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しおりを挟むその日の朝早くから、レナは父親のハッセル公爵に呼ばれていた。話は長く掛かっていたようで、随分時間が経ってから戻って来た。しかし、フィリップをバスケットから出すことも忘れているようで、フィリップはそわそわとバスケットを開けてもらうのを待っていた。
コンコン、とノックの音が響きマーサが入室した。フィリップはミーサから追いかけられたことが心の傷となっているようで、マーサの声を聞くなり身体を固くした。
「お嬢様……?」
「マーサ……。」
「旦那様のお話は何だったのですか?」
「……殿下が失踪されたのは、殿下が自ら出られたわけでは無いようなの。」
いきなり自分の名前が聞こえ、フィリップはピクリと首を動かす。
「どういうことですか?」
ハッセル公爵の話では、フィリップの自室から許可されていない魔術が使用された痕跡が見つかったという。魔術師が無理矢理連れ去った可能性を視野に入れ、捜索の方針を変更したようだ。
「……っ、マーサ、マーサ……!私、どうしよう。殿下にもしものことがあったら私……。」
「お嬢様、落ち着いて下さいませ。殿下のことです、ひょっこり出てきますよ。」
ぽたぽたと涙を流すレナへマーサは繰り返し励ましの言葉を伝える。だが、レナの涙はなかなか止まらない。
「……っ、こんなことならあの時視察に行くのを止めたりしなければ良かった。もっと優しい言葉を掛けて、仲良くできるようにもっと努力したら良かった……!」
声を上げて泣くレナの声を聞き、ネズミのフィリップは、バスケットの中から必死でレナの名を呼んだ。だが、フィリップの声は届かない。
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