D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが

米俵猫太朗

文字の大きさ
558 / 700
第三十一章

生半可な気持ちでは……

しおりを挟む
 全体に向けての具体的な助言はあまり出来ず、気合いを入れた他は若干名に幾つかのお願いをしただけでロッカーアウトとなった。
「あの、ナリンさん?」
 俺は選手と他のスタッフが出て行き、ナリンさんと二人きりになったのを確認してから彼女を呼び止める。
「どうしたでありますか?」
 俺が翻訳魔法のアミュレットを外すのを見て、語学も堪能なエルフはすぐその意図を察し日本語で返事する。
「実は、その……」
「今日はいろいろと上手く行っていませんが……そういう日もあるでありますよ!」
 しまった。先に慰められてしまった。しかし聞きたいのはその手の言葉ではなかったのだ。
「いや、そうじゃなくてですね。うーん、聞き辛くなってしまった」
「何でも聞いて欲しいであります! 自分とショーキチ殿の仲ではありませんか!」
 そう言われると更に苦しい。だがこちらが遠慮する事は、あまり彼女に喜びをもたらさない。それは今までの経験で理解している。仕方なく俺は口を開いた。
「それではですね。さっき、シャマーさんが『生着替え』って言いましたよね? じゃあ『生』じゃない着替えって何ですか!?」
 俺は一度、更衣室を出る時にキャプテンからかけられ、その後もずっと脳裏の残っていた疑問を口にした。
「……はい?」
「生じゃなかったら『焼き着替え』とかもあるんですかね!? それとも翻訳アミュレットのエラーで、本当はもっと違うニュアンスだったとか!?」
 決して見たかった訳ではないが、シャマーさんが口にした以上は何か卑猥な意味があるのだろう。その点では俺の、あのドーンエルフに対しての信頼は揺るがない。
「しょ、ショーキチ殿は……」
「はい?」
「自分が思っていたより、ずっと……」
 いつの間にか俯き、そう呟くナリンさんの両肩は震えていた。何かとてもヤバイ、エルフ語の深淵に触れるような事を聞いてしまったのだろうか?
「ずっと?」
「ずっと大物であります! あーおかしい!」
 ナリンさんはそう言って顔を上げ、目の端に浮かんだ涙を拭った。どうも下を向いている間、笑っていたらしい。
「ええっ!? おかしいですか?」
「だってずいぶん深刻に聞いてくるから、何か大事なことかと!」
 美貌なコーチは破顔一笑しながらもその美を保っていたが、口調は珍しく崩れていた。
「いや気になりますし!」
「そ、それでしたらこれを!」
 少し傷ついた気分で話す俺を片手で制し、ナリンさんはもう片方の手でロッカーの端末を操作した。
『さあ、後半だよー!』 
『一人足りない分、みんなが声援で11人目の選手になってくれよな』
 するとハーフタイム中はオフにされていた魔法のモニターが点灯し選手がピッチへ入っていく姿と、ノゾノゾさんとステフの声が流れた。おそらく後半開始に向けて観客を煽っているのだろう。
「これが?」
「今、ご覧になられているのが魔法による『生放送』、過去の試合の記録等を見られるのが『録画』であります」
「えっと、つまり?」
 俺自身、自分がだいぶ察しの悪い生徒であるのを自覚していたが続きを促す。
「今現在の様子が『生』で過去の記録などが『生でない』で状態。つまりシャマーは撮り貯めた映像ではなく、着替えを行っているその時に直接見るか? と訊ねたのであります」 
 しかしナリンさんは嫌な顔ひとつせず――というか非常に嬉しそうだ――説明をし終えてくれた。
「あーなるほど。いや撮ったりしませんけど!」
 なるほど合点がいった。言われてみれば自分のいた世界でも普通に『生放送生配信』といった言葉があった。つまりそれの着替え版という事か。
「ショーキチ殿、こちらからも質問、良いでありますか?」
「はい、どうぞ?」
 ふむふむと頷く俺に、更に笑顔のエルフが問う。
「ハイかイイエだけで答えて欲しいであります」
「ハイ」
「ショーキチ殿は、選手の着替えを盗撮するのをもう辞められましたか?」
「えっ!? それは……いや待って下さい!」
 俺はその設問の罠にたちどころに気づき、慌てて抗議する。
「ハイって答えたらもう辞めたけど以前は盗撮していたのを認めてしまうし、イイエって答えたらまだ盗撮している事になる!」
 そう、これは有名な『イエスノー殺し』の設問だった。説明ができる状況なら
「辞めるも何も行った事がないので辞められない。そういう意味ではノーです」
等と言えるが、本当にハイかイイエしか言えない状況なら詰みだ。それにもし聴衆がいて、どのように応えるべきか悩んだりしたら、それだけで悪印象を与えたりもする。
「質問に罠が潜んでいるから異議アリ! ですよ!」
「クックック……。ご存じでありましたか」
 ナリンさんは少し悔しそうに、しかしそれ以上に楽しそうに笑った。
「ナリンさんも意外と意地悪ですね……」
「すみません、以前リュウに教えて貰った悪戯であります」
 ナリンさんはそう言って頭を下げた後、モニターに目をやり
「そろそろ行きましょう!」
と俺を先導する。
「そっかー。でもデイエルフでもそういう性格の悪いこと、考えられるんですねー」
 俺も彼女を追いながらボソリと呟いた。しかしまあ、ルーナさん情報だとモーネさんもそういうタイプだもんな。
「あっ……。あれ? モーネさんからじゃなくて?」
「いえ、リュウからであります。モーネはもっと素直でしたし」
 ふと疑問に思って訊ねたが、ナリンさんは迷うこと無く応えた。
「素直!? 素直ですか……」
 そんな子がエルエルをひっかけたりできるモノだろうか? それとも軍隊経験が彼女を変えてしまったとか? いやそれとも……
「自分は! リュウからよりも、ショーキチ殿から教わった事の方が多いであります!」
 突如、ナリンさんが立ち止まり俺の両手を握った。
「はい? あ、そうですか。光栄です」
「ええ。では行きましょう!」
 ナリンさんは俺の返事を聞くとすぐに身を翻して走り出す。何だ? 今の?
「まあいっか……」
 考える事は他にもあるし、そろそろベンチだ。俺は気持ちを切り替えて後半に挑む事にした。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

処理中です...