【完結】真面目系眼鏡女子は、軽薄騎士の求愛から逃げ出したい。

たまこ

文字の大きさ
6 / 15

しおりを挟む


 数日後。


「貴女達、大変なことになっていたのね。」


 カレンは、親友のケリー=エドワーズに恥を偲んで相談した。ケリーは公爵家の令嬢で、子爵家のカレンとは爵位の差はあるものの、読書家という共通点から学生時代から仲良くしていた。ケリーは、カレンからウィリアムとの一連の流れを聞き、目を丸くしていた。


「大体、好きでもない相手と二人きりで呑みに行くのは止めなさいって何度も言ったわよね?」


 公爵令嬢らしい迫力のある笑みで見据えられ、カレンは肩を落とした。


「分かってる・・・だけど、ウィリアムが煽ってくるから、つい・・・。」


 カレンはウィリアムが嫌いな割にはしょっちゅう二人で呑みに行っていた。カレンは呑みに行くことは大して好きではなく、早く帰って本を読みたいタイプだ。だが、ウィリアムは二十年の付き合いもあり、どう煽ったらカレンが乗せられるか熟知していた。


「はぁ、本当に貴女はウィリアム様のことになると駄目ね。」


 心底呆れたように親友に言われてしまい、カレンはしょんぼりと俯いた。


「諦めて、ウィリアム様と結婚しなさい。それ以外の道は無いことは貴女も分かっているはずだわ。」


「うっ・・・そうだけど・・・。」


 なかなか顔を上げないカレンを見てケリーは苦笑した。そして慰めるように言葉を続けた。


「ねぇ、カレン?貴女はウィリアム様のことを嫌いとよく話しているけれど、ウィリアム様はどうだったのかしら?嫌いな相手を頻繁に誘うような方ってあまりいないと思うけど。」


「それは、揶揄って楽しんでいるだけよ。」


「そうかしら?近衛騎士は多忙で、お休みも少ないでしょう。貴重な自由時間を貴女に充てているということは、貴女のこと好ましく思っているのではないかと思うの。」


「それは無いと思うけど・・・。」


 ウィリアムのちょっかいにウンザリしているカレンは納得できなかった。頑ななカレンを見て、ケリーは言葉を飲み込み、話題を変えた。


「では、これからは仲良くなる努力をしたらいいわ。貴女の話を聞いていると、ウィリアム様は貴女のご両親へ誠実な対応をしていたようだし。」

 もし、貴女に酷いことをするようなら私が撃退してあげるから、と付け加えられ、カレンは漸く笑顔を見せた。


「頑張ってみる・・・ケリー、聞いてくれてありがとう。ケリーはそういう話はないの?」

 ケリーは公爵令嬢だ。カレンのように末端の貴族と違い、縁談話も山のようにあるだろう。ケリーは困ったように眉を寄せた。


「そうねぇ・・・お慕いしている方はいるわ。だけど、まだ話せないわ。」

 貴族の婚姻には、色々と制約がある場合が多い。ケリーの婚姻話は言えない段階なのだろうと、カレンは判断した。

「そうだったのね。もし話せるようになったら教えてくれたら嬉しいわ。」

 勿論、とケリーが微笑むのを見て、カレンも頷いた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ドレスが似合わないと言われて婚約解消したら、いつの間にか殿下に囲われていた件

ぽぽよ
恋愛
似合わないドレスばかりを送りつけてくる婚約者に嫌気がさした令嬢シンシアは、婚約を解消し、ドレスを捨てて男装の道を選んだ。 スラックス姿で生きる彼女は、以前よりも自然体で、王宮でも次第に評価を上げていく。 しかしその裏で、爽やかな笑顔を張り付けた王太子が、密かにシンシアへの執着を深めていた。 一方のシンシアは極度の鈍感で、王太子の好意をすべて「親切」「仕事」と受け取ってしまう。 「一生お仕えします」という言葉の意味を、まったく違う方向で受け取った二人。 これは、男装令嬢と爽やか策士王太子による、勘違いから始まる婚約(包囲)物語。

伯爵令嬢の苦悩

夕鈴
恋愛
伯爵令嬢ライラの婚約者の趣味は婚約破棄だった。 婚約破棄してほしいと願う婚約者を宥めることが面倒になった。10回目の申し出のときに了承することにした。ただ二人の中で婚約破棄の認識の違いがあった・・・。

婚約破棄ブームに乗ってみた結果、婚約者様が本性を現しました

ラム猫
恋愛
『最新のトレンドは、婚約破棄!  フィアンセに婚約破棄を提示して、相手の反応で本心を知ってみましょう。これにより、仲が深まったと答えたカップルは大勢います!  ※結果がどうなろうと、我々は責任を負いません』  ……という特設ページを親友から見せられたエレアノールは、なかなか距離の縮まらない婚約者が自分のことをどう思っているのかを知るためにも、この流行に乗ってみることにした。  彼が他の女性と仲良くしているところを目撃した今、彼と婚約破棄して身を引くのが正しいのかもしれないと、そう思いながら。  しかし実際に婚約破棄を提示してみると、彼は豹変して……!? ※『小説家になろう』様、『カクヨム』様にも投稿しています

【完結】オネェ伯爵令息に狙われています

ふじの
恋愛
うまくいかない。 なんでこんなにうまくいかないのだろうか。 セレスティアは考えた。 ルノアール子爵家の第一子である私、御歳21歳。 自分で言うのもなんだけど、金色の柔らかな髪に黒色のつぶらな目。結構可愛いはずなのに、残念ながら行き遅れ。 せっかく婚約にこぎつけそうな恋人を妹に奪われ、幼馴染でオネェ口調のフランにやけ酒と愚痴に付き合わせていたら、目が覚めたのは、なぜか彼の部屋。 しかも彼は昔から私を想い続けていたらしく、あれよあれよという間に…!? うまくいかないはずの人生が、彼と一緒ならもしかして変わるのかもしれない― 【全四話完結】

不愛想な婚約者のメガネをこっそりかけたら

柳葉うら
恋愛
男爵令嬢のアダリーシアは、婚約者で伯爵家の令息のエディングと上手くいっていない。ある日、エディングに会いに行ったアダリーシアは、エディングが置いていったメガネを出来心でかけてみることに。そんなアダリーシアの姿を見たエディングは――。 「か・わ・い・い~っ!!」 これまでの態度から一変して、アダリーシアのギャップにメロメロになるのだった。 出来心でメガネをかけたヒロインのギャップに、本当は溺愛しているのに不器用であるがゆえにぶっきらぼうに接してしまったヒーローがノックアウトされるお話。

君を自由にしたくて婚約破棄したのに

佐崎咲
恋愛
「婚約を解消しよう」  幼い頃に決められた婚約者であるルーシー=ファロウにそう告げると、何故か彼女はショックを受けたように身体をこわばらせ、顔面が蒼白になった。  でもそれは一瞬のことだった。 「わかりました。では両親には私の方から伝えておきます」  なんでもないようにすぐにそう言って彼女はくるりと背を向けた。  その顔はいつもの淡々としたものだった。  だけどその一瞬見せたその顔が頭から離れなかった。  彼女は自由になりたがっている。そう思ったから苦汁の決断をしたのに。 ============ 注意)ほぼコメディです。 軽い気持ちで読んでいただければと思います。 ※無断転載・複写はお断りいたします。

婚約者に好きな人ができたらしい(※ただし事実とは異なります)

彗星
恋愛
主人公ミアと、婚約者リアムとのすれ違いもの。学園の人気者であるリアムを、婚約者を持つミアは、公爵家のご令嬢であるマリーナに「彼は私のことが好きだ」と言われる。その言葉が引っかかったことで、リアムと婚約解消した方がいいのではないかと考え始める。しかし、リアムの気持ちは、ミアが考えることとは違うらしく…。

イケメンなら間に合ってます(改稿版)〜 平民令嬢は公爵様に溺愛される 〜

コロ星人
恋愛
私は貴族とか、堅苦しい世界なんて大嫌いなんです だから、ちょっと羽を伸ばしにここに来たのに なんで、ここって自分ん家より面倒くさいの? ああ、私のパラダイスはどこ? 私のパラダイスが消えていく へ?イケメン?お金持ち? 私、貴方みたいなチャラ男は大嫌いなんです それにお金なら不自由しませんもの もう結構ですから他を当たってください シッシッ 舞台は現代に近い並行世界になります 以前連載していたものを、書き直しました 設定はほぼ同じですが、内容が違うものになってます

処理中です...