【完結】百怪

アンミン

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3章 怪異にまつわる雑談・雑考

05「飾り」

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・現代怪談話・伝聞

――――――――――――――――――――――――

とある医者の話。

ある倒れた患者が救急車で運ばれてきたのだが、
かなり弱っている様子で、栄養補給のために
点滴を受けさせる事にした。

話を聞くと、どこかの住職らしいのだが、
1年ほど前より体調を崩していて度々
通院していたらしい。
ただ、まだ代を継いだばかりの人で、
そこまで年配という事はない。
せいぜいが40代に見えたという。

「まあ衰弱からくるものでしたから、
 取りあえず体力を回復させようと
 したんです」

看護師から相談を受けたのは、点滴が終わり
その患者の容態を確認した後だった。

「先生、これ」

おずおずと女性看護師が差し出したのは、
点滴用のチューブだった。
その異常は一目でわかった。

「どうしてこんなボロボロなのを
 使ったの?」

看護師は首を左右に振り、その質問を否定した。
考えてみれば、こうまで傷だらけの管を
使う理由は無い。
知っていればその時点で問題になったはずだ。

「取りあえず、全てのチューブの確認を
 指示して、その時は自室に戻ったんだ」

しかし、それからも点滴用のチューブが
ボロボロになる事が何度かあった。
不思議なのは、全てのチューブがそうなるの
ではなく、決まってその患者に使用した後、
ボロボロになっているのだという。

「まあ見た目と違って簡単に切れるものでは
 ないからね。
 それこそ、床に固定して包丁で切るくらい
 しないと」

点滴している間は問題無いにしても、気味が
悪いのは確かで―――
その患者に点滴を施している時は、それとなく
確認のため見舞うようになった。

「夜中の1時くらいだったかな。寝る前に
 点滴をセットしたんだが」

ふと、彼の病室をのぞくと、非常用の豆ランプが
薄暗い中で一際目立っている中、
その光が点滴のビニールバッグに反射していた。
そして、当然下にチューブが続くのだが―――

「何ていうのかな……輝いている、
 とかじゃなくて。
 黒い画用紙の上にごま塩をパッと
 バラまいた感じで」

白い点のようなものが、クリスマスツリーの
電飾のようにチューブにまとわり付いていた。
それも無数に。
正体を確かめるべく、薄闇の中目をこらすと、

「犬とか、猫とか、それと亀、インコ
 みたいなのもいたな。
 ただ、そのどれもが」

首だけだったという。
それらの首が、競うように点滴用のチューブに
噛み付いていたのだ。

白く見えたのは彼らの牙だったらしい。
ただ、噛みづらいのか、四苦八苦して
何度も何度も位置を変えていた。

慌てて部屋の電気のスイッチに手を伸ばす。
明かりが室内を照らし出すと同時に、それら
動物の首は1匹残らず消えた。
チューブを急いで確認すると、またボロボロに
傷付いていたという。

「仮にもお坊さんだしね。
 そんなものに恨まれてるとは
 思わなかったんだが」

後に耳に入ってきた話では、彼は先代から
住職を継いだものの、元々かなりの遊び人だった
そうで、ギャンブルから女性関係まで節操の無い
人間だったらしい。

あちこちに借金を重ね、今で言うところの
“ペット葬”なるものを始めたらしいのだが、
ろくに墓も作らず、遺骨はゴミとして
廃棄してしまう有様で、後に発覚した時は
寺の存続に関わる問題になった。

「その時は、そんな事知らなかったんだけどね」

ただ、未だにあの時の動物たちの顔、
チューブを噛み締めて飾りのようにぶら下っていた
光景は忘れる事が出来ないという。

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