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しおりを挟む二十年前、二人が七歳の頃、貴族の令息・令嬢の交流を目的としたお茶会で二人は初めて出会った。
当時から、かなりの美形だったウィリアムは茶会の度に沢山の令嬢に囲まれてしまい、ウンザリしていた。
押し寄せて来た令嬢の波から、何とか逃れたウィリアムは隠れる場所を探していた。
そこで会場から少し離れた木の下で、一人読書をしているカレンを見つけたのだ。ウィリアムが近付くが、カレンは集中していて気付かない。当時から読書家で、眼鏡女子のカレンにウィリアムは声を掛けた。
「なによんでるの?」
「これは、れきしのほん。」
カレンは、その歴史の本から目を離さずに答えた。その瞬間、ウィリアムがバサリと本を取り上げた。
「ちょっと……!」
大好きな本を取られ、焦るカレンを、ウィリアムは心底嬉しそうに笑って見ていた。
◇◇◇
(あの時から変わらないわね。)
初めて出会ってから、これまでの二十年間、ウィリアムはずっとカレンを揶揄っている。幼い頃から人気のあったウィリアムに、見向きもしない眼鏡女子のカレンが物珍しかったのだろう。
本を取り上げられるのはいつものこと。気持ちの悪い昆虫を見せて来たり、危ない高所に無理矢理連れて行かれたり、カレンはしょっちゅう泣かされていた。
いつも何故だか近くにいるウィリアムに意地悪ばかりされているので、学園に入る時は他の男の子たちにも虐められるのでは無いか、怖々していたほどだった。
しかし、そんな事は一切起こらず、学園では男子には遠巻きにされていた。それにも多少傷付いていたが、稀に読書好きの男子と仲良くなれそうになることもあった。そんな時は決まって、ウィリアムが邪魔してくるのだった。
(なんで、こんなに目の敵にしている私と結婚するなんて言うのかしら?)
辻馬車で揺られる中、カレンは首を捻った。
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