそIHヒーターみたいにムラがあってはならない。
「あぁん! うん……ツンカは……若いから、大丈夫! ショー、こっち、もっと強くして?」
ツンカさんは悩ましい、ちょっとムラムラしちゃいそうなあえぎ声を漏らしながら答えた。だがこれはあくまでも施術なので大丈夫です!
あと若い選手はついついオフで羽目を外しがちだけど、今週末もホームで試合だしさっきも口にした様に普通の練習日は以外と暇で負荷も低いし彼女はしっかりしてるしそっちも大丈夫でです!
……たぶん。
「ショー? このままツンカにのしかかってきて?」
「ええっ!?」
大丈夫じゃないかもしれない!
「そしたら足で押し上げるから」
「あ、そういう筋トレですね」
俺は彼女の言葉ですぐ誤解に気づき、指示の通りに動く。地球のジムだと重りを足でぐーっと押して太股を鍛えるマシンがあるが、それを人力でやるようなモノだろう。
「ショーは、今日も……仕事……なの!?」
ツンカさんは足を限界まで折り畳み、その後は全開の直前まで伸ばして俺を上げたり下げたりする。真面目だ。
「あ、はい。これも……じゃなくて今日も仕事です!」
真面目なのは素晴らしい事だが、ウエイトである俺を目一杯したまで引きつけることで自ずと俺の顔と彼女の顔が近づき気不味い。力を入れる度に漏れる吐息と動きがシンクロして、何かそういう体位のように思えてしまう。
「ショー、働き、過ぎ……だよ?」
「いや、そう……でも! 俺は……この身を、これに捧げてますから!」
一方、俺も彼女に鳩尾を蹴られる様な形になっているので非常に発声し難い。だが本当に辛いのは負荷がかかっているツンカさんの方だ。俺が弱音なんか吐けない。
「あ、もう……限界かも……」
「いや、ツンカさんまだいけますって! あと一押し!」
「ちょっと何やってんすか!?」
その時、トレーニングルームの入り口から何やら慌てたような声が聞こえた。
0
あなたにおすすめの小説
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる