D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが

米俵猫太朗

文字の大きさ
671 / 700
第三十八章

死の4分

しおりを挟む
 散髪サンバが滅茶苦茶に散らかしたゴミと空気を整え、改めて断髪式をやり遂げるには結構な時間がかかったらしい。前も借りた部屋――ツンカさんと一緒に夜遅く、城を訪れた時と同じのだ――のドアがノックされたのは、俺が会場を退出してから小一時間が過ぎた後だった。
 らしい、というのはアレだ。俺はこの部屋に逃げ込んですぐベッドに倒れ込み夢も見ない眠りを貪っていたから。
「……さん? ショウキチさん?」
 そんな訳で目を覚ましたのは耳元でそんな色っぽい声を聞いた時だった。
「はい? あ、ダリオさん!? もうそんな時間ですか!?」
 目の前に悩ましげなダリオさんの顔と谷間が見えて、慌てて身を起こす。いつの間にやら彼女はベッドのすぐ横まで来て、俺の身体を揺らしていたのだ。
 あと別の物体も揺れていたけどノーコメントで。
「ええ。報道陣にも休憩が必要なのでインターバルをとっていますが、あと10分ほどで発表会の開始です」
「お疲れさまです」
 彼女の疲労の大半は、あの自由な父親――恐ろしい事にこのエルフ国の国王でもある――のやらかしを収拾し、彼に説教する事で生じたものだろう。家族関係に悩む事は俺にはもう無いがチームにとっての大口スポンサーや親会社の社長が余計な口出しや手出しをして来ている、という部分だけでも相当な重みだ。俺は慰労の言葉を投げた。
「交代でここで休ませて下さい」
 ダリオさんはそう言って俺の横にゴロンと寝転がった。こちらは物理的な重みがプルン、と器から更に移されたプリンのように震える。
「あっそんな、俺の寝ていた後なんて! せめて退きます!」
 姫様にこんな所でお休み頂くなんて不敬の極みだが、隣で寝るのはそれに不貞も加わる。俺は慌ててベッドから降りようとしたが自分のいる側は壁に面しているし、足を降ろせるのはダリオさん側だ。
 そちらから降りようとするなら……既に横たわった彼女の身体を跨ぐ事になる。
「別に構いませんよ、10分くらいなら。そうした後は、発表会に出席して頂かないといけませんが」
 逡巡した俺の顔を見てダリオさんはからかうように笑いながら言った。そうした後ってどうした後だよ!
「いえすぐ行きます! ただちょっと上を失礼しますが……」
「ええ、どうぞ」
 どうぞ、と口にしながら彼女はベッドの上で甘い吐息をはきつつ大きく伸びをし、ただでも少なかった俺が手足を置けそうな空間は更に狭くなった。というかただの伸びでそんな声、出ますか!? あとどうぞってどういう意味で!?
「あれ? ちょっと、無い……」
 俺の手は困ったようにスペースを探し、ダリオさんはその手が行く先へ身体を寄せる。どれほど重責を担っていようと彼女もドーンエルフなんだな!
「あん」
「ああ、すみません!」
 そして、当然起こるべきアクシデントが起こった。ダリオさんの身体を越える際に自分を支える用に伸ばした手が、彼女の胸に追突したのだ!
「もう、ショウキチさんのえっち……」
「許して下さい! 触る気はなかったんです!」
 俺は必死に弁明をする。サッカーでも倒れそうな時に出す手、いわゆる『支え手』についてはボールを触ってしまってもハンドを取る審判さんは非常に少ない。今だって、ダリオさんの身体に覆い被さらないよう伸ばした手がダリオさんの大きなボールに触れてしまっただけなので、これをハンドリングの反則にするのは厳しすぎる!
 って何を言っているの俺!?
「だ、め。でも特別に5分間、添い寝して撫で撫でしてくれたら許します」
 しかし今日の審判は容赦なかった。しかも俺を5分の懲役刑に処すという。これはラグビーにおけるシンビン――10分間だけ一時退場する罰だ。サッカーにも導入の噂があるかどうなるだろう?――みたいなものか。
「分かりました。でも時間はどう……」
「えい」
 俺の疑問にダリオさんは腕を振って答えた。すると彼女の右手の指輪が勢いよく外れ壁に張り付き、空中に5分タイマーを照射し出した。
「あ、そう言えばそんな感じの魔法のアイテム、お持ちでしたね」
 時折、お姫様がこの道具で自分のスケジュール等を確認していたのを俺は思い出した。王家としての公務、エルフサッカードウ協会会長としての事務、そしてサッカードウ選手としての練習と試合に追われる日々だ。これくらいの便利ツールが無ければやってられないだろう。
 ……そう考えれば、激務に疲労している彼女を労ってあげるくらいした方が良いのかもしれない。今ちょっとおかしなテンションなのも、忙しい上に父親の暴走の対処で疲れているからだろうし。
「えっと、では頭で良いんですよね? よしよし、ダリオさんはよくやってますよ」
 俺はそう言って彼女の豊かな金髪をそっと撫でた。
「『ダリオさん』じゃなくて~」
「ダリオは良い子だね。頑張り屋さんだよ」
 褒める時は躊躇い無くやり切る。これは常々、心がけていることだ。俺は彼女の要求に応えて言い直した。毒を食らわば皿までだしね。
「もう、口が上手いんだから! じゃあこっちは?」
 しかしドーンエルフは食ってはいけないモノを俺の口にねじ込んできた! つまり俺と唇を重ね情熱的なキスを始めたのである!
「(流石にちょっとこのシチュエーションはマズいのでは!?)」
「ん……。残り4分30秒だけだから……」
 ダリオさんは一瞬、唇を離してそう呟くと身体をぎゅっと寄せ再び舌を絡め始めた。その結果、俺の左腕は彼女を腕枕し、右手は導かれるまま胸の上に置かれているような状態になる。
 時間……そうか、時間制限があるならなんとかなる……なんとかする!
 俺はその後、今までの人生で最も長い4分を耐え、
「あの、やはり5分延長で……。私、準備はできていますし5分でも……」
と謎の要求をするダリオさんを振り解いて部屋を出た。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

処理中です...