高貴なオメガは、ただ愛を囁かれたい【本編完結】

きど

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【ヤンデレβ×性悪α】 高慢αは手折られる

第三十話

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side.フェナーラ

「フェナーラさん、お待ちください」

腕を取られた方に視線を向けると、険しい顔をしたアルヴィがいた。俺を制止する声はアルヴィのものと思えないほど、低く険を含んでいた。

「悪いが、急いでるんだ」

その手を振り切ろうとしたが思いの外、力強く、そのままアルヴィと対峙する形となる。

「アルヴィ、離してくれないか」 

「会の開始までまだ時間があります。今乗り込んでも、現場を押さえられません。確実な状態でなければ言い逃れされてしまう。その失敗の責任をとるのはカリーノ様です。だから、勝手な行動は謹んでください」

本当は舌打ちしたくなるのを堪え努めて冷静に振る舞った俺に、アルヴィは事務的な口調で最後は語気を強めた。
ホールのタンゴの音楽が、ここまで聞こえる。この曲の次は最終曲のワルツだから、ダンスが終わるまで、あと10分はかかる。
アルヴィが言っていることが正論だと理解はしている。でも、セラフが傷つけられるのを知りながら手をこまねいて待つだけなんて、俺には出来ない。

「それなら、俺が全責任をとる」

だから手を離せと伝えてもアルヴィは揺らがない。学院時代から変わってないと思い込んでいたが、アルヴィもカリーノ様と同じように肝が据わって、一皮も、二皮も剥けたようだ。

「フェナーラさんが、どうやって責任を取るんですか?今回のことは、シャロル殿下からもお力添えをいただいているんですよ?いくらバナト商会といえど…」

全ては言わなかったが、一介の商人では役不足だと暗に言われたようなものだ。確かに、ここがエステートだったらバナト商会うちの力で何とかできたかもしれない。でもリドール帝国の規模の国の内政に、たった一つの商会ごときが口出しなんてできない。

「それでも、セラフを見捨てる訳にはいかないんだよ!」

「フェナーラさんが兄を想う気持ちは理解できます。」

感情が露わになる俺と、冷静なアルヴィ。どちらに分があるか明らかだった。

「でも、兄様あの人のことだ、アルファに抱かれるために着いていった可能性だってありますよね?」

「奥方は、セラフは騙されていたって言ってただろ!」

アルヴィは遠い目をしながら、冷たく言い捨てる。もしかしたら、セラフに言われた嫌味や、過去の行いを思い出したのかもしれない。
俺は咄嗟にアルヴィの言葉を否定したが、その疑念を捨てきれない俺もいた。

「騙されたのか、自分で着いていったのかなんて、どうでもいいです。あの人のアルファ至上主義は度が過ぎてたので、いつか痛い目を見ると思ってましたし。それに、もし騙されていたなら、あの人がヴィルム殿下にしようとしたことが、どれ程残酷なことか分かるんじゃないですか?」

躊躇いなくセラフを切り捨てる言葉を吐き出す。それは今まで澱のように腹に溜まっていた負の感情に違いなかった。
ヴィルム殿下にセラフがしたことも、それがアーシュの逆鱗に触れたことも知っている。でも、セラフはもう既に貴族位の剥奪と、ベータに嫁入りという制裁を受けている。
だから、今回のこととは別問題のはずだ。
俺は腕に力を入れた。

「うわっ…」

声を漏らしたアルヴィの体は、バランスを崩した。尻餅を着いて倒れ込んだアルヴィを横目でみつつも、俺はセラフの元に急ぐべく勝手口から外へ出た。

* * *
side.セラフ

「やっ…やめっ…うぷっ」

腹の中をかき混ぜられる不快感に耐えられず、胃酸が逆流して口の端から溢れた。

「あー、また吐いた。はっ…萎えるわぁ」

伯爵は萎えると言っている割には、私の上で腰を振るのは辞めない。それにバカの一つ覚えのように、ただ抜き差しをしているだけ。自分が気持ちよくなることしか考えていない、利己的な行為は最低としか言いようがない。なのに、体はオメガのフェロモンに反応し熱っていく。

こんな行為に、フェナーラ以外で感じたくないのに、心を裏切るように体は穿たれる刺激を喜ぶ。

「やだっ…やだっ…きもちわるっ」

そこまで言った所で乾いた音が響き、頬に痛みが走る。もう何度引っ叩かれたか分からない。頬がジンジンと熱くなり、口の中には血の味が広がっていく。

「はっ…。こんなに勃たせておいて何言ってんだよ?萎えるような言ったら叩かれるって分からないのか?頭悪いな」

私を詰る伯爵は、優越感に浸っているようにもみえた。

「伯爵、早く終わらせてくださいよ」「後がつっかえてますよー」などの野次を無視して伯爵は私に喋り続ける。

「にしても学院の時から、これだけ感度良ければ、関係続けてやったのに。そしたら、ベータ__バナト__#に抱かれずに済んだのにな」

「んっ…あなたに…はっ…抱かれつづける…やっ…ほうが、地獄だ…ん"」

また頬に張り手が飛んでくる。次は、鼻の中に血の匂いが充満し、鼻からタラリと血が流れる。
もう痛みには麻痺していて、それよりも腫れた顔をフェナーラに見せたくないと的外れな事を考える。どんな状況といえどフェナーラ以外に抱かれてしまった時点で、失望されるに決まっているのに。

「あーっ、イキそう。今回は、中に出させてもらうから」

今回は?フェロモンにあてられ上手く働かない頭では伯爵が言った言葉の意味を理解するのに数秒かかった。理解してから、嫌悪感で体中にゾワっと鳥肌がたつ。

ー気持ち悪い。気持ち悪い。やだ。絶対に嫌だ

伯爵の屹立を抜こうと体を捩り、手足をバタつかせるが、鎖で自由を奪われている状態では抵抗にはならなかった。
私がもがいている間、伯爵は一人でたかみまで登り詰めていく

「あー、イク。全部、受け止めろよ」

「やだっ抜いてっ…中はやめてっ」

伯爵の精が私の中に放たれる直前に、バンっと大きな音がしてから伯爵の仲間の戸惑った声が聞こえた。

「んぶっ」

そして私の上で腰を振っていた伯爵は、突如、私の上から吹き飛んだ。一瞬の出来事に目を瞬くと、伯爵から吐き出された残滓が床を汚す。それは横に伸びていたので、何者かに頭を横蹴りされたのだと分かった。

「セラフ…」

聞き覚えのある声で呼ばれて、私は凍りついた。愛しくてたまらないその人に、一番この現場を見られたくなかった。

『「本当にひどい奴。…でも、愛してるんだ。誰よりも。だから、俺以外に触らせたくない』

昨晩のフェナーラの言葉が耳にこだまする。

ーもう終わりだ。嫌われた。

そう感じた瞬間に、涙が溢れ止まらなくなった。
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