D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが

米俵猫太朗

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第三十三章

塔に到着

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 学生コンビがエルヴィレッジを去る頃には、残りの皆の準備が整っていた。俺たちブリーフィングルームでフェリダエチームの映像を確認し――例によってチーム公式スーツに着替えてのミーティングである。みんな結構、型から入るタイプだよね――ニャンダフル連邦共和国での移動や過ごし方についての注意点などを共有した。しかる後、船で王城まで行って魔法陣による瞬間移動の魔法で猫の国へ到着、という流れである。
 以前インセクターの首都「チャプター」へ向かった時と同じ様に、チーム公式船が通る運河の両岸には見送りのサポーターやファンが詰めかけていて、横断幕や声援でアローズを送ってくれた。
 いや、同じ様というのは間違っている。今回の送迎者は前回を軽く越えており、魔法撮影機材を持った報道陣も多かった。時間帯の違いもあるだろうが、それよりもチームの好成績がこれを呼び込んだ……のだと思いたい。
 アローズのここまでの戦績は4勝2敗2引き分けの勝ち点14。俗に残留の為に必要な勝ち点は試合数の少し上と言われており、これは不思議とどの国のリーグでも同じだ。いま俺たちが戦っているこの異世界サッカードウ1部リーグの試合数は22試合なので、そう考えるとあと8~12点くらいが必要なラインか。
 つまりもう3勝ないし4勝すればクリアだ。とんでもなく楽観的な言い方をすれば、前半のこりの3試合、フェリダエ、ドワーフ、ミノタウロスに3連勝すればノルマをクリアしてしまう訳である。それを考えれば今シーズンここまでのアローズはかなりの好成績と言えよう。
「ショーキチ監督! 目線ください!」
 その要因を俺だと思ってくれているのだろうか、橋の上を見るとメディアの一群が俺に声をかけ様々な機材を向けていた。浮ついた顔を見せると何かあった時に手のひら返しが怖いが、無愛想にするのも印象が良くない。俺はアルカイク・スマイル――サウジアラビアのチームっぽい名前だが違う。昔の仏像がしている、謎めいた微笑みだ――を浮かべながら、彼らに手を振った。
 フェリダエチームに惨敗しても、菩薩の様な心で報道してくれる事を祈りながら……。


 いつもの通りシャマーさんが魔法陣の調整を行い、瞬間移動の魔法は滞りなく俺たちを転送した。目には見慣れた、しかし身体にはいつまでも慣れない光と感覚が全身を包み、気付けばもうそこは遙か遠い異国だ。
「エルフ代表のみなさま! ようこそ、ニャンダフル連邦共和国ニャルセロナへ!」
 まず耳に入ったのはそんな歓待の声。ついで、視覚を取り戻した俺の眼前には左手に賑やかな街並み、右手に草原が見下ろせる素晴らしい見晴らしがあった。その草原から吹いてくる風が俺の顔やエルフ達の髪を撫で、大小色とりどりのテントが並ぶ街の方へ走り去っていく。どうもこちらの魔法陣は非常に高い、しかも外と内を分ける外壁の無い所に設置されているらしい。強い突風でも吹けば落とされそうでとても恐ろしい。
「ショーキチ監督は初めまして、ですね? エルフ代表のコーディネーターを努めております、ニャデムと申します」
 声の主はそんな危険など意にも介さないかのように、床の端に立っていた。見た目は30歳前後の人間の女性で緑の髪を腰まで伸ばし、同じ色の長いローブを身に纏っている。そんな服を着ていれば風を受け易くて危なくないか? という懸念が第一に来るが、それよりも気になる事が別にあった。
「初めまして、ショーキチです。よろしくお願いします、えっと……なんとお呼びすれば良いでしょう?」
 ごく普通に挨拶を返しながら、俺は戸惑いを隠せないでいた。その声に含まれる響きに気付いたのだろう、ニャデムさんは見た目にそぐわない低く渋いダンディな叔父様風の声で応えた。
「はっはっは。ショーキチ様は私が人間でない事にお気づきなのでしょう。先にお伝えしておきましょう。私の正体はこの『ニャベルの塔』に仕える魔獣なのです」
「ニャデムはねー。変身術の名手なんだよー!」
 そんな声を共にシャマーさんが飛んできて、俺の肩に顎を載せた。
「はあ。じゃあ今の姿も?」
「左様でございます。本来の姿というのはありませんが……」
 そう言うニャデムさんの全身が薄暗い光を放ちながらスライムの様に溶け、再び盛り上がっていく。
「うぃ!?」
 と叫ぶ間にもその固まりは形を整え、一瞬後には俺と同じくらいの大きさの、黒豹の姿をとっていた。
「強いて言えば、これが己にとって慣れた姿でございます」
 大きな猫型生物は牙が並んだ口にそぐわない、丁重な口調で言った。いや口と声が合わないのはさっきからではあるが。
「ニャデム、声帯模写だけは苦手なんだよねー」
 俺の思考を読んだのかシャマーさんが彼? へ近づきその喉を撫でる。
「面目ない」
「あの、ニャデムさんとシャマーさんはお知り合いなんですか?」
 俺は小柄な女性が大型肉食獣を手懐けている風景に感動しつつも、気になっていた事を訊ねた。
「うん。私が手頃な塔を探していた時に見つけてー、いにしえの契約から解放したんだよねー」
 エルフ界きっての天才魔術師は凄い事をこともなげに言った。マジかすげえ。彼女、確かインセクターの女王とも知己だったよな? わたし塔の生まれウォーロック育ち、魔獣そうな奴は大体友達ってことか。
「そうなんですか。と、言うことはここは塔で?」
 俺はなるべく意識から外していた周囲の風景へ勇気をもって視線を飛ばした。見渡してみるとここの床は20F建てクラスのビルの様な塔の上部から突き出しており、大きなゲートで塔の本体と繋がっている。そしていつの間にか他の選手スタッフはみなそのゲートから中へ入ってしまった様だ。
「左様で。今は観光用に改造されておりまして、色々とご覧頂ける様になっています。ささ、どうぞ」
 ニャデムさんはそう言うと黒豹の姿のまま、俺たちの前に立って歩き出した。
「じゃ、行こっかショーちゃん!」
 そう言いつつシャマーさんが俺と腕を組み後へ続く。本来ならばふりほどくべきだが、俺は別の事が気になってそれを失念していた。
 何故って、前を歩く案内役の股間には、見事な『ふぐり』がついていたからだ。
 猫の金玉って、なんか見惚れてしまうよね……。
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