D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが

米俵猫太朗

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第三十四章

弱者の小細工と王者のこだわり

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 太陽が真上を少し過ぎた頃。審判のドラゴンさんが銀色に光る小さな楽器をくわえ、キックオフの笛が鳴らされた。
『クリアー!』
 試合はフェリダエボールで開始。早速、あちらから見て右サイド前方へパスが出されザックコーチが大声で怒鳴る。
『分かってる……』
 そのボールをルーナさんがジャンプの最高点でヘッドで外へ弾き出す。フェリダエは最初からガンガン攻めるつもりでボールも選手も前へ前へ、の構えだ。序盤から圧倒し派手に攻めて攻め倒す。横綱相撲とも違う、サッカードウ王者の王者らしい選択である。
「ナイス、ルーナさん! ごめんだけどスカウティングと違ったら……」
「うん。随時、伝えに来い、でしょ?」
 前半はアローズの左サイドがチームのベンチ前だ。テクニカルエリアの端まで行けばハーフエルフの左SBに声をかけられる。しかも彼女は日本語が話せるので、ナリンさんの通訳抜きでコミュニケーションが可能だ。ちょっとした僥倖だな!
 と言うのは嘘で、最初からそれを狙ってこちらのエンドを取った。本当の幸運はアウェイベンチがメインスタンドから向かって右にある事の方だ。
 何故かと言うと、ここには副審さんの中の1名がすぐ側にいるからである。普通、副審2名はセンターラインを中心に対角線に位置する。なのでどちらかのベンチ前に片方がいれば、もう片方は逆のチームのすぐ前にはおらず、ピッチを挟んだ反対のサイドにいる事となるのだ。
 今日の場合、我々ベンチの近くには副審さんがおりフェリダエベンチの前にはいない。つまり俺達は簡単に副審さんとコミュニケーションが取れるが、相手チームはできないのである。
 これは些細な事かもしれないが、シーズンを通せば塵も積もれば山となる。積み重ねれば大きな差だ。余談だがリーブズスタジアムではそれを考慮して、ちゃんとホームチームのベンチを副審さんのおられる側にしている。特にオフサイドトラップを多用するアローズにとっては死活問題とも言えるだろう。
 一方で、こういう細かいディティールを無視しても勝ちまくっているフェリダエ族というのが、やはり強者なんだよな……。

 そんな事を考えている間に、フェリダエチームは強者の強者である部分を出してきた。DFライン5名――今日はクエン、リストの2CBとガニアさんをスイーパーに置いた3バックだが、左WBのルーナさんと右WBのティアさんが下がると5バックにもなる――の中で最も身長が低い、ティアさんのエリアへ立て続けに2本のハイボールを打ち込んできたのである。
「ティアさん、リストさんと上手くコミュニケーションとって!」
『ティア! リストをよく見て!』
 どちらも無難に対処できたが俺は早速、声を張り上げナリンさんが通訳する。ただ俺達がルーナさんと近いと言うことはティアさんとは遠いという事である。たぶん、聞こえていない。
「これがプレデターの振る舞いか。イヤになるな」
 俺は思わず愚痴を吐く。流石キング・オブ・捕食者の猫族。開始5分で弱点を突いてきた。しかもルーナさんサイドとティアさんサイドを比べた上で、だ。
「ティアは頭が良いですし、リストも負けはしない筈であります」
 その弱音を聞いたナリンさんは励ますように言った。
「そう願いたいですね。そうでなくても中盤が大変ですし」
 俺はそう答えながら、より劣勢を強いられるエリアの方へ目をやった。
『中はギュっと締めたままにして下さい! 外に出す分は私たちが汗を流しますから!』
『はい、ありがとうございます!』
『ダリオにゃん、言い方がエッチだにゃん……』
 俺が見た先ではダリオさん、シノメさん、マイラさんが早くも身振り手振りを加えて何か話し合っていた。本来であれば今日の中盤はボランチにマイラ、シノメ、攻撃的な位置にダリオ、ツンカ、それに両サイドのWBを加えた6名である。対するフェリダエ族のシステムは中盤が逆台形の1442。4枚の中盤に6枚で対抗して優位を得る予定であった。
 しかしアローズはWBが最終ラインに吸収されてしまった結果、実質4名に減ってしまっている。MFの数で言えばまだ同数ではあるが、そもそも同じ数でフェリダエを押さえる事ができれば世話ないのである。できるようになったら強豪チームだ。
 取り敢えずそこまで至っていない我々の中盤は攻撃的MFの2名が守備も頑張る! という根性論で乗り越えるしかなかった。実の所、そこまでは想定の範囲内である。
 問題はどのエリアをカバーするか? なのだが……。

「前半20分、ダリオがニャニーニョに逆を取られ突破されるがマイラがクリア。同25分、シノメと対峙したニャバウドを帰陣したツンカが背後から挟むも反則を取られる。続く26分。そのニャバウドの左足から放たれたFKをボナザがフィスティングでかろうじて弾いてエンドラインへ逃げる……」
 この時、ベンチでアカサオが魔法タブレットへ記録する試合経過にはフェリダエチームの攻撃の様子だけがひたすら残されていったらしい。因みに双頭の蛇人である彼女達にはブラインドタイピングは必要ない。片方の頭が画面を、片方の頭が文字盤を見て打てるのである。しかし今日は試合展開を見る為の第三の頭が必要になりそうだった。
『あーもう! いい加減、こっ、こっちの攻撃シーンも欲しいよぉ!』
「そうだねー。フェリダエの記録ばかりで飽きてきたねー」
 サオリさんが何事か叫び、アカリさんが淡々と答えた。潜入担当側の言葉は恐らくゴルルグ族の言語だが分析担当は日本語だ。それで、何となく会話の状況が伝わった。
「大丈夫、そろそろこちらのチャンスが来ます」
 俺は彼女達の脇に立ちピッチを見ながら呟いた。他のコーチ陣は大忙し――ジノリコーチやボナザコーチは守備の指示に、ザックコーチとナリンさんはもはや指示と言うより励ましに――だったので、このゴルルグ族が俺の一番の話し相手だったのだ。
「そっすよね」
「ええ」
 俺とアカリさんは恐らくチームで最もサッカードウを『ゲーム』として分析している存在だ。どこか突き放して試合を見ている時が多々ある。
 そんな俺達が共通してチャンスが来るだろうと考えていたのがこの瞬間だった。しかし、実際に訪れたのはチャンスどころではなかった……。
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