高貴なオメガは、ただ愛を囁かれたい【本編完結】

きど

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【ヤンデレβ×性悪α】 高慢αは手折られる

第二十七話

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カァーカァーと遠くで鳴く烏のさえずりで目が覚めた。部屋はオレンジの柔らかな西陽で照らされている。どれくらい寝ていたのか、ベッドには私だけ。裸のままだったが、後始末はしてくれたのか素肌はサラリとしていた。

レースカーテンがかかる窓からは、オレンジ色の空が見え、もう夕刻に差し掛かっているのが分かった。夜のパーティーと、エイヴィア伯爵との商談には、間に合う時間で良かったと安堵し、着替えようと寝室から主室に出ようと扉を押す。

「え?」

ドアノブを下げ扉を押しても開かない。引き戸タイプだったかと思い引いてみても扉が開く気配は無かった。

どう言う事だ?

状況が分からず戸惑っていると、主室の方から人が入ってきた物音がした。本当は心の準備をしてから、顔を合わせたかったが、状況が状況なので仕方ないと割り切る。今し方、戻ってきた人物に、この扉を開けてもらおうと思い、扉に向かって声を張り上げた。

「フェナーラ!扉が開きません!そちらから、開けてくださいっ」

昨晩の負荷が残っていたのか、少し大声を出しただけで喉はジンジンと痛み、最後の方は声が掠れた。それでも私の声は届いたようで、扉の近くで足音が止まる。

「起きたのか。今晩のパーティーは出席しなくていいから、そこで留守番してろ」

一方的に命令され、はたと気づく

扉に細工をしたのはフェナーラだということに。

「何故ですか?私も参加します!ここから出してください」

「パーティーが終われば自由にするから、それまで待て」

フェナーラが一方的に話しを切り上げた後、遠のいていく足音が聞こえ、私は焦った。
このままでは、パーティーだけでなくエイヴィア伯爵との商談もダメになる。

「フェナーラ待って!ここを開けて!」

扉をガンガン叩きながら、叫んでも、結局、向こう側から返事はなかった。

* * *
夕日が沈み、夜空に星が輝く時刻になっても扉は開かなかった。

ー商談は、明日のパーティーの舞踏が終わったタイミングで中庭に来てくれますか?

パーティーは最悪出られなくても、商談にはなんとしても行きたい。窓から出ることも考えたが、ここは屋敷の3階。私の身体能力では怪我だけじゃ済まないだろう。
エイヴィア伯爵から提示された時間なら、まだ間に合うのに、ここから出る術を私は持ち合わせていない。

こんな時、他のアルファならどうするのだろう?出来損ないの私と違って皆、この状況を打破するんじゃないか。

そう考えると、何もできない自分に自己嫌悪するしかなかった。扉を背に三角座りになり洋服代わりに纏っていたシーツを握りしめる。
アルファとしての自尊心を自分を磨くことでなく、他のアルファと寝ることで埋めていた。だから、結局、大事な場面で何もできない。
アルファが私に欲情して、野獣のように一心不乱に腰を振る姿を見て、私はアルファに必要とされていると思いたかった。そしてそんな自分はアルファにとって価値がある存在なのだと必死に言い聞かせていた。でも、そんなのまやかしで、実像は昨晩、フェナーラから言われた一言が全てだろう。

ーアルファ相手なら、簡単に股を開く

私と寝たアルファ達にとってはは、都合のいい制欲処理の道具か、強制された苦痛の行為でしかなかったのだろう。
本当に自分が嫌になる。また自己嫌悪の底なし沼に落ちそうになった時、主室に人の気配がした。そのあとすぐ「なんだこれ?」と声してから

「セラフ様、いらっしゃいますか?」

こちらに呼びかける声音には覚えがあった。

「伯爵?なぜ、ここに?」

「説明は後でっ…よいしょ、まずはここを出ましょう」

途切れ途切れになる声の合間には、何か大きなものを引きずる音がした。すこし経ってから、扉がゆっくり開き向こう側には、額に汗をかいたエイヴィア伯爵の姿があった。

「セラフ様がパーティーに来ていなかったので、お見舞いにきたんです。まさか、監禁されてるとは思いませんでした」

エイヴィア伯爵の視線の先には、革張りのソファ。あれで扉を塞いでいたのか。

「すみません。これには事情があるので、どうか内密にしていただけませんか?」

監禁なんて外聞の悪いことが、誰かに知られたらフェナーラの顔に泥を塗ることになる。それに私は、これ以上フェナーラに失望されるのは避けたかった。

「それなら大丈夫です。セラフ様が私との商談やくそくを果たしてくれれば、私は充分なので」

相変わらず人の良い笑みを浮かべているのに、エイヴィア伯爵の視線が昨日と違う気がした。上手く説明できないけれど、何か値踏みされている気がしたのだ。こうして来てくれたのだから、気のせいだと自分に言い聞かせる。

「ありがとうございます!すみません、急いで着替えますので少しお待ちいただけますか?」

「あぁ、実はこうして来たのは、商品の品質の関係で急ぐ必要があったからなんです。なので申し訳ありませんが、急ぎたいので、そのまま来ていただいてもよろしいでしょうか?他のお客様はパーティー会場にいるはずなので、誰かと遭遇する心配はないですよ」

そんなにデリケートな商品なのか。シーツだけの姿で出歩くなんて気が引けるが、伯爵の言う通り誰かと遭遇しないなら仕方ないと割り切るしかない。そう腹を括り「分かりました」と返事をして、私は伯爵に連れられ部屋を出た。
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